奇跡①
ざわめいた会場が静かになった。俺は、面白いから、僧侶の上をパタパタと飛び続けた。そして、カルメレンゴの膝の上に乗った。カルメレンゴは、笑っている。それを見ていたレイちゃんが、我慢できなくなったようで、宙に浮きくるくると回り始めた。そして、俺の隣の僧侶の膝の上に座った。僧侶は、目を丸くしている。レイちゃんは、ケタケタと声を出して笑った。その笑い声に反応するかのように、一斉に笑いが起こった。
笑いを遮るように、法王が絵画を広げ、僧侶たちに見えるように向けた。そして、話した。
『皆さん、この絵を見たことないですか。』
僧侶たちは、絵に目を向けた。レイちゃんが座っている僧侶が、声をあげた。
『それは、あの有名な岩窟の聖母ですね。』
『さすがは、フランス出身のミッシェル君だ。そう、岩窟の聖母。もちろん、作者は、かのレオナルドダヴィンチです。』
『だけど、その絵は、本物ではないですよね。本物は、確かルーブルにあるはずです。』
『確かに、その通りだが、先ほどちひろ様から受け取ったこの絵、どうも本物のようだ。ダヴィンチのサインも入っている。もちろん、鑑定は必要だが。本物だとすれば、世紀の大発見ですぞ。いわば奇跡です。』
静かに見守っていた彩先生が動いた。
『法王、私たちの見解はこうですわ。この絵はダヴィンチの作だと考えてます。そして、この絵は、有名な岩窟の聖母の下絵。そして、未来に託したメッセージだと思います。ダヴィンチが誰に頼まれて描いたのかは不明です。しかし、メッセージの送り先は、明らかに私たちです。中央に描かれている女性の瞳、つまり聖母の瞳をよくご覧になって下さい。ルーブルの聖母と違うことが分かります。そして、もう一つの秘密に、きっと気がつくはずです。』
再び、一同は、ざわつき始めた。
法王も、僧侶も絵の中の聖母の瞳を見つめている。
『うーん。あれ、この瞳、どこかで見たことあるような。』
法王も僧侶も謎解きを楽しんでいるようである。ならば、答えは言わない方がいい。いずれ気がつくはずだ。
『確かに、見たぞ。この特徴ある瞳。』
レイちゃんを抱っこしている僧侶が考えている。灯台下暗しとは、まさにこのことだ。そして、イライラを隠せずに大声をあげた。
『ああ、なんだか、もやもやする。誰だ、この瞳は。』
法王と他の僧侶が、振り向いた。そして、法王が、ハッとした。
『ミ、ミ、ミッシェル、膝の上の女の子の瞳を見て。』
レイちゃんが乗っている膝の持ち主がミッシェルだ。ミッシェルは、レイちゃんを抱き、自分の方に向きを変えた。
『ああ、この目だ。間違いない。この子の瞳は、絵の中の聖母の瞳と全く同じだ。』
一同がどよめいた。知ってか知らずか、レイちゃんが、パタパタと宙に浮いて、笑顔を振りまいた。こんな可愛い笑顔、そして奇跡を目の当たりにしては、信じざるを得ないはずだ。
彩先生が話した。
『この子は、まだ3歳の子です。見ての通り、普通の女の子とは違います。この力は、まだ発展途上。私たちは、この子を守るために、日々活動しております。この子の純粋な心をよく思わない輩が存在するのです。ルシファの一派です。ルシファは、この子の命を狙っているのです。実際、何度か狙われました。』
『彩様。ひとつ質問しても、宜しいですか。』
『どうぞ、何なりと。』
ミッシェルの隣の僧侶が質問した。
『ルシファの一派となれば、それは悪魔の一味。悪魔が襲って来たということですか。』
『はい、おっしゃる通りですわ。』
『しかし、見た所、美しい女性二人に、女の子二人。どうみても、悪魔に対抗できるとは思えないのですが、、、。』
『そう思うのは当然だと思います。しかし、私たちには、最強の防御と最強の攻撃があるのです。ちひろ、少し見せてあげなさい。ここは、文化財の宝庫、あまり派手にはやらないように。』
僧侶たちは、何を言っているのかが理解できていない。法王とカルメレンゴは、ニコニコしていた。
俺は、どうやって暴れようか考えた。彩先生が言う通り、この部屋にあるものは、文化財レベルのものばかりだ。焼いたり、壊したりは出来ない。俺は宙を回りながら、あるものを見つけた。テーブルや、壁際に飾られているキャンドルだ。火のついていないローソクに火をつけることにした。天井近くから、ローソクに向かって、口から火を吹いた。ローソクは次から次へと明るく光出した。カルメレンゴの前のお皿を見ると、ステーキが残っている。面白いから、そのステーキに火を吹いて、こんがりと焼いてみた。
僧侶らは、唖然としている。当たり前だ。目の前で小さな女の子が、空を飛び方から火を吹いているのだから。
俺は、気を集中した。
『はああああああああ、はああ!』
オーラが体を包み、そして、その体がだんだんと大きくなる。ヒロ様の登場だ。
『私はヒロ。先ほどまでの、ちひろは仮の姿だ。レイちゃんを守るために、同じ年齢の女の子に変身している。そこの衛兵、腰の銃を俺に向けて撃ってみな。』
指名された衛兵は、戸惑っている。
『衛兵さん、遠慮は無用よ。どうぞ、あの大男に向けて、銃を発射して。』
衛兵は、法王の方を見た。法王は首を縦に振った。衛兵は、銃を構えた。
ガバーン‼️
凄まじい、銃声が部屋に轟いた。銃弾は俺の胸を貫いた。見事な腕前だ。俺は、銃弾に倒れた。彩先生、かすみ、レイちゃん以外、皆、俺を心配しているようだ。そろそろ、いいかなあ。俺は、体をゆっくりと起こした。そして、裸の胸を見せた。銃弾で赤く広がった筋肉。あえて、見せた。そして、気を入れると、みるみるうちに傷が塞がっていく。2分ほどで、傷は完全になくなった。
『こんな感じです。俺は攻撃も防御も完璧。俺を倒せるものは誰もいない。ただし、俺以外の3人には、この能力はない。だから、3人を守るのが俺の使命なのだ。今は、この部屋での披露となったので、かなり遠慮をしたが、やろうと思えば、5分で、この宮殿を跡形もなく滅ぼすこともできる。しないげどね。』




