解明③
部屋に戻り、彩先生に、MR.Tと佐々木組長の話をした。2人に畠山事務所を調べさせていることを伝えた。
『宮内庁御用達 畠山事務所。私も聞いたことがない組織ね。それで、私にも調べて欲しいわけね。』
『さすが、彩姉ちゃん。お見通しだわ。3方向から調べて貰えば、必ず解明出来るはず。私の命を狙った人物を。』
『私は、私の方法で調べるわ。3方向って、どういうことかしら。』
『彩姉ちゃんは、表から。MR.Tは、実行した立場から。佐々木組長は、裏社会から。そんな感じね。』
『いつもの貴方らしくないわね。いつもなら、なりふり構わず、敵の懐に突っ込んでいくのに、今回はどうしたの?』
言われてみて、ハッとした。確かに俺のいつもの行動パターンと違う。意識的に変えたつもりは全くない。理由は分からない。ただ、今回の相手は只ならぬものだと思えてならない。自ずと慎重になっていたのだと思う。
『私、女子的な感じになったのかしら。』
『私を欺くのは無理よ。貴方、今回は、怖がっているわ。敵の強さ、恐ろしさを、無意識に感じているのね。恐怖を感じることは悪いことではないの。むしろ、自己防衛が働いていると思えば、成長の証とも言えるわ。』
俺は、恐怖を感じているのか。悪魔相手でさえ、恐怖など感じなかったのに。悪魔より怖いものとは、いったい何者なのだ。そう考えると、逆に楽しみだ。
『ちひろ、自分の言葉に責任は持ちなさい。女子的な感じになったと言ってたわね。女の子になれて嬉しかったのね。もう、男に戻りたくないんだ。』
『違う、違う。そんなんじゃないの。』
悪魔より怖いものが、目の前にいたことを忘れていた。
それから、2日後、MR.Tから例のスマホにメールが来た。俺の遺書を捏造して、北村会長に見せたそうだ。俺の亡き後、我が娘の「ちひろ」のことを頼む、、、のようなことを書いたそうだ。遺書を読んだ北村会長は、泪を流し、即刻、ちひろの暗殺命令を取り消したらしい。畠山事務所については謎が多く、まだ解明されていないという。あと一週間ほど待って欲しいと書かれていた。
彩先生の方も、その強大なコネクションを利用して、調査させているそうだが、こちらも結論が出てないらしい。
佐々木組長にも連絡したが、いい返事は返って来なかった。
畠山事務所とは何だ。俺は苛立ちを感じたが、もうしばらく、つまりMR.Tの言う一週間ほど待つことにした。それが大きな誤りであった。
MR.T、そして佐々木組長と連絡が取れなくなった。不幸中の幸い、彩先生は無事であったが、危険があることには違いない。俺の誤りは2点ある。一つは、呑気に一週間も待ってしまったこと。もう一つは、危険だと認識しながら、護衛に分身仏をつけなかったことだ。とにかく、2人を助けださなければならない。恐らくは拉致され、何故、畠山事務所を探っているのかを問いただされているはずだ。急がなばならない。居場所さえ分かれば何とかなる。
俺はMR.Tから貰ったスマホを見つめていた。MR.Tは言っていた。オリジナルの特製のスマホだと。そして、MR.T自身も使用していると。このスマホで、MR.Tの居場所を突き止められないかを考えていた。
『ちひろちゃん、何してるの?』
レイちゃんが近づいてきた。
『お友達が作ったスマホで、同じスマホを友達も持ってるんだけど、無くしちゃったの。だから、このスマホで探せないかなあ〜って考えてたの。』
レイちゃんの顔色が変わった。興味を持ったようだ。
『どれどれ、お姉ちゃんに見せてごらん。』
レイちゃんは、すっかり、お姉さんになっている。指先で、すっすと動かし、設定画面を表示して、何やらいじっている。
『ちひろちゃん、ママに言って、ノートパソコンを借りてきてくれる。』
『はーい、お姉ちゃん。』
かすみは、本を読んで寛いでいた。いつ見ても美しい。いつまでも見つめていたい。
『あらっ、どうしたの?』
『ママ、綺麗。』
『やだあ。何言ってるの〜。こっちおいで。』
根本的なことを忘れていた。俺は、かすみの為に生きていることを。かすみは、優しく俺を抱きしめてくれた。
『お姉ちゃんから、パソコンを持ってくるように頼まれたの。』
『パソコンね。そこの棚の横にあるわよ。重いから気をつけてね。』
『大丈夫よ。ママ、大好き。』
『ありがとう。』
ノートパソコンをレイちゃんに渡すと、レイちゃんは手慣れた手つきで、電源をONにし、キーを叩き始めた。いつの間に、操作を覚えたのだろう。やはり、天才だ。
『ちひろちゃん、パソコンとスマホを、このケーブルで繋いでくれる?むずかしいけど、出来るかなあ?』
完全に俺を妹扱いしている。
『はーい、お姉ちゃん。』
USBケーブルで繋ぐだけのことをさせてくれた。
『よく出来たね。ちひろちゃん、お手伝いできたね。小さいのに偉いね。よしよし。』
なんか、褒められて嬉しい。俺、何で喜んでるんだろう。不思議な感じだ。
カチャカチャ、カチャカチャ、、、
カチャカチャカチャカチャカチャカチャ、、、、。
無心で指先を動かしている。
『やっぱり、私のカンが当たった。二つのスマホは完全にリンクしている。こっちのスマホで、向こうのGPSをONにできるわ。』
何て子だ。ITのことも熟知している。この子に苦手なことはないようだ。
『お姉ちゃん、凄い。』
『やったあ、見つけた。ちひろちゃん、お友達のスマホの場所、分かったよ。画面を見てごらん。』
画面には地図が表示してあり、その中央に赤の印が点滅している。ここがスマホのありかのようだ。場所は、、、奈良だ。市内ではない。山の中である。GPSから、位置情報を得ることが出来た。完璧だ。
『お姉ちゃん、ありがとう。尊敬しちゃった。』
『ちひろちゃん、奈良に行くのね。気をつけてね。』
そうか!レイちゃんは、俺の心を読み取っていたのだ。俺は、レイちゃんのおでこにキスをした。
『行ってきます。』
俺は瞬間移動した。




