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解明②

『全てが解決したなら、全てを教えるよ。かなり面白い話があるから、小説にでもして出版すればいい。儲かるはずだ。』

MR.Tは、笑顔で頷いた。そして、グラスにバーボンを注ぎ、俺に手渡した。こういうところも、気が利いている。

カーン。

グラスを合わせ、一気に飲み干した。

『単刀直入で言う。AGUの諜報部員が俺、つまり「ちひろ」をつけねらっている。俺が以前、イエメンから助け出した三宮の顔を確認したから間違いない。ちひろに暗殺命令が出ているのかを知りたい。さらに、現在の暗殺リストの中に、かすみ、レイ、彩が入っていないかを確認して欲しい。』

MR.Tは顔色一つ変えずに、パソコンを操作し始めた。

『おっしゃる通り、ちひろ様に暗殺命令が出ております。依頼者は、えっ!依頼者は、「宮内庁の長官官房秘書課、御用達畠山事務所』と書かれています。それと、かすみ様、レイ様、彩様におかれましては、リストには、載られておりません。』

『宮内庁御用達、畠山事務所。いかにも怪しいな。ここの詳細を教えてくれ。それと、俺に対する暗殺命令を撤回するように。なぜなら、ちひろを殺すことは不可能。それに、AGUを敵にしたくないのでな。しかし、これ以上つけ狙うなら、AGUとはいえ、俺も黙ってはいない。手を引くか、ちひろ、つまり俺と闘うのかを選んでくれ。』

『ヒロさんと闘いたいと思う人などいませんよ。ただ、ヒロさん死亡説は、どうしましょう。死亡のままということですと、上層部を納得させる方法が思い浮かびません。』

『確かに難しい。そうだな、ちひろは、俺の娘ということにしてもらえるかな。そして、俺よりも強いと断言してくれ。その上で、北村会長に、ちひろの暗殺の中止を助言するのだ。彼には孫の三宮を助け出した恩がある。頭のいい北村会長だ。俺の真意が伝わると思う。もし、首を縦に振らないようなら、ちひろが直接、話をつけるだろう。』

『あとは、私に任せて下さい。なんとかします。あっ、それと連絡方法ですが、これ使って下さい。私が作ったオリジナルのスマホです。私も、同じものを使っています。セキュリティを強化してあり、情報が漏れないようになっています。安全に使用できることを保証します。』

『ありがとう。使わせてもらう。では、またな。』

信用出来ない者の贈り物などお断りだが、MR.Tは信頼できる。もちろん、彼の頭の中も読み取っている。このスマホは安全だ。

俺は、瞬間移動で新宿に飛んだ。


 久しぶりの新宿だ。ちひろの姿で、夕方の歌舞伎町を歩いた。3歳の女の子が一人で歩いている。この場所では異様な光景である。ロリコンらしき男が、ジロジロとこっちを見ている。俺は無視して目的の場所まで歩いた。ロリコンは、俺の後をつけ、少しずつ近づいてくる。俺は、振り向いた。

『お兄ちゃん、私に何かご用なの?』

にっこり笑って、ロリコンの目を見つめた。

『お、お、お嬢ちゃん、一緒に遊ぼうよ。』

ロリコンは鼻息が荒い。

『いいよ。一緒に遊ぼ。楽しいところに行くから、着いてきて。』

俺は、ロリコンに向かって、ウインクした。ロリコンの鼻息は、さらに荒くなっている。楽しいところには、もう直ぐ到着する。きっと、ロリコンの頭の中は、変態妄想の真っ最中だろう。しかし、その妄想は恐怖に変わるだろう。

『着いたよ。』

俺は、雑居ビルの前で、足を止めた。階段を上っていく。扉の前に大きな看板が掲げられている。

「沢田組新宿支部 佐々木組」

俺は、扉を開けた。中から、男どもが、こっちに視線を向けた。ロリコンの顔が青ざめている。

『お兄ちゃん、ここで、一緒に暴れよう。』

ロリコンは、猛烈な速さで逃げていった。

『お嬢ちゃん、何の用かな。怪我する前に帰りな。』

若い男が叫んだ。俺は無視をして、部屋の中に入っていく。

『コラァ!何してる。』

男どもが、俺を囲んだ。

『佐々木のおじちゃん、いる?』

『佐々木のおじちゃんだと?組長に向かって、おじちゃんとは、お前、命惜しくないのか。』

『この部屋、随分と綺麗になったわ。お兄さんたち、私を知らないの?』

『お前など、知るわけないだろう。さあ、こっちは忙しいんだ。さっさと帰れ。』

男が俺の肩を掴もうとした。俺は、フワーッと宙に浮いて、身をかわした。そして、宙に浮いたままの状態で、叫んだ。

『佐々木のおじちゃん〜、ちひろだよ。』

奥の扉から、慌てた様子の組長が現れた。

『おい、みんな下がれ。絶対に手出しをするな。いいな、分かったか。』

『へい。』

組長の狼狽ぶりに、男たちは渋々と引き下がった。

『佐々木のおじちゃん、私を覚えてる?私、3歳になったのよ。』

俺は組長の頭の上で旋回しながら、声をかけた。

『ちひろ様。もちろん覚えております。大きくなりましたね。それに、さらに可愛くなられてます。』

組長の顔は引きつっている。俺の気分を害さないように、びくびくしているのが、よく分かる。

『組長、どうなされたのですか。小娘一人に何を怯えてるのですか。』

『大きな声を出すな。』

組長は、怒鳴った。大きな声を出すなと言っているその声が大きい。

『お前らは全員、新入りの若造だ。この組に入るときに、散々注意しただろう。ちひろという子供には絶対に関わるなと。その理由も説明したはずだ。あの話は嘘ではない。ちひろという赤子一人に、この組は潰されそうになったのだ。生き残ったのは俺と、ゆかりの2人だけだ。』

男たちがざわつき始めた。

『ゆかり!ちょっと来い。』

奥から、ガタガタ震えている女が出てきた。

『お姉ちゃん、遊ぼう。』

おれは、ゆかりに宙から降りて、声をかけた。

『いやあー、怖い。来ないで〜』

女は腰を抜かした。

『お姉ちゃん、大丈夫?私、優しくてくれたお姉ちゃんのこと好きだよ。だから、安心して平気よ。』

俺はゆっくり近づいて、女のおデコにキスをした。そして、再び、宙に浮き、男たちに向けて叫んだ。

『さっきの、佐々木のおじちゃんの話は本当よ。だから、みんな大人しくしててね。があああ〜!』

俺は、口から火を吹いてみせた。

『ちひろ様、ちひろ様、お止め下さい。おい、お前ら全員跪いて、大人しくしていろ。さもないと命が失われるぞ。はっきり言おう、この子は神だ。だが、幼い。己をコントロール出来ない。気分を害すれば、その神が鬼になる、魔人になる。』

組長の真剣な言葉に、男たちは跪いた。

 俺は組長の横に座った。

『あのね、私、前よりもずっと強くなったの。そしてね、仲間もいっぱい出来たんだあ。私よりも強い人もいるよ。だから、困った時は呼んでね。』

俺は笑顔だが、組長も女も顔が引きつっている。

『それで、ちひろ様、何か用事があるのかな。』

『そうなんだあ。』

俺は、嬉しそうに、体をジャンプしながら答えた。そんな姿を見ていた女の顔に笑顔が戻った。

『ちひろちゃん、遊びに来たのかしら。』

女は俺を抱っこした。

『お前ら、今日はもう帰っていいぞ。それと、ちひろ様の話は誰にも話さないように。極秘だ。それと、これをみんなで分けろ。』

組長は、そう言って、札束をテーブルに投げた。一人頭、10万円ほどのお金だろう。なかなか、太っ腹な男だ。まあ、1秒でも早く、追い払いたかったのだろう。

『今日来たのは、お願いしたいことがあるからなの。お礼はするわ。』

『お礼などいらない。だが、願いは聞かせてもらおう。どんな願いかな?』

『調べてもらいたいことがあるの。佐々木のおじちゃんの、コネクションを利用して、情報を集めてもらいたいの。』

組長の顔に安堵が浮かんだ。もっと、とんでもない面倒なことを頼まれるのではと考えていたようだ。しかし、組長の予想は当たっていた。

『それで、わしに何を調べてもらいたいのかな?』

『宮内庁御用達 畠山事務所』

『宮内庁?』

『そう、宮内庁。宮内庁が使っている裏組織だと思うの。でも、全然情報がないから、知りたいの。』

『ちひろ様の願いだ。あらゆる手を使って調べてみよう。』

『ありがとう。ただ、かなり危険な相手だと思うので、注意をしてね。それと、はいこれ。』

俺はポケットから封筒を出し、組長に手渡した。組長は、封筒を受け取ると、中を確認した。

『ち、ちひろ様、これは、、、。こんなもの受け取れません。』

『いいの。受け取って。足りない?』

『とんでもない。しかし、どうしてこんな物を持ってるのか。やはり、ちひろ様は、特別なお方なのですね。』

『じゃあ、頼んだわ。また来るね。バイバイ。』

俺は瞬間移動した。

『ゆかり、これを見ろ。小切手だ。3歳の女の子が、こんな物を持ってるなんて。ありえん。』

『一、十、百、千、、、って、1億円。』

ゆかりは腰を抜かした。

『不思議なお子だ。そして、恐ろしいお子だ。ゆかり、その小切手、神棚にしまっておけ。これは神の物だ。』

佐々木組長は、目を閉じた。

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