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ファルクエン戦記  作者: 結城 からく


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第25話 戦争狂

 将軍バヌゥカは俺達を見た途端、苛立った様子で嫌味を飛ばしてくる。


「遅かったな。鈍色の獅子はノロマの集まりなのか」


「色々と準備があるのでな。考えなしに動く戦争狂と一緒にされては困る」


「……ほう。腐れ死霊術師がデカい口を叩くではないか。よほど死に急いでいるらしい」


「喧嘩なら喜んで買うぞ。脳味噌の小さい死体が欲しかったところだ」


 グイルは陰湿な目でバヌゥカを見上げる。

 両者の殺気が衝突した瞬間、笑顔のキサラが割り込んだ。


「将軍! お久しぶりです! お元気でしたかっ!」


「キサラ……再び同じ戦場に立つとはな」


「はい! とても光栄ですっ!」


「俺は願い下げだ。味方殺しのクソ女が」


 バヌゥカは嫌悪感に満ちた様子でキサラに詰め寄る。

 一方でキサラは平然と笑みを返していた。

 向けられる威圧感を受け流し、へらへらとした態度で立っている。


(会話の感じからして、二人は何か因縁がありそうだな)


 俺の疑問を察したのか、グイルが小声で解説をしてくれた。


「キサラはバヌゥカの元部下だ。かなり優秀だったが、頭に矢を食らって性格が豹変したらしい」


「豹変……ですか」


「絶えず殺人衝動に苛まれる体質となり、我慢できずに味方の兵士を八つ裂きにしたそうだ」


 説明が聞こえたらしく、キサラがいきなり振り向いてきた。

 彼女は前髪を掻き上げて額を見せてくる。

 そこには古傷が残っていた。


「戦争のストレスと頭の矢でおかしくなっちゃったんですよね! そのせいでファルクエン軍をクビになりましたけど!」


「殺さなかっただけ感謝しろ。今でもお前の暴走を恨む者は多い。同行中は背中に気を付けることだ」


「了解です! お気遣いありがとうございますっ! でも私の背中を狙ったら、誰であろうと確実に解剖するので大丈夫です!」


 キサラの発言を聞いたファルクエン軍の兵士達がざわめく。

 彼らは驚き怒り、そして恐怖していた。

 兵士達の反応を見るに、キサラの発言は嘘や冗談ではないのだと思う。

 状況次第では躊躇いなく実行するのだろう。


(この人、ヤバすぎるだろ……)


 暫しキサラと対峙していたバヌゥカだったが、ため息と共に殺気を解く。

 そして視線を俺に移した。


「小僧。お前も鈍色の獅子か」


「新人のアルフです。よろしくお願いします」


「興味ない。俺の記憶に留まりたければ戦果を出せ」


 バヌゥカは踵を返して砦内へと消えていった。

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