海外旅行①
彩先生の発言に、かすみが抵抗した。
『そんなあ。急にイタリアに行こうなんて言われても。何の準備もしてないし。伊豆の温泉に行くこと訳がちがうわ。』
かすみの言っていることが正論である。しかし、正論が通じる相手ではないのが困った問題なのである。俺が彩先生に、『レイちゃんにスパゲティーを食べさせる」なんて、言ったのが悪かった。そうでなければ、いつものごとく、瞬間移動で飛べたのに。
『それに、彩さん。レイはパスポートを持ってないわ。だから、そもそも海外旅行は無理だわ。』
さあ、どうする彩先生。きっと想定内だとか言うんだろうなあ。
『大丈夫よ、かすみさん。私がいれば、パスポートなんて、いらないわ。私もパスポートなんて持ってないですもの。ちなみに、ヒロ君も持ってないわよ。だって、死亡届を提出しちゃってますもの。』
ちょっと、待て。そうか、俺は死んでることになっているんだった。じゃあ、自由に海外に行けないってことじゃん。
『かすみさん、ローマ法王に会いたくありませんか?』
『えっ!ローマ法王に会いに行くんですか?と言うより、そんなに簡単に会えるはずないわ。』
『それがね。会えるのよ。なんなら、空港まで迎えに来させてもいいわ。会いに行くのが面倒なら、いっそのこと、ここに来させちゃおうかしら。』
『そ、そ、そんなあ。もう、彩さんたら、言い出したら絶対に引かないんだから。分かりました。行きましょう。でも、さすがに今日はやめて。せめて、3日だけ待って。』
『はい。では、決まりね。女4人でイタリア旅行ね。』
女4人って、、、。はあ、やっぱり、ちひろで行くのかあ。じゃあ、本場のイタリア料理もワインも無しで、俺はいつもなミルクかあ。ああ、行きたくない。
イタリア行きが決まったとはいえ、パスポートはどうするんだあ。4人のうち、パスポートを持っているのは、かすみだけなんだけど。外務省に圧力をかけ、今日中にパスポートを用意しろとか、言ってるのかもしれない。俺は、恐る恐る聞いてみた。
『彩先生、パスポートは、いったいどうするんですか。』
『ヒロ君、さっきの話を聞いていなかったの?そんなもの必要ないの。私たちは神なんですから。神の行為に制限など誰もかけられないのよ。』
『まあ、俺1人ならなんとでもなるけれど、レイちゃんもいることだから。危ない目には合わせたくないよ。』
『レイちゃんの心配をしてるのね。お姉ちゃん思いで、いい子だね。』
完全にはぐらかせている。
『ヒロ君、大阪に行ったこと覚えてる。』
『あっ!まさか、また政府専用機を使うってことですか。』
『さすが天才ちひろちゃん。その通り。羽田空港から、政府専用機でローマまで行き、迎えの車で移動する予定よ。もちろん、税関はフリーパス。国賓扱いの旅行だと思えば、分かりやすいかしら。さっき、ちらっと行ったけど、バチカンにも、迎えをよこすように、手配も取りましたわ。さすがに、法王は来ないけどね。そうそう、パスタも予約済みよ。法王と一緒に食べましょ。』
俺の想像を超えていた。新宿あたりで、パスタを食べようと思っていたのが、政府専用機でイタリアに飛び、ローマ法王と一緒に食べることになるとは、誰が想像できる。手ぶらで、行くわけにも行かないなあ。仕方ない、ダヴィンチの絵を持って行こう。彩先生の言ってた通り、俺が持っていても意味がない。人類の宝なのだから。




