宿命③
畠山は、顔を真っ赤にしている。興奮しているのだ。
『マナの壺と、アロンの杖を見つけたのですか?』
『そうだ。我が手にある。』
『なぜ、貴方様のところにあるのですか。そもそも、ユダヤの宝ですよ。日本人の貴方が持つべき宝ではない。』
『ならば、畠山さん、貴方も日本人であろう。』
『私は特別なのです。貴方様とは違うのです。』
『畠山さん、偽名を使うのであれば、もう少し考えた方がいい。』
畠山の顔に驚きが見えた。
『なぜ、そんなことを言うのだ。』
『畠山さん、貴方は自分を特別だと言った。ならば、俺はもっと特別だ。俺には色々な能力がある。実際に、この場で起きたことは、普通の人にとっては理解できない不思議なことだろう。まず、俺は自由に姿形を変えられる。ちひろという女の子は、その中の一人だ。空を飛んだり、瞬間移動もできる。さらに、人の心の中を見ることもできるのだ。だから、貴方の考えていることは全て分かる。秦さん、これが貴方の姓だ。』
『私の正体を見抜いているのですか。仰せの通り、私の姓は秦です。それがどういう意味なのかも、お判りなのですね。』
『もちろん分かっている。貴方には、ユダヤの血が流れている。そして、皇室とも血縁がある。故に、皇室を守ろうとしていたのだと思っている。』
畠山、即ち秦は、唖然としている。
『いいことを教えてあげよう。俺にも、ユダヤの血が流れている。さらに、面白いことに、あのキリストとDNA配列が100%一致しているのだ。なっ、面白いだろう。』
唖然としていた秦が、我に返った。
『どうも話がおかしいと思ったが、墓穴を掘りましたね。キリストのDNAと同じとは、笑ってしまう。2000年前のDNAをどうやって採取したというのか。もう少し、まともな嘘をつきたまえ。』
『そう考えるのが普通だ。しかし、俺は、キリストの血液を得ることが出来たのだ。血液からDNAを採取し、調べた。調べさせた先は、DGSE。フランスの情報機関だよ。』
『嘘を突き通すつもりだな。私は騙されたりはしない。』
『秦さん、聖杯は、ご存知かな?』
『もちろんだ。三種の神器と並ぶ秘宝中の秘宝だ。』
『聖杯は、俺が持っている。聖杯とは、キリストの血液を受け取ったとされる器だ。ならば、血液が器に残っていると考え、DGSEに調べさせたってわけだ。今度は聖杯を持っているということを疑うよな。証拠を見せようではないか。』
俺は、さっき倒した男が持っていた拳銃を床から拾った。そして、銃口をこめかみに当て、引き金を引いた。
『バーン』
大広間に銃声が鳴り響いた。俺は、床に転げ落ちた。頭から血が流れ、頭蓋骨が割れ、脳の一部が飛び散った。
『何てことを。こいつは、ただの狂人だったのか。伐折羅大将も騙されていたのか。』
秦は再び唖然としていた。だが、伐折羅大将は笑って答えた。
『畠山殿、ああ違った。秦殿よ、これから奇跡を目の当たりにするぞ。見てるがいい。』
損傷を負った脳が、見る見るうちに再生している。破壊された頭蓋骨の穴が塞がれた。そして、何事もなかったように、俺はゆっくりと立ち上がった。そして、秦に向かって、再び語り始めた。
『俺は、生れながらの不死身体質で、怪我をしても、直ぐに治ってしまう。だが、病気にもなるし、歳も取る。ところが、聖杯を聖杯とは知らずに、その器で、何度もミルクをガブガブと飲んでしまった。その結果が、見ての通り、不老不死の体を得てしまったのだ。次にあなたが思うことは、どうして聖杯を持っているのか、ということだろう。違うか?』
心を読み取られているのだ。秦は、頷くしかなかった。
『聖杯はキリストから譲り受けたものだ。もちろん、直接ではない。秦さんは、トランプ教団という秘密結社を知っているか?』
『ああ、噂程度でしか聞いたことはないが、四つのマークで役割りが異なると言われていたような気がする。いずれも、世界の秩序を守ることが使命だったと思う。しかし、その教団の存在が明らかななったことはない。なぜなら、その教団を見守る神がいるらしく、その神の案内なく教団にたどり着くことは叶わないらしい。私の知っているのは、これくらいだ。』
『なかなか詳しい。流石です。そこまで分かっているなら、話は簡単だ。トランプ教団のハート軍のキングが悪魔に操られていた。それを何とかして欲しいと頼まれたのだ。秦さんの言う神に。実際には4人の美しい女神であったがな。俺らは4人の精霊と呼んでいた。4人の精霊は、おれを守るために命、つまり魂を与えてくれたのだ。もちろん、その心だけ頂き、魂は返した。精霊の力で、トランプ教団のクラブ軍のアジトに潜入をし、他の軍とも合流したのち、ハート軍のもとに向かった。そして、ハートのキングを悪魔から無事に救い出すことが出来たのだ。』
『それを、一人でおこなったのですか。確か、トランプ教団には、教団を守るジョーカーと呼ばれる最強の戦士がいると言われていますが、その戦士とも戦われたのですか?』
『確かにジョーカーは存在した。だが、教団を守るべく悪魔からハートのキングを救い出してのが、ジョーカーだ。』
『先ほどの話と矛盾しています。あなたが救い出したのではなく、ジョーカーが救いだしたのですか?』
『矛盾はしていない。俺が救い出した。そして、ジョーカーも救い出した。即ち、俺がジョーカーであったのだ。それに関しては、クラブ軍のキングが持っていた古くから伝わる古文書に予言されていた。「トランプ教団乱れる時、3人の神と共に、ジョーカーが現れ、世界を救う」と書かれていた。文章だけではなく、絵も一緒に。ちなみに、3人の神のうちの一人が、ここにいる伐折羅大将だ。』
『その通りでございます。わしも、その現場におりました。嘘やデタラメではない。わしが保証する。』
『そんな俺に、ハート軍のキングが3つの宝を譲ってくれた。1つ目がダヴィンチの絵画、2つ目がキリストの手紙、3つ目が聖杯。どれも後から判明したんだけどね。』
『もう、話が大きすぎて、ついていけない。』
確かに、素直な感想だ。




