海外旅行④
宮殿内を歩くこと、10分。大きな扉の前に到着した。重厚な扉は、木製だろうか、彫刻が施してある。この一枚の扉そのものが、美術品と言っても過言ではない。スイス衛兵2人が扉の両側に立っている。執事が目配せすると、衛兵が扉を開けた。
扉の向こうに広がっているのは、見たことのない長い長いテーブル、そして、華やかなステンドグラスの窓、さらに大きなシャンデリア。はっきり言おう。こころが落ち着かない。ここで、食事しても、全く味は分からないであろう。長いテーブルの左側には、4つの椅子が用意されている。大きな椅子が2脚。小さい子供用の椅子が2脚。明らかに、我々の席だ。反対側の右側には既に、4人の方々が座っておられる。カルメレンゴと、同じ様な衣装を着ている3人の男が座っている。係りの者に促された、緊張の中、席に着いた。すると、我々が座るのを計ったように、奥の扉が開いた。奥からは、ローマ法王が登場し、1番奥の中央に座った。
大勢の執事が、一斉にグラスに液体を注いだ。隣のかすみのグラスを見ると、赤ワインだ。飛行機の中での失態があったので、今回は飲みたいという衝動は起きなかった。俺とレイちゃんには、葡萄のジュースが注がれていた。
法王が立ち上がった。向かいの4人も立ち上がった。それを見て、我々も立ち上がった。
『今日は、古くからの友人、そして新しい友人が、お越しになられました。私は、本当に嬉しいです。今宵を、楽しい宴にして頂ければ、幸いであります。彩様、かすみ様、レイ様、ちひろ様、皆様方の幸せに乾杯。』
法王の挨拶で、晩餐会が始まった。運ばれてくる料理は、どれも美味しかった。高級料理というより、どちらかというと家庭的、田舎料理と呼んだ方が近いかもしれない。
『信じられないわ。法王が私の名前を呼ぶなんて。』
かすみの興奮は最高潮に達していた。
『レイちゃん、いかがですか?イタリア料理は、口に合いますかな?』
『はい。とても、美味しいです。日本のスパゲティーとは、全く違ってて、驚きです。』
レイちゃんは、物怖じせず、しっかりと答えている。横で見ていて、とても微笑ましい。対面の僧侶らも、微笑んでいる。レイちゃんの人の心を温かくする力が働いているのか。
そして、僧侶らの目は、彩先生に釘付けである。無理もない。聖職者として、女性との関係を絶っているのである。まあ、それにしても、彩先生の衣装は露出度が高すぎる。場所をわきまえるべきだと思った。
晩餐会が終わりに差しかかろうとしていた。デザートが運ばれてきた。我ら4人は、皆、満足な顔色をしている。俺は、近くの執事を呼んだ。
『これを法王に。』
黒い筒を渡した。例の絵画などが入っている筒である。執事は、筒を開け、中身に危険がない事を確かめると、法王の元に筒を差し出した。法王は、それを受け取ると、ゆっくりと中身を取り出した。法王の顔つきが変わるのが分かった。俺は、ゆっくりと宙に浮き、テーブルの上を3回ほど旋回したのち、法王の前で止まった。
『それは、あるところから、譲り受けた代物です。これについて、ご意見を伺いたく、参上した次第であります。』
我々4人以外の全員の体が固まっている。いきなり、空を飛んだところを見せたのだから、むしろ普通の反応だ。一瞬の間を置いて、衛兵たちが法王の護衛と、俺の捕獲に動き出した。しかし、法王はすぐに衛兵の動きを止めた。
『皆さん、大丈夫です。今、奇跡を目の当たりにしました。なぜなら、この子は神なのです。名前をちひろ様といいます。彼女は神の一人です。そして、今宵、ご招待した全員が神である事を、知って頂きたい。今宵、奇跡が何度も起きると思います。そして、今、拝見したこの筒の中に、奇跡が入っていました。』




