宿命②
『お前ら、何をやってる。なぜ戦わない。そして、お前は誰だ。』
『俺か。お前は、俺が最強だと言った。それは正しい。なぜだか分かるか。俺は神だ。ここにいる四体の瑞獣も神である。神に汚れた人の心など、全く通じないのだ。お前の負けだ。』
『馬鹿なことを。どうやら私も本気を出さねばならないようだ。私が無敵だということを教えてやろう。私には無敵な守護神がついているのだ。お前には、絶対負けない。』
『どこまでも他力本願な男だな。さっさと、その守護神とやらを呼んでこい。』
やっと、主役の登場だ。空間が歪んだ。そして、亀裂が入り、その亀裂から、大男が出てきた。
『ヒロ殿。どれだけ強くなったかな。お手合わせ願おう。』
男は、その大きな拳を俺にめがけて、打ってきた。俺はその拳を避けることなく、胸で受け止めた。もの凄い衝撃を感じた。やはり強い。この男は途方もなく強い。しかし、この拳に込められた力は、憎しみや怒りではない。愛だ。それが身に染みた。俺はその愛に感謝の気持ちを込めて、激しいほどのスピードで、男の胸に両掌を打ち込んだ。俺は笑った。
『あははは〜。あなたは、強い。しかし、俺も、結構強いでしょう。』
『やるな。わしの目に狂いはない。長年待ったわしの目に狂いはなかった。我が主様。』
男は片膝をついた。
『伐折羅大将!』
『ヒロ殿』
俺は、大男の肩を抱いた。
『畠山殿、遊びは終わりだ。あなたの言う通り、このお方は最強だ。このお方に勝てる人も獣も、神もいません。あなたの負けです。』
『何を馬鹿なことを言っている。わ、わ、私の命令を聞けないのか。その男を倒せ。はやく倒せ。』
『ひとつ教えてあげましょう。わしは、あなたの守護神ではない。わしは、このお方の守護神なのだ。倒すなら、ご自分でどうぞ。』
『ならばどうして、今まで私を守ってくれたのだ。』
『我が住まいを、そして四体の瑞獣を守ってくれた感謝だ。畠山殿、本当に感謝している。だからこそ、もうこれ以上は、お止めくだされ。』
『私は、この国を守りたいだけだ。ちひろという子供によって、この国が揺らいでしまうかもしれない。それを避けたい。私は間違っているのだろうか。』
『畠山殿よ、答えは簡単だ。この男の目を見よ。そして、心で感じてみるのだ。答えは分かるはずだ。』
畠山と呼ばれた男が俺の目を見ている。礼には礼で応えよう。俺も男の目を見た。
この男、、、悪い奴ではない。心は純粋だ。思いが熱くなり過ぎて、暴走しているだけだ。ある意味、俺と同じような性格なのかもしれない。よくよく考えてみれば、本当に悪い奴なら、伐折羅大将が放っておくはずがない。
『ああ、この目は、、、どこかで見たことがある。どこだ?』
畠山は、さらに俺の目を凝視した。横で伐折羅大将が笑っている。首を傾げる畠山。すると、凝視していた目線が伐折羅大将の方に動いた。そして、また俺に、再び伐折羅大将に、、、。何故だか分からないが、俺と伐折羅大将を見比べているように見える。
『そうか、そういうことなのか。それならば納得できる。』
そう言って、畠山は俺の前で平伏した。俺は変な気分だ。俺の周りの者は、みんな俺の正体に気づいているのに、本人の俺だけが分かっていない。
『しかし、貴方様のようなお方が、なぜ、三種の神器を探しておられるのですか。』
『その前に、一つだけ答えておこう。俺は、この国を滅ぼすつもりなど毛頭ない。滅ぼすつもりがあるなら、こんなまどろっこしいことなどしない。半日あれば、潰せる力はある。三種の神器は、何となく、成り行きで見つけられるような気がしているだけだ。三種の神器を見つけることが、目的ではない。見つける過程で、俺自身の正体が判明するのではと、勝手に思い込んでいるだけだ。』
『な、なんと、貴方様は、ご自分がどれだけ、お偉い方なのか、ご理解なされていないのですか。』
『畠山殿、だからこそ面白いのだ。そして、だからこそ、この方の魅力に次々と仲間が増えている。どうだ、畠山殿、貴方も仲間になられてはいかがかな。貴方には、その資格があるぞ。』
『仲間ですか?しかし、私には、委ねられた使命があります。その使命と相反するお方の仲間になれと言われるのですか?』
畠山の頭の中は混乱をしている。
『あなたに使命があるように、俺にも使命がある。ただし、俺の使命は、あなたの使命より遥かに大きい。全世界、全宇宙の平和を築くこと。これが俺の使命だ。一緒にでかい使命を果たさないか。』
『私の使命は、ちっぽけなものだと、仰るのですか。』
『そうだ。民族の違い、宗教の違い、そんなものは、ちっぽけなものだ。そんなちっぽけなもので、地球のあちらこちらで、争っている。人の命が失われている。うんざりなのさ。俺に言わせれば、三種の神器も、ちっぽけなものだ。』
『さすがに、それは言い過ぎではないですか。』
『あなたは、ユダヤの三種の神器の秘密を守りたいのだろう。ぜひ、守り続けて下さい。ちなみに、マナの壺は、既に手に入れている。そして今日、アロンの杖も、その意味を理解できた。残りはアークだけだ。いずれ、判明すると思っている。』
『な、なんと言うことを申されているのですか。私が長年研究をして、未だに結論が出ていないことを、
貴方様は、理解しているということですか。』
『そうだ。その通りなのだ。だが、ここでそれを明かすことはしない。永遠に謎のままの方がいいこともあると思うからだ。』
色々なことが、俺の周りで起きている。その一つ一つが、不思議なことであり、謎に包まれている。俺は、それらをことごとく解明してきた。しかし、自分自身についてだけは、全く分からない。俺にとって、超えなければならない壁である。




