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ファルクエン戦記  作者: 結城 からく


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第31話 蹂躙劇

 バヌゥカの状況悪化をよそに、侵略作戦そのものは復調した。

 突破力に特化した動き――つまりバヌゥカと鈍色の獅子が最前線に出る編成に変更したのである。

 これに加えて損害度外視、退路の確保も放棄した攻撃が功を奏し、防戦に徹するアーデ軍を蹂躙できるようになった。


 以降は攻めあぐねていた数週間が嘘のように連戦連勝が続く。

 相手は確かに強い。

 しかし、本気を出したファルクエンの敵ではなかった。

 軍は数日単位でアーデの防衛網を粉砕し、もうすぐ首都という地点まで到達した。


「絶対にここを通すな!」


「いいか、死んでも相手を殺せッ!」


「将軍が前線にいるぞ! あいつを殺せば終わりだ!」


 砦に籠るアーデ軍から無数の矢が放たれる。

 そこに突っ込むのはグイルの操る動く死体の軍勢だ。

 彼らは矢を食らいながらも平然と走り、捨て身で砦に飛びついた。

 そうして互いを足場にして外壁をよじ登って侵入すると、そこから敵兵を噛み殺して仲間に加えていく。


 動く死体の対処で矢が止まった隙に、バヌゥカが真正面から突撃を仕掛けた。

 雷光の祝福による超加速で門を粉砕しつつ、待ち構えていた敵兵を片っ端から斬殺する。

 戦闘中のバヌゥカは常に高速で動き回るため、誰も奴を捉えることができなかった。


 砦内が混乱してきたところで、翼を生やしたキサラが上空から強襲する。

 彼女は一撃離脱を不規則に繰り返し、敵を撹乱していた。

 キサラの迎撃を狙う者は、動く死体かバヌゥカの餌食となっている。

 多方向から攻められてはどうしようもないだろう。


(そろそろ俺も貢献するか)


 こっそり砦に近付いた俺は、近くにいた敵へと走り寄る。

 そこから血のナイフを何本か投げた。

 ナイフが刺さった兵士は、仕込んだ毒で倒れる。

 その首を影の手で握り潰しつつ、硬化で身を守りながら疾走する。


「うおおおおおおおぉぉぉっ!」


 階の移動は竜翼を使う。

 下手くそなりに空中機動を活かし、残る敵兵を毒か素手で殺していった。

 そうして間もなく砦はファルクエン軍によって制圧された。

 少し疲労した様子のバヌゥカは、俺を睨んで問う。


「能力が多様すぎる。一体何の祝福だ」


「言うわけないだろ」


「手の内を明かすのが怖いのか、臆病者め」


「挑発したって無駄だ。祝福の内容は教えない」


 俺はきっぱりと断る。

 忌々しそうに舌打ちした後、バヌゥカは兜を脱いだ。


「まあいい。数日後にはアーデの王を殺す。その次にお前を――」


「おっと、それは聞き捨てならんなァ?」


 唐突に愉快そうな声がした。

 室内に黒い煙が流れ込み、バヌゥカが浮遊する。

 その身体が床に叩き付けられた。

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