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ファルクエン戦記  作者: 結城 からく


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第30話 別れ

 翌日、自爆要員の村人達はファルクエン領の開拓村へ退避することになった。

 毒による死を恐れたバヌゥカが俺の要求に従ったのである。

 施された自爆の魔術刻印は消せないが、遠く離れた場所にいればバヌゥカには起爆できないらしい。


 村人達の乗る馬車には、バヌゥカから提供された物資が大量に載せられていた。

 そのうち一人が俺を見て心配そうに言う。


「アルフ……私達と一緒に来ないのかい? 開拓村なら平穏に暮らせるはずだよ」


「ああ、やることがあるんだ」


 ハンニグへの復讐――そのために俺は生きている。

 俺の覚悟の固さを悟ったのか、村人達はそれ以上は何も言わなかった。

 馬車を出発させた彼らは元気に手を振ってくる。


「アルフ、元気でな!」


「辛くなったら村に来いよ! 待ってるから!」


「死ぬんじゃねえぞ!」


 村人達の馬車には、動く死体の護衛がついていた。

 死体は全身鎧と槍でしっかり武装している。

 俺の隣にいたグイルが冷静に述べる。


「安心しろ。常に視界は共有している。開拓村までは完璧に護衛してやる」


「ありがとうございます」


 礼を言った俺は、少し離れた場所に立つバヌゥカのもとへ向かう。

 バヌゥカは不機嫌そうに睨んできた。


「満足か」


「……お前のせいで故郷の人間が何人も死んだ。満足するはずがないだろう」


「ファルクエンでは強さこそが正義だ。弱者に価値などなく、言い分も通用しない」


「それなら俺がお前を脅した件も不問ということか」


 俺の指摘に周囲の兵士がざわめく。

 バヌゥカは悔しげに歯を食い縛った後、呻くような声で宣告する。


「小僧……お前はいずれ、俺が殺す。絶対に逃がさんぞ。俺が受けた屈辱を百倍返しにしてやる」


「上等だ、やってみろ」


 俺は堂々と言い返す。

 互いの殺気がぶつかって爆ぜる寸前、キサラが割り込んできた。


「まあまあ、二人とも! 今は協力関係ですからね! 因縁はありますけど、仲良く戦いましょうっ!」


「……足だけは引っ張るなよ」


 舌打ちしたバヌゥカがその場から立ち去る。

 俺はキサラに頭を下げた。


「仲裁してくれてありがとうございます。助かりました」


「いえいえ! 別にこのまま殺し合うのも楽しいかと思ったんですけどね! ちょっと残念です!」


 キサラは満面の笑顔で言う。

 それを聞いたファルクエン兵はぎょっとした。

 張り詰めた空気の中、遠くで振り返ったバヌゥカが俺達を怒鳴りつける。


「鈍色の獅子ッ! 遅れるなよ!」


 そうして侵略作戦は再開した。

 バヌゥカへの脅迫を経て、鈍色の獅子の扱いは明確に変わっていた。

 建前上はバヌゥカの親衛隊となり、常に彼のそばで戦うことになったのだ。

 まあ、監視したいのが本音なのだろう。

 バヌゥカは俺達を危険視している。

 特に裏切りを恐れているはずだ。


 一方で俺達がいなくては侵略が頓挫してしまう。

 だから力を借りねばならない。

 侵略に失敗すればファルクエンでの立場が悪くなるのは明白だ。

 将軍バヌゥカは難しい立場で選択を迫られているのだった。

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