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価値観

「電子化しなかったものはあるの?」

トマトちゃんは電子化に少し興味がありそうだ。


「国語辞典と通帳ぐらいかな。教科書とかノートも新しい学年になれば裁断して全部電子化されるし、あっ、でも領収書とか一部の書類はまだ電子化を躊躇してるみたい」

僕は答える。


僕は部屋を見る。

紙類はノートと教科書くらい。


「もしかして、通知簿とか、学校で撮った写真とかも?」

カエデちゃんは尋ねる。


「うん。そうだよ」

僕は答える。


「小説とかは無理だけど、教科書とかノートとかは電子化するのはいいかもな」

トマトちゃんは言った。


「うん。そうだね。部屋がスッキリはすると思う」

と僕。


「ねぇ、ジュンちゃん家に教科書とかノート持ってくれば、電子化してくれる?」

カエデちゃんは聞く。


「うん。いいよ」

僕が言うと、

トマトちゃんが目を輝かせている。


「トマトちゃんも持ってくれば、やってあげるよ」

僕は言った。


「ありがとう」

二人は僕に抱きついた。


(ぴろん)

スマホの通知音が鳴った。


僕はスマホを見る。

メアリーちゃんからだった。


「先日は失礼しました。僕とおっしゃるので、男性とばかり思っていました。

少し驚いてしまって……」

とメッセージ。


トマトちゃんとカエデちゃんが覗き込む。

「あれぇ。公爵令嬢ちゃんともう仲良くなっているんだ」

とトマトちゃんが口を尖らせる。


僕はメッセージを見せる。


「……というわけなんだよ」


僕はメッセージを考える。

「僕は女の子ですが、僕という言葉を使ってしまうのです。ややこしくてごめんなさい」

メッセージを二人に見せる。

二人とも頷く。

僕は送信する。


「いえ。こちらこそ。失礼しました。

あれから剣術の指南役の先生に腕を触らせて頂いたのですが、とても固かったです。

鍛える必要があるのがよくわかりました」


「それは良かったです。あと足腰の筋肉の量が少ないとばてやすいので、鍛えることが重要です」

メッセージを二人に見せる。

二人とも頷く。

僕は送信する。


「なるほど。足腰はどうやって鍛えるのですか?

立場上、護衛がいないと外にも気軽に出歩けません」

返信が返ってきた。


「すごいね。これガチな公爵令嬢じゃん。

でも護衛とかいるんだったら、剣術とかいらないのでは」

カエデちゃんは不思議そうな顔をする。


「知らないの。公爵令嬢ともなると、屋敷の中に不審者が忍び込んでいたり、一人の時を狙って襲われるとか、誘拐されたりするのよ。そんなの常識よ」

とトマトちゃん。


公爵令嬢ってそうなんだ。


「公爵令嬢って色々と危険なのですか?」

僕はメッセージを送る。


「はい。このあいだは誘拐されかけるし、毒殺されかけたことは十回以上あります。先日は屋敷の中で不審者が捕まりましたし」

とメッセージ。


カエデちゃんもトマトちゃんも目を輝かせている。

「そんな楽しそうな顔をしたら不謹慎だよ」

と僕は注意を促す。


「そんな事言ったって、ジュンちゃんもさっきから楽しそうだよ」

トマトちゃんは鏡を見るように促す。


僕は鏡を見る。

鏡に映った僕は、なんだか楽しげだった。


人が大変な目にあっているのに、なんでこんなに楽しげなんだ。

僕の性格は悪いのか。


「僕……、意地悪なのかな?」

そう呟く。


「ジュンちゃんが意地悪なことはないと思うよ。優しいし。ただ目新しいモノを発見したから、興味があるんじゃない?」

カエデちゃんは言った。


トマトちゃんも頷いている。


そうか、別に性格が悪いわけじゃないんだ。

興味があるから楽しそうな顔をしてるんだ。


そのことを知り、僕の気持ちは少し明るくなった。


「それであれば、なおさら足腰を鍛えるのは重要そうですね。いざとなれば走って逃げられますから」

僕はメッセージを見せる。


そして送信。


「公爵の娘が逃げても良いのですか?」

短い返信。


三人は言葉を失った。

危険な目にあってもなお、逃げても良いか聞く。

そのこと自体が理解が追いつかない位置にあった。


僕はトマトちゃんの顔を見る。


「小説情報だけど、逃げるのは恥みたいな教育を受ける王族が多いと聞くし……。

その価値観を変えるには、何か強い言葉が必要かも」

トマトちゃんは言った。


カエデちゃんは鼻をかいている。

「逃げるが勝ちって諺があるけど、あれとかどうだろう」


僕は「逃げるが勝ち」と検索してみた。


すると、この言葉は中国の兵法書から来ていることがわかった。


「私たちの世界の兵法書には、『逃げるが勝ち』という、勝ち目のない戦いや損な争いからは逃げるのが最善策だとする格言があります。」

とメッセージ。


「そうですか……、たしかに逃げるのが最善の策という場合もありますよね。私も究極の立場になった時は、侍女とかに逃げることをすすめると思います。

しかし王族としての責任が……」

と重い返信。


どうしよう。


見るとトマトちゃんは考え込んでいる。

「責任感が強い子なんだねぇ」

そう呟く。


「こういう時、小説ではどんな話をするの?」

僕は尋ねる。


カエデちゃんもトマトちゃんをじっと見る。


トマトちゃんはちらりと横を見て、

「うーん。こんなセリフがあったと思う。」

そう言い、

トマトちゃんはごほんと咳払いをする。


「王族としての責任とは、そこで傷つけられることではありません。

できる限り怪我をせず生き延びて、民を守ることです。

あなたは卑怯な輩に敗れ、民を守らないおつもりですか」

少し感情を込めて言った。


「それいい」

カエデちゃんは目を輝かす。


僕も頷き、早速メッセージを入力する。


「王族としての責任とは、そこで傷つけられることではありません。

できる限り怪我をせず生き延びて、民を守ることです。

あなたは逃げることを恐れ、民を守らないおつもりですか」


僕なりに多少アレンジした。


二人にメッセージを見せる。

頷いたので送信をした。


五分が経過した。

返信はなかった。


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