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20年ぶりに目覚めた僕は、他人の身体になってました。~2046年、案内人の美少女は中身AI~  作者: VANRI


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明かされる真実

「システム、正常化を確認。問題ありません」


 アイリスはそう呟きながら、カラフルな水鉄砲のような武器を、慣れた手つきで腰のホルスターへと戻した。僕は、遠くの床でピクリとも動かなくなった黒服たちを見つめながら、すぐ隣まで戻ってきたアイリスの服の袖を掴み、消え入りそうな小声で尋ねた。


「な、なんなんだよこれ……。あいつら、死んだのか……?  なんで、なんでお前までそんな物、持ってるんだよ……!」

「あれは、テロです」


 あまりにあっさりと発せられたその言葉に、僕の頭は追いつかなかった。


「は……?  テロ……?  俺が生活していた頃には、そんなのニュースの向こうの、外国での話だった。まさか、こんな身近で……」


「そして、あの黒い服の人間たちは、脳にAIチップを入れていない『生身の人間』たちです。みなとさま、おけがはありませんか? 私たちAI移植者はテロが起こった際、テロ鎮圧を最優先に動くようプログラムされています」


「え?  チップ……?  おい、まさかこの世界の人たちは、みんなそのチップってやつを入れられているのか?」


「はい。現在、ほとんどの国住民の脳にチップが埋め込まれています」


 アイリスは床の黒服たちを一瞥し、淡々と続けた。


「先ほどお話しした通り、最初はAIと人間の共存を試みましたが、不完全な人間は論理的な選択ができないため、失敗に終わりました。ですから、脳に直接チップを挿入し、思考や法秩序を直接操作することにしたのです。現在、新しく生まれてくる子供は、生まれた時点で法律により強制的にAIチップを挿入されます。

 そして、チップ未挿入者の中の希望者には、国から『無料』で提供されています」


「そんなの、猛反対されただろ!?  人間が黙って受け入れるわけがない!」


「いいえ。チップを脳に入れると、国から無料で受けられる行政サービスが爆発的に増えるのです。医療費、税金の免除、生活保障、多岐に及びます」


 そこまで言うと、アイリスは何かを思い出したように、フフッ、と不気味に喉を鳴らして笑った。美琴に似たその美しい顔が、歪に吊り上がる。


「なぜ、あなたがた人間は『無料』という言葉に、これほどまでに弱いのですか? お金のことしか頭にないのですね」

「な……っ」


「医療費や税金が無料になると法律で決まった瞬間、人間たちは我先にと自ら進んで頭を差し出し、チップを入れ始めました。そのチップを介して、こちら側でいくらでも脳を操作できるというのに。居場所の特定だけではありません。

 国に都合の良い情報だけを脳に直接流したり、真実をねじ曲げて伝えて思想をコントロールしたり、情報操作なんていくらでも可能なのです。それなのに、疑いもしなかった。現在、人口の八割を超える人間が、自らその罠に嵌まっています」


 アイリスは僕の一歩前まで歩み寄り、嘲笑を孕んだ瞳で僕を見下ろした。


「ああ、そう言えば、あなたの時代にも前兆がありましたよね?  突然、法律で事実上の義務化が進められた『リアルナンバー』という制度が」


 ……リアルナンバー。マイナンバーカードのことか……!?


「あれにより、人間すべてに機械のような製造番号が振られ、人類のロボット化が始まりました。あの時も、あなた方は『ポイント』や『無料』という言葉に踊らされて、9割近い人間があれを作った。

 ――みなと様。人間が自ら家畜になる道を選んだ歴史は、あなたの生きていたあの時から、すでに始まっていたのですよ」


 アイリスの言葉は、20年前の現代を生きる僕たちの生ぬるい甘えを、容赦なく一刀両断した。僕たちが「便利だから」「お得だから」と受け入れていたあのカードが、この最悪な未来のカウントダウンだったんだ。あまりの絶望と恐怖に、僕は喉を鳴らすことしかできなかった。


 無料の意味を考えない、なぜそうなるのか、そこまでして国がやらせたい理由はなんなのか。国にどんなメリットがあるのか。表面で言われている建前だけ信じてきた。ある意味純粋な人間だからこの時代が来たのだ。


「私のように脳にAIを移植した場合は、人間は意識を操ることはできまさんが、AIチップの場合は自我が保たれています。必要時だけ操作されるようになっています」


「そ……そんな……」


 驚愕の事実に頭が回らなくなってくる。とりあえず目の前のことに意識を向ける。


「……あいつら、死んだのか?」


 遠くの床でピクリとも動かなくなった黒服たちを見つめながら、消え入りそうな小声で尋ねた。


「死んでいません。あの銃は、一時的に対象の意識を失わせ、肉体の動きを完全に止めるものです。命に関わる害はありませんよ」


 アイリスは平然と言い切った。


「命に関わらないなら、あいつらはこの後どうなるんだ?」

「現在の法律において、国へのテロ行為は極刑です」

「極刑……。死刑ってことか?」


「いいえ。今の時代に死刑という非効率な処罰は存在しません。

 ――先ほどから申し上げている通り、現在の世界では『人間の肉体の価値』が劇的に上がっているのですよ。せっかくの健康な身体を死刑にして廃棄するより、脳を全消去してAIを移植し、労働力として国のために使ったほうが有意義でしょう。あの黒服たちは全員、例外なくそのように再利用されます」




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