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ファルクエン戦記  作者: 結城 からく


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第34話 弱点

 俺は瞬く間に黒い煙に包囲される。

 竜翼で浮上を試みた瞬間、煙が一斉に体内に潜り込もうとしてきた。

 即座に俺は電撃をぶっ放す。

 しかし煙は散らせず、あっけなく体内に侵入されてしまった。

 窒息感と高熱の苦しみにより、俺は竜翼の制御を失敗し、そのまま地面に墜落する。

 全身の骨が砕ける激痛に悶えていると、メズィの驚く声が聞こえてきた。


「なんだお前! バヌゥカと同じ祝福じゃねえか! でもさっき奴が死んだのを見ただろ! 俺には通用しねえよ!」


 視界が真っ黒で何も見えない。

 どうやら付近一帯に煙が集中しているらしい。

 視界を奪いつつ、このまま一方的に殺す気のようだ。


(さすがはアーデの王……とんでもなく強いな)


 あらゆる攻撃を無効化する煙化。

 そして相手の体内に入って窒息と高熱で仕留める戦術。

 普通ならば逆転は不可能だろう。

 だがしかし、簒奪の祝福で多くの攻撃手段を持つ俺にはまだやれることがあった。


(本当に無敵かどうか確かめてやる!)


 俺は毒の祝福を使い、体液を毒に変換した。

 能力の調整でなるべく症状が重たくなるように意識する。

 次の瞬間、凄まじい勢いで大量の煙が俺の口から飛び出していった。

 周囲に漂っていた煙も同時に離れて一か所に集まり、人間の姿になる。

 その場で激しく嘔吐したミズィは、血の涙を流して叫ぶ。


「げええぇっ!? なんだクソ、何をしやがった! ううぅ、気持ち悪い……」


 どうやら毒は効果抜群だったらしい。

 俺はすぐさま雷撃を飛ばすも、これは煙になって避けられてしまった。

 ただし、煙の動きは先ほどよりも鈍く、俺に近寄ろうとしない。

 触れられない位置を漂うばかりで、攻撃を仕掛けてくる兆しはなかった。

 煙の中に混ざる口が俺に向かって問う。


「危ねぇな……まさか俺に毒を盛る奴がいるとは思わなかったぜ。お前、何者だ?」


「ただの新人傭兵だ」


 そう答えた俺は水の祝福を発動した。

 無数の小さな水の球を発生させて周囲に浮遊させる。

 付近の煙は水の球に混ざり、自由に飛び回る煙はどんどん少なくなっていく。


(なるほど、濡れた煙は上手く制御できないのか)


 無敵と思われた煙の祝福も、意外と弱点が多いらしい。

 特に様々な祝福を使える俺とは相性最悪のようだ。


 残り少ない煙がゆっくりと空へ逃げ始めた。

 ミズィは焦りと怒りを含んだ声で喚いている。


「ふざけんじゃねえ、本当にどうなってんだよ!? 一体いくつの祝福を……」


 発言が途中で止まる。

 逃げた先には、翼で滞空するキサラが待ち構えていた。

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