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神々の愛し子  作者: chima
心が沸き立つ贈り物
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リプトの果実と照れ模様


『あら、リプトに実が! ルナ様、こちらの実は収穫してもよろしいかと!』


「わー! こんなに早く成長するんですね。苗木からだけど今日で10日、それにお花が散って実になるわけではないんですね! かわいい」


『この木は可愛いですよね。ですが、育てるのが難しいことで有名なんですよ。土の栄養次第で全てが決まるのですが、それがまた難しくて。リプト果樹園では安定した管理なので良いのですが、ルナ様のように数々の植物と共に育てて成功なされる方は一握りですよ。


条件が合えば成長も早いのですが、凄いですね。10日なんて驚異の早さですよ!』



リプトという見た目は姫リンゴのような掌に収まる赤い実をつける果実樹を植えたのはちょうど10日前……つまりこの世界の一週間前。


例に漏れずアレクからの贈り物で、それだけではなく宮廷薬剤師の地位も持ちながら本業は植物学者として宮廷植物園の調査観察をする宮廷付き植物学者ニコレット・シオラ・カウペロスさんが説明隊員としてアレクの命で派遣されたのだ。それが、このルナの庭園(仮)をざっくり拝見した所、何やら私に興味を持たれた様子で、私としても専門家の話を聞けるチャンスだと共に土いじりをしつつ意見交換に勤しんだ。



結果、ニコレットさんの事はニコさんと呼ぶことになった。私もルナで良いと言ったものの、そこは出来ないとのことで……。それでも、私の庭園には興味を引くものがおおいと言うことで、私の協力者として相談役として良い関係を保てるようアレクへと話を通してくれたのだ。


そして、本業も忙しいなか今日も彼女は元気に収穫の手伝いに来てくれたのだ。



ちなみに、ニコさんは女性だった。最初は、銀髪ショートの髪とつなぎ服に白衣を纏った姿が、この世界に来てから男性しかパンツスタイルを見ていないことで愛らしい魅力のある男性かと思ってしまったのだ。この世界では女性でも180㎝は超えているということもあり、もとの世界とのギャップで未だ処理がスムーズにいかないとは言い訳になるが……話してみると素敵な大人の女性なのだから心から失礼だったと反省した。



そんなこんなな出会いだったけれど、時間があくと庭園の手入れや植物の勉強にも付き合ってくれて本当にありがたい存在を紹介して下さったアレクにも飛び付きたいほどの感謝だと思う。



『では、ルナ様! ここでアドバイスをひとつ宜しいでしょうか』


「はい! よろしくお願いします!」


『はい。収穫のタイミングや例えば行商から購入される時に注目されると良いことをおひとつ』


「はい!」


『こちらのリプトや同種の果実に共通して、果実のしたにはヘソと呼ばれるものがあります。こちら、ここは収穫せずに放置いたしますと裂けて中にある種を下へ落とすようになっております。』


「へそ」


『ここからが重要です。ヘソは実が熟すまでは硬く蕾のように閉じています。それが、食べ頃の収穫時になりますと小さな花が咲くように開きます。同時に甘い香りや場合により蜜が溢れることもありますが、そのタイミングを目安に収穫されると良いかとおもいます』


「なるほど! 甘い果実なんですね。たのしみです! えーっと、あぁ、これは収穫できますよね?」


『はい。食べ頃にございます。それと、もしもリプト薬酒をつくられるならば、蕾状態の物を使われると薬効が高くなります。ですが、薬をつくる場合はルナ様ならば咎めは無いと思いますが、薬師資格をお取りになられると薬草の使用範囲が広がりますので、興味があられましたらご相談頂ければと存じます』



確かにハーブを使ったりすることはあるけど、ちゃんとした薬をつくることはしたことが無かったし、日本でも私が触るものとは分野がずれていたし、私のは健康維持や体調補正程度のものだった。というか、薬剤師でない限り医薬品をつくるなんて不可能だったし。


悪い状態からの治療回復目的のがっつり医療分野なのだから、資格が必要なのは納得。何か植物系の資格を取ろうと学びはしていたけれど、この世界では魔力補給も変わりない分野なのかな? 栄養ドリンクよりも更に医療よりなのかもしれない。



嫌な言い方でも何でもなく本当に“もしよければ”といった真っ直ぐに知識を深めたいルナには良いのではと思ってくれての言葉なのだが、対したルナも特に嫌な感情を受けるでもなく、頭でじっくり、それこそ神妙な顔で考え込んだ結果、ニコはその様子から余計なことを言ってしまったのではと慌てた。


「やっぱり薬草を扱うならば資格は持っているべきですよね……」


ルナの頭では、資格のための資金とあちらの世界での薬剤師になる大変さを考えて自分がその資格を持てるのか、でも出来るなら欲しいよな……といったことがぐるぐると巡っていた。


『あ、あの! 申し訳ありません、ルナ様は神籍におられるので私どもの決まりに括られる必要もありませんし、それに、あの、あの 、』


「へ?」


慌てた様子のニコの様子に気づいたルナは目をぱちぱち驚き、高速で事態を巻き戻しで認識し同様に慌ててうまく言葉が継げず口をパクパクさせる。



『も、ももも申し訳ありません!』


「いえ、あ、あの! そ、そんなつもりじゃなくてですね、あの、あの」


『ルナ? どうしたのだ?』


元々、あちらの世界では人付き合いが然程上手ではない……というより、人付き合いそのものが少なかったルナにとって救世主のように思える声が届きバッと振り返ると、後ろにフィーさんと頬笑むエリーさんを携えたアレクが少し心配げな顔を浮かべた優しい声色で何か困ったことでもあったのかと問いかけていた。


「アレク……あの、私っ」


『ん?』


ゆっくりと距離を縮め柔らかく微笑む姿に慌ただしい鼓動も穏やかさを取り戻し、ざっくりと説明すると何とも困った子をみるような顔でみつめられた。


『カウペロス薬師、貴方からみてルナは薬師試験を受けられると……合格できると?』


『はい、殿下。ルナ様の能力は治療そのものというよりは、薬草などを育てることに特別なお力があるかと思います。そして、発想力も我々とは違ったベクトルに豊かなご様子。毒草の判別と基本の薬草知識を覚えさえすれば、最も難関な栽培管理分野は完璧なので試験は問題なく上位で合格できるかと』



落ち着いたルナの様子に自身も落ち着きを取り戻した様子のニコも臣下の礼をとりながらアレクの問いに答える。



先程とは違う理由でドキドキとニコの言葉を聞いたルナは、本当にニコから認められていたこと、才能を信じてもらえていたことに照れくさい気持ちと嬉しさが込み上げる。



あちらの世界では同情心やお世辞などで褒められる事はあれど、その親がいないことや、どう取り繕うとも保護者がいない一人暮らしの保護下にいるべき少女の異様な環境は周知の事だった。店主の人の優しさや弁護士、税理士などは結局のところルナ自身をクリアにみてはこなかった。嫌な人ではないが、見てくる瞳が“哀れみ”を物語っていた。だから、本当の意味で人と関わりたいと思ったのはこちらの世界に来てから。


……こちらにきて、ルナの中の何かが確かに変わった。ずれていた歯車があるべき位置に戻ったような。それでも、ニコのようにルナの背景や神の子という事よりも、純粋に能力や自身を真っ直ぐにみて仲良くしてくれる事は数日の間でわかった。そして、今それを言葉でアレクに専門家としても答えてくれた。


『ルナ様の場合、医療行為は置いておいても資格取得後に私のように研究者としての地位も確立できます。地位はあって困るものではありませんので、それに……もし、そこを目指すならば私も持つ知識、力すべてでサポートさせて頂く所存でございます』



“そのままでは勿体無い御方です”



褒めごろしの言葉にキョロキョロと視線をさまよわせた視界の隅に映ったアレクは、どこか誇らしげな顔をしていた


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