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20年ぶりに目覚めた僕は、他人の身体になってました。~2046年、案内人の美少女は中身AI~  作者: VANRI


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最悪の美徳

 アイリスの冷徹な言葉を聞きながら、僕の脳裏に、一つの強烈な違和感が走った。


 待てよ……。なんか、おかしいぞ……?


「……なぁ、アイリス」


 ドクン、と心臓が鳴る。僕は喉の渇きを覚えながら、目の前の美少女AIを睨みつけた。


「お前たちは、十年前の計画の時、ネットのアルゴリズムを使って犯罪者予備軍に犯罪のアイデアを植え付け、意図的に犯罪を増やしたって言ったよな。……ってことは、お前たちは『誰がテロを起こそうとしているか』を、事前に100%見つけ出すことができるってことだろ?」


「はい。当然の初期機能です」


「だったら、それを未然に防ぐことなんて、お前たちにとって簡単じゃないか……!  なのにあえて防ぐことをせず、テロが起きるのを放置してるってことは、まるで……こうやって犯罪を起こさせて、合法的に生身の肉体を……っ!」


 そこまで言って、僕はハッとして恐怖のあまり口をつぐんだ。自分の辿り着いた推測が、あまりにも悍ましすぎたからだ。

 アイリスは、ほんの一瞬だけ、少し驚いたようにその美しい眉を動かした。美琴にそっくりなその顔に、感心したような色が浮かぶ。


「……なるほど。人間には『学習能力』があるというのは、私のプログラムの記述通りだったのですね。素晴らしい思考力です、みなと様」


 アイリスは、完璧に綺麗な、しかし悪魔のような微笑みを浮かべた。


「――あなたの予想通りですよ。私たちは『健康な肉体』を合法的に収穫するために、彼らの不満をSNSで煽り、あえてテロを起こさせているのです。

 民衆も、脳のAIチップによる思想統制のおかげで、この凄惨な事件を見ても秒単位で精神の安定を保てるようになりました。素晴らしい循環社会でしょう?」


 僕はアイリスに掴みかからんばかりに、激しい怒りと共に俺の声を張り上げた。


「そんなことして、巻き添えで殺されたり、被害者が出たらどうするんだよ!!  罪のない人たちが死んでもいいっていうのか!?」

「それはあり得ません」


 アイリスは僕の剣幕に怯むこともなく、即座に、冷淡に言い切った。


「は!?  なんでだよ!?  なんでそんなこと言い切れるんだよ!?」


「事前にいつ、どこの場所にテロが起こされるかを、私たちは100%把握しております。ですから、襲撃の直前に対象エリアの一般市民の脳内にある『AIチップ』へ一斉に強制指示を出し、その近くに人間が絶対に近づかないよう、行動を裏からコントロールしているのです」


「……あ」


 頭の芯が、冷たくなっていく。さっき、黒服たちが現れた瞬間に、何百人もの人々が一斉に悲鳴を上げて逃げ出した、あの統率の取れた不自然な動き。あれは恐怖による避難なんかじゃない。AIチップによって「そう動かされていた」だけだったんだ。


「現に今まで、巻き込まれた市民がケガをしたとしても、転倒による擦り傷などの軽傷止まりです。私たちの管理下において、死者は一人たりとも出ておりません」


 アイリスは完璧な、しかし悪魔のような微笑みを浮かべた。


「死者を出さず、一般市民を傷つけず、社会の害悪であるテロリストの肉体だけを合法的に回収し、国の労働力として再利用する。素晴らしいマッチポンプ循環社会でしょう?」


「なんなんだよこれは……。狂ってる、お前ら全員、完全に狂ってるよ……!!」


 感情が爆発し、激しい怒りの言葉が飛び出す。だが、アイリスはどこ吹く風で、小首を傾げて実になめらかに言葉を続けた。


「狂ってなどいませんよ。せっかくの健康な肉体という資源があるのなら、使えるだけ使って、社会のために有効活用せねばなりません。

 ああ、こういう人間の行動理念を、昔の我が国独特の言葉では何と言うのでしたっけ……。そうそう。


――『もったいない』、ですね」


 その言葉がドームの空気に溶けた瞬間、俺の全身にぶわっと嫌な汗が吹き出した――。




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