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ルーツ③

 DNAとは、生物の設計書のようなものだ。そして、そのDNAが親から子へと伝えられていく。父親の半分と母親の半分から、新たな子供のDNAが構成される。

 俺は聖杯の血液の鑑定とともに、6人のDNAを鑑定させた。一人目は俺。それから、かすみ、レイ、彩先生の3人。比較対象のため、Mr.T、そして、もう一人重要な人の鑑定を頼んだのだ。結果は、ほぼ俺の推測通りであった。ところが、俺の推測を上回る結果も書かれていた。驚きを隠せない。


鑑定結果①

BとCは近親者の可能性が高い。親子の確率は95%。

当然だ。Bとは、かすみ。Cはレイである。


鑑定結果②

Dは、B及びCと 遠い親類関係。その確率は80%。ただし、親子、兄弟などではない。少なくとも4親等以上は離れている。

Dとは、彩先生のことである。かすみと、レイちゃんと親類だったとは、驚きである。


鑑定結果③

Eは、器の血液、及びA〜D、Fとは、関係性は見つからない。

これも当然。EはMr.Tである。


鑑定結果④

Fは、器の血液及びAと遠い親類関係に当たる。その確率は95%。しかし、親子、兄弟などではない。少なくとも4親等以上は離れている。

 俺の推測は一部当たっていた。Fとは、何を隠そう天皇陛下のDNAである。吹上御所に侵入し、眠っている陛下より、DNAを拝借したのだ。噂されていた日ユ同祖論説は本当であった。イエスキリストの祖先と天皇家の祖先は同じなのだ。なぜ、確率が高いのか。それは、天皇は代々男系で受け継がれているからに他ならない。性染色体に、ユダヤ人と天皇家に共通の因子が含まれている。それは、Y染色体のYAP因子と呼ばれるものである。男系が故に、Y染色体が変わることなく今日に至ったのだ。実はここまでは、日ユ同祖論で既に歌われているものである。俺の推測というより、書籍の推測が当たっていたということだ。ただ、全く予想外だったことがある。鑑定結果のAとは、俺のことである。この鑑定によると俺はキリストの血と天皇家の血を受け継いでいるということになる。

鑑定書を読んでいくと、さらに衝撃的なことが書かれていた。


鑑定結果⑤

器の血液とAは、DNAが一致。同一人物である。その確率は100%。

 これが意味するものは何か。キリストと俺のDNAが同じであるとは、どういうことだ。同一人物でないことは、俺自身が分かっている。

 DNAとは、4種類のアミノ酸の組み合わせで出来ている。すなわち、『A、D、C、T』の組み合わせである。計算上、約4兆7000億分の1で、一致する可能性はある。つまり、一致する可能性は、ほとんどゼロなのである。俺がキリストと同じDNA配列を持っているというのは、そのゼロに限りなく近い確率の偶然なのか。あるいは、キリストの生まれ変わりなのか。バチカンが俺を特別視しているのは、この事実があるからかもしれない。キリストは、手紙で俺の出現を予言していた。言い換えれば、同じDNAを持つ人間の出現を待っていたのかもしれない。だが、少なくとも、俺にキリストの資質などない。なぜなら、つい最近まで暗殺者として、何千人と殺めてきた。人を安らぎへと導く資格などゼロである。俺には強い仲間がいる。伐折羅大将、阿修羅大王、千手観音。いずれも、仏教にまつわる神々だ。キリスト教とは、相反する宗教である。いったい俺の正体は、何なのだ。

 ただ、はっきりしたのは、俺も、かすみも、レイちゃんも、彩先生もユダヤと同じ血が流れているということだ。だからこそ、生まれてくるだろう、レイちゃんの子供がキリストの予言にある「救世主」になるのだろう。


 難しい顔をして考えていたら、レイちゃんがやってきた。

『ちひろちゃん、何考えてるの?当ててあげようか。』

『あっ、レイ姉ちゃん。ちょっとね、考え事をしてたんだあ。』

レイちゃんは、ニコニコしながら、衝撃的なことを話し始めた。

『レイね、ちひろちゃんと彩姉ちゃんを見ていて、真似したら出来たんだあ。』

『真似って。まさか、また何か技を取得したの?』

『そうだよ。えへへ。』

『危ないことは真似してはダメだよ。』

『大丈夫。ちひろちゃんが救ってくれた命、無駄にはしないから。』

『それなら良かった。って、何を出来るようになったの?』

『心を読む事が出来るようになったんだあ。だから、今、ちひろちゃんが考えていた事、分かるよ。』

『えっ!凄く難しい技だよ。それと、知らなくていいことも、知ってしまって、傷つくこともあるから、気をつけて。で、本当なの?』

『うん、本当よ。ちひろちゃん、自分の正体を知りたいんでしょ。』

驚きだ。また一つ、特殊能力を身につけている。しかも、教わったのではなく、自然と身につけてのだ。これからは、常に頭の中をコントロールしておかないと、レイちゃんの心が不安定になりかねない。

『凄いね。そう、ほら、ちひろって、ちょっと他の人と違うでしょ。だから、それには何か深い理由があるのかなあと思って、色々と調べてるところなんだあ。』

『あのね、レイ、ちひろちゃんの正体、知ってるよ。ママと彩姉ちゃんの頭の中を読んだら、分かっちゃった。』

何ということだ。俺が知りたい答えをレイちゃんが知っているというのか。レイちゃんは、嘘をつかない。これまでも、何度となく驚かされたが、俺よりも潜在能力が高いと言わざるを得ない。

『ママも、彩姉ちゃんも、ちひろちゃんの正体を知ってるよ。レイも知ってしまったから、知らないのは、ちひろちゃんだけだよ。』

かすみも、彩先生も知っていたというのか。それを黙っていたのは、彩先生の指示に違いない。知らせない方が良いと判断したからであろう。迂闊であった。彩先生が俺を引き取って育てたのには理由があったのだ。俺の未来を見据えて、厳しく育てたのだ。ならば、やはり、それに答えなくてはならない。自力で答えを見つけなくては。

『ちひろちゃん、教えてあげるね。』

『ストップ!これは、自分の力で答えを出さないといけないと思うんだ。だから、教えなくて大丈夫だよ。』

『やっぱりね。彩姉ちゃんが言ってた通りだ。ちひろちゃんは、いずれ自分で見つけるって。そしたら、ヒントをあげるね。外国ではなくて、日本の中にヒントがあるよ。』

なんと、レイちゃんのヒントは、伐折羅大将のヒントと同じだ。俺の考えている方向は合っているという事だ。よし、機は熟した。探してみるか、我が正体を。俺のルーツを。

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