算術
爺ちゃんの言葉を思い出した僕は、
メッセージを入力する。
「算術では、特に何が苦手ですか?」
メッセージを二人に見せる。
二人とも
「それなら」
と頷く。
僕はメッセージを送る。
すぐに返信が来た。
「今やっている範囲で、足し算と引き算、掛け算も全て苦手です。」
二人にメッセージを見せると、安心した顔をした。
「どうする?」
僕は尋ねる。
「私は100マス計算が良いと思う」
とカエデちゃん。
「なんで?」
トマトちゃんが聞く。
「小学生のころの担任が、100マス計算原理主義者ってくらい、はまってて、めっちゃ勧められたんだ」
「うんうん」
「それで皆も100マス計算勝負にハマっちゃって、そのクラスの算数の成績は良かった」
あれ……。
カエデちゃんって、数学得意だったっけ。
二人はじっとカエデちゃんの顔を見る。
「なによ。算数の成績が良かったのは、その一瞬よ。担任が変わったら、100マスもしなくなったから、成績は伸び悩んだ」
二人とも頷く。
「100マス計算って、足し算だけじゃなく、掛け算とか引き算とかもできるんだよね」
僕は尋ねる。
トマトちゃんは、
スマホを見ながら、
「中学生向けに正負の数で100マスやってる人もいるみたいよ」
そう言った。
僕は、これ自分もやったほうがいいのでは、
と少し思った。
僕は100マス計算の画面を写真に撮り、
送信する。
「これは何ですか?」
返信が来た。
「これは我が国で劇的に算術力をアップさせる魔法陣です」
と入力した。
僕は二人に見せる。
二人とも笑い転げてOKサインを出している。
僕は面白くなって、そのまま送信する。
「そんな貴重なものを……。これはどう使えばいいのですか?」
真面目な返答。
少し申し訳なく思う。
「この縦と横の数を足したり、引いたり、かけたりして、その数字をマスの間に書き込みます。これをできるだけ素早くやっていくのです」
と入力。
OKが出たので返信。
「なるほど。足し算と、引き算、掛け算の3種類の勉強がこれ一つでできるということですね」
返答が来た。
僕は二人に見せる。
「ねぇ。この子真面目なんだから、魔法陣のところ、やんわり冗談っぽく言っていたほうが良いよ」
とトマトちゃん。
僕は考える。
「そうです。私たちの世界では魔法はありませんが、この勉強方法は、まるで魔法のように成績が上がることから、魔法陣とも呼ぶ人もいます。
残念ながら、本当に魔法の効果はありません。ただ成績が上がるのは事実です」
と入力をして、二人に見せる。
OKサイン。
送信した。
「あぁそうなんですか。とても楽しみです。やってみます」
と返信が来た。
「あのさ。掛け算なら九九を教えてあげたら?」
トマトちゃんは言った。
「それいいね。掛け算って九九覚えてないと、ムリゲーだもんね」
とカエデちゃん。
僕は考える。
「私たちの世界で、掛け算の学習では、一から九までを掛けたものを暗記するという風習があります。これを九九といいます。」
そうメッセージを作った。
「ここに九九の表があるから、これを送ってあげたら?」
カエデちゃんはスマホを見せる。
僕は写真を撮り、
メッセージと写真を送信する。
「こんな便利なものがあるのですね。これは発明です」
と返信が来た。
なるほど、異世界の人からすれば、九九でさえ発明なのか。
二人はメッセージを覗き込んでいる。
「九九なんて、めっちゃめんどくさかったけど、すごい勉強方法だったんだね」
トマトちゃんは感心している。
「私は7の段苦手だったわ」
カエデちゃん。
「私は6の段」
とトマトちゃん。
「逆に1の段、2の段、5の段は簡単だったよね」
と僕。
「たしか、678は難しかったはず。ここは難しいから重点的にと教えてあげるといいんじゃない?」
カエデちゃん。
僕はメッセージを作る。
「特に678の辺りは高難易度なので、重点的にやるといいです。125は簡単なので、練習時間はごく短めでいいかなと」
二人に見せる。
頷いている。
「ぶっちゃけ、125辺りを読むときは、得意げなんだけどね。6に入ると急に声が小さくなる」
カエデちゃんは笑う。
僕もトマトちゃんもつられて笑う。
「でも125も練習するんだよね。あの時間で678やってたら、もっとスムーズだったんじゃねって思うよね」
と僕。
二人とも頷いている。
返信が届く。
「わかりました。やってみます」
僕はメッセージを見せ、試験勉強を再開した。
10分ほどして、
「私、100マス、またやってみようかな」
カエデちゃんが言い出す。
「なんでなの?数学って、計算力より処理力+理解力じゃない?」
とトマトちゃん。
「いやね。
ある程度理解はしてるんだけど、ケアレスミスが多いって先生に言われたんだ。
それで2割くらい数字落としているって」
とカエデちゃん。
僕も思い当たる節がある。
「僕もケアレスミスが多いかもしれない。10分くらいでもしてみない?」
「10分ぐらいなら良いかもね」
トマトちゃんは頷いた。
カエデちゃんも嬉しそうに笑った。
それから、僕たちは試験まで毎日10分だけ100マス計算をすることにした。
……
中間テストが終わり、
数学のテスト結果がわかった。
なんと3人ともケアレスミスが激減して、成績が上がっていた。
「100マス計算。やってよかったね」
僕は言った。
「うん。これはスゴイ」
カエデちゃんも嬉しそうだ。
「ついでだからさ。
これからも毎日10分だけ、100マスしない?
一人だと続かないから」
とトマトちゃん。
二人とも頷く。
「だったら、メアリーちゃんにスクワット勧めたんだし、私たちもスクワットする?」
と僕は提案した。
二人とも少し考えている。
「最近太り気味だからなぁ」
カエデちゃん。
「私も……、スクワット、ダイエットとかに効いたりする?」
とトマトちゃん。
僕たちはスマホで調べ出す。
「見て。スクワットみたいな自重トレーニングでも、続けると体脂肪や筋力に変化が出るって研究があるみたい」
と僕は画面を見せる。
「論文って科学者がちゃんと研究したものでしょ。だったらやってみようよ」
とトマトちゃん。
僕とカエデちゃんは頷いた。




