ある愛し子の話 その2
日本神界にて。
八百万の神々が存在する地球という惑星にある日本。数々の神界が存在し、友好関係を結ぶなかで最も親しい国と言えよう。
日本神と呼ばれる神々はひとつの纏まった宗派ではない。八百万の神々、数々の神仏を隔てることなく共存し、争いなく生活する。
平和を愛する日本人の思考の大元にあるのは神々の思考。つまり、神々の平和的思考が地上の人々へ伝わっていったということ。あらゆる物体現象には宿りものが存在することを遺伝子レベルで知り、それを無闇矢鱈と害さず護り伝える人間が多いからこそ日の本に神々が集うのだ。
その穏やかな気質の日本神がディユス神は大変好ましく思っていたと同じく日本神からもディユス神を好ましく思っていた。故に双方頭を抱えたくなる事態であった。
本来であれば事態の当事者である大国主が責任をもって愛し子の守護者となるべきだったのだが、この人物、女関係に少々危険があるとの事で月の神の流れとなった。
『さあ、ディユスの愛し子を月杜の娘へ届けましょうか。
月読お願いします』
『珠玉をここへ』
アマテラスの声にツクヨミが歪みのない綺麗な声で指示を出すと、何処からか可愛らしいモフモフとしたうさぎが男性の手のひらサイズの球体を座布団状のクッションにのせ二匹で"えっさ、ほいさ"と、二足歩行のまま担いでくる。
『ありがとう』
撫でてとすり寄るうさぎの頭をひと撫でしたのち玉を覗きこむ。これは、月読の占い。とても当たると神々の娯楽としても評判のもの。
『やはりディユス神の子。多くの加護でモヤがかかり、未来がよみとれない。ですが、名前は優月となるでしょう。』
日本神は読み取れないのは仕方あるまいと頷き愛し子の先の未来が幸福であることを祈ることしか出来なかった。
姿勢を正す美しい月の神の首に下げられる神玉が淡く光ると、前に置かれた産神篭を白い子うさぎが囲む。そして神々はその後ろに間隔をあけ囲み、それぞれ祈りを捧げる。
『それでは、ディユ カルティネンスの尊き神の愛し子よ。我が親族としての加護を捧げよう。人の子として苦楽を学び、哀しみを纏う日もあれど打ち払い優しい月のごとく人々を心眼で見つめることができるよう励みなさい。ディユスの愛し子に日本神からの加護を…………』
シャラン リーン シャラン リーン
鈴の音が鳴り響くと、くるくると子うさぎ達は回転をはじめ、ペタペタと足跡が光りはじめる。産神篭は少しずつ光を放ちはじめ、そして、目が眩むほどの光が一瞬放つと次の瞬間には産神篭にあった子神の魂は姿を消していた。
そこからは、人の胎児と同じ行程で生まれる。
そこから数日、月杜の祈りによって娘の懐妊が伝えられた。これで、ひとまず神々による仕事は修了となった。あとは、人生を全うし魂の帰還までを見守り待つのみ。一息つき、出産と同時にその旨はディユスへと届けられた。
ディユス神はひっそりと高頻度で日本神国へと足を運ぶようになった。
『天穂日ちゃん! ひさしぶりねえ、元気?』
『あらぁ?天穂って呼んでっていってるじゃなーい、モリアちゃーん! 見ての通り元気よお』
天穂日命、アマテラスの子でいて農業と稲穂の神。闇落ちした悪神を鎮めたことで偉大な神であるのだが、ノリがモリアと似通ったおネエさん。容姿は筋肉質なワイルドな美形、細かいことを気にしない若い女神々にはおモテになっております。
ちなみに、愛と美の水神モリアは美しい青年の容姿をしているおネエさん。
『ところで、うちの可愛い愛し子はどおかしら?前は寝がえり完成前だったから、もう歩いているかしら?』
『ふふ、モリアちゃんはおバカさんねえ、やっと腹這いが終わってハイハイ出来たところよお。かわいいわよ』
精霊王の計らいで思いのほか忙しい神に変わって常に守護精霊が優月には着いており、その情報を映像でLIVE中継でいつでも見れるようになっている。
『え~、そうなのお? さてさて、ルナちゃんは何をしているのかしら?』
『落ち着いて~!じゃあ、繋ぎましょうね』ピッ
そこに映るのは、父がビデオカメラをセットして二人でルナを呼びハイハイでどちらへ来るかというよくある光景。とても可愛がられているのがよくわかる。勝敗は母で父が少し落ち込みを見せると、母のこっそりと父のもとへの促しでそばに行くと、喜んで家族三人で微笑み会う。部屋のなかも安全空間で部屋の片隅には大量のベビーグッズがならんでいる。
『ふふ、元気そうでよかったわ! ママもパパも親ばかさんねえ』
『そうなのよ、お父上はうちの子可愛いんですってことあるごとに写真を見せびらかしているのよ。うふふ』
『でしょうねえ! まあ、うちの子は世界共通の可愛さなのは決定事項よぉ~! うふっ』
『あらやだ、ここにも親ばかさんが居たのねぇ』
『『うふふふふ』』
愛し子の成長や家族の幸せな姿を見ることが神々にとっての幸せとなっているのだった。




