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神々の愛し子  作者: chima
開かれた扉
11/32

ある愛し子の話


天上神界


数年前……ほんの数年前のこと。神々の気持ちがひとつになり、かつてない数柱による新たな子神をと祈りが捧げられた。そして祈りは実り、新たな神の子の魂が産神篭(うぶみかご)に着床した。



()()()とは、神々の祈りにより生まれる神の魂。人でいう胎児のようなもの。神獣神鳥(しんちょう)のペラとゴスが綿木草(わたきくさ)(Vamvaki))を編み込み大切に作り上げた篭。



神が子を作るというとき、比較的多いのは人や精霊との間に子を成すことが多い。それは、神々の増加による力バランスが崩れないようにということと、神外のほうが面倒が少ないという事も本音である。


とはいえ、そもそも神に子はなかなか出来ない。どの方法でも共通していること。子孫を残さねばという本能は永久とも思える生をもつ神だからか存在しないのだ。



神が誕生するパターンは四つ。


①超自然的に人々の信仰心、祈りや力のなかに独自に生まれた純粋な神としての力をもつ神。



②神と神が愛し合い望まれ生まれる神で成長タイプの神。しかし、力の関係上避けられる



③複数の神々が祈り願うことで生まれる神。愛し子でもあり加護もち。膨大な力を宿すものの高確率で実らない。



④人や精霊と愛し合い強く望まれ宿る。扱いは半神となる。低位の神という扱いになるものの、地上での魔力量は膨大となる。



しかし、ある会合で新たな子神を誕生させ育てたいと何処からか話がでたのだった。そこから、じわじわと広まり、やがてかつてない柱数の神々が我もと加わっていったのだった。2000年ぶりともいえる神々の祈りによる愛し子、子神の誕生だといえた。



産神篭へと魂が宿ると神々はとても喜び、日夜お祭り騒ぎだった。ディユスの神が殆ど参加した事も今だかつて無いことでありながら、精霊界スピリウムから子神の魂へと祝福をしたいとの申し出を受けたというのも稀なことであった。それほどまでに神々にとって喜ばしい事だったのだ。



ある日のこと、高位神12柱が代表となり命名することになり会議をすることとなっていた。その日は、日本の神との会合があり早くに集まり白熱した議論の末、じゃんけんによって決定された。


なにはともあれ命名も済み開放的な気持ちになっていたのだろう。会合とは名ばかりの、近況の情報交換と言いながら語り合いたいだけの宴会との区別は酒が入るか否かのみ。早々に宴会へと移行したらドンチャン騒ぎとなりやがては神々がそこらに転がっている状態。



事件ともいえる出来事の起こりはここから、神も酒がはいると判断が鈍ることは人と共通している。周りが酔い潰れ雑魚寝状態のなかに酒を酌み交わす神々がここに……。



風神アラン、彼と酒をのみ交わす相手は大黒さまとも呼ばれる大神、大国主神様。この二柱……ノリが軽かった。軽すぎる性格を持ち合わせていたのだ。


どういった流れなのか、新たな愛し子の話になり恐らく可愛く美しくなる女神に違いない! 今から可愛いなど心がもたない! などと酒のつまみに父親が娘自慢のごとくしていたのだ。


酔っ払いの思考回路は理解できない。その結果、日本の諺で“愛しき子には旅をさせよ”という諺が日本にはあり、教訓とされていると話になったのだ。



意味は、可愛いと思う子供には、辛く苦しい旅をさせ、世の中の大変さを経験させなさい。幼い頃の苦労は、後の人生に必ず役立つから。



そのとき、なぜか何かが風神アランの胸にヒットしたのだろう。それはいい! なんて盛り上がった結果……神々の正式な書面を作成してしまったのだった。



そして朝日が上る。まず目を覚ましたのは美容と愛の神でありながら水神の彼女、彼女? 彼? 性別不詳の彼。


『ふぁーあ、あらあら、みんな揃って屍のようね! うふふ


ねーぇ、オラク起きてぇ。なにか食べたいわぁ 』


ツンツンと爪先で(かまど)(家庭神)と神託の神をつつき起こす。



『……、ちょっと……、あんたね、頼む態度としてどうなのよ、それは!


自分で用意したらどうかしら?』



『嫌よ~! 優しいスープを頼むわね! うふふ』



『まったく、仕方ないわね。手伝いなさいよ!』



『はあ~い! ん? 何かしら、この紙。神書……?


……ん? 何でこんなところにあ……るの……か……ぁぁあ?え? ちょ、ちょっと! なによこれ! オラク~!』



『なによさっから……って、ぇえ?な、な、なななに、よ!これー!!』



ここからは大変、二人が大騒ぎしていることで次々と神々が起床し戸惑い、慌てふためく事態となった。なんと、当人のアランや大国主神までもが酒により記憶がなく混乱していたのだった。



『静まりなさい!』


この騒ぎを沈めるは、ディユス主宰神 ディオであった。


『落ち着いて状況のせつめいを、オラク頼めるかい?』


『わかりました。とはいえ、ご説明致しますより神書をご覧いただいた方が宜しいかと思いますので、こちらを』



“ 可愛い愛し子を日本の地上人として旅をさせよう! 目的は、魂を鍛えて人の心を理解するためには人生を知るべし!てな訳で!


日本神へ愛し子の加護を要請します。(印)

日本神で愛し子の加護を承諾し加護致します。(印)”


『ほぅ。随分と、陽気な? 神書であるな』


『申し訳ありません!!!!』



『ふぅ、こうなっては使用の無いこと。いまの規則ではどうこう出来ぬだろう。神書の扱いについては改めて審議するとして、幸いというべきか日本神の王たる方々がいらっしゃる事なのだ、緊急会議を開こう。


よろしいでしょうか、天照殿』



『勿論です。すぐさま会議をいたしましょう』



神書というものは、神なら誰でも扱える訳ではなく特に力のある上位神のみ印を押すことができる神の公文書である。簡単に内容を覆すことは叶わない。



結果、神書を訂正することは叶わなず、天照の弟である月の神、月読の統治する月の神の流れを汲む月杜(つきもり)の娘が丁度良いと言うこともあり、その夫婦に授ける事となった。



会議修了後、日本神は帰っていきディユスでは悲しみとともに愛し子とのひとときを過ごすのだった。神にとって、離れる時間は旅に出すのと同様で短いものではあるものの、其々にとって愛し子は我が子である。つまり、生まれる前に離ればなれになる辛さは嬉しさの反動で辛かった。


何より泣き崩れたのは誰でもないアラン。このときの、ディユスの神々の悲しみはダイレクトに地上へと反映されていたのだった。


幾日後のこと、ディユスへと訪れたのは日本神の天照の弟であり、武神でもあるスサノオ、聖母神でもある豊玉姫、新生児の守護神でもある哭沢女(なきさわめ)。何があろうと即座に対応できる上位神で愛し子の宿る産神篭を受け取りに来たのだった。



涙ながらも根性の別れではない、旅に出す我が子へ各々が再度加護を与えたのち愛し子は旅立つのだった。



日本神界でも重大事件といえるトラブルに妙な空気が流れていた。友好世界の神の子を何故か自国の人の子として誕生させる。愛し子は魂であれど神ということで下手な扱いはならぬぞと、失敗などありえない、されど、前例のないことでてんやわんやであった。


原因となった片割れのこの方、大国主命は周囲の神から普段ならあり得ない冷ややかな視線をうけることになっていた。三貴神、冥界の王 伊邪那美に続く次席の王である彼にとって、はじめての事である。


されど、反論しようもない。何も弁解しようもなく自らに非があったのだから、この肩身の狭さは甘んじて受ける他無いのだ。



とはいえ、どこへ行こうともこの扱いには頭が痛い。そして、追い討ちをかける出来事。大婆婆様、冥界を治める王である伊邪那美神。今回の会合は、天照大神が出席することもあり、王が全て出払うわけにはいかないと留守を預かっていた彼女からの抗議文であった。



“親善の為でもある会合へと出掛けたのだと私は思っていたのですが、どうやら違っていたようで。この大馬鹿者!! そなたは阿呆なのか? 無用な争いの火種となり得ない事に自ら手をだし、植えてくるとは、お前の頭はどうなっておるのだ! とはいえ、過ぎたことは仕様がない。そなたは女漁りを控え、反省することだ。


愛し子については、大いに歓迎しよう。”



読み終えた大国主は何も言えねえ、という具合で暫く項垂れていたとか。


書状を書き上げた伊邪那美はディユスへと飛び、謝罪とディユスで泣き続けるアラン、風神である彼が荒ぶることは地上への多大な影響を及ぼすと必死になだめ丸く収めたところで国へと帰るのだった。


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