ルーツ①
頭にふと浮かんだこと。それは、俺たち4人は日本人だということ。なのに、かすみも、レイちゃんも、彩先生もキリスト教に関わる神であると聞かされている。かすみはヴィーナス、レイちゃんはマリア、彩先生はエロース。さらに、俺に至っては、キリスト教を守護するトランプ教団のジョーカーであり、初代法王ペテロの血を引き継いでいるとか言われちゃっている。キリスト教の本山であるバチカンで生まれたとも言われた。キリストの手紙に予言として書かれてもいたし、ダヴィンチの絵画にも登場している。おまけに、聖杯まで受け取ってしまっている。なぜ、日本人の俺たちが、こんなにもキリスト教に関わるのだ。一つ試してみたいことがある。久しぶりにMr.Tに仕事を依頼しよう。
俺、つまりヒロは、病死したことになっている。戸籍も抹消されている。俺が生きているということは、僅かな人にしか知らせていない。残念ながらMr.Tにも知らせてはいない。したがって、直接、依頼する事は出来ない。彩先生に頼むしか方法はない。しかし、この件は、彩先生にも秘密で調査したい。うむ。さて、どうするか。一人の顔が浮かんだ。ダニエルだ。DGSEの長官のダニエルだ。奴なら信頼できる。何よりちひろの姿で接触できる。ちひろで、大暴れしているから、逆らう事はない。その上、ロリコンのダニエルは、ちひろに好意を持っている。都合がいい男だ。彼に調査を依頼することにしよう。俺のカンが当たっていれば、全ての謎が解き明かされる。
俺は翌日、分身仏を残し、パリのDGSEの本部の長官室に瞬間移動した。幸いなことに、ダニエル長官が一人で執務中であった。
『ダニエルおじちゃん、こんにちは。私のこと、覚えてる?』
ダニエルはその大きな机の向こうで、顔を上げた。 一瞬、動揺したのが分かったが、平然を装い、笑顔を見せた。
『やあ、ちひろ様ではないですか。
もちろん、覚えてますよ。今日は、お一人ですか。』
このすけべなロリコンめ。一人と言ったら、何をするつもりだ。
『一人じゃないよ。ほら。』
そう言って、分身仏を二体出した。ヒロの姿の分身仏を二体だ。ダニエルは、再び動揺した。
『この二人は、私の護衛よ。あのね、おじちゃんに頼みがあるの。』
俺は、スカートをひらひらさせて歩き、ダニエルの膝に乗った。ダニエルは鼻の下を伸ばしている。
『な、何かな。頼みとは。』
『あのね。えーとね。DNA鑑定をして欲しいの。このグラスの中の底の方に、血液がついてるんだって。それと、こっちの綿棒のと比べて欲しいの。』
『DNA鑑定か。すぐには難しいよ。時間かかるけど、いいかな。』
俺は泣くふりをした。
『えー、せっかく優しいダニエルおじちゃんのところに来たのに。ダニエルおじちゃんだけは、優しかったのに。』
そう言いながら、大粒の涙を流した。ボロボロと大泣きした。そして、体を震わせ、徐々に体を大きくしていく。魔人バブーの姿に変身をゆっくりと始めた。頃合をみて、分身仏に台詞を言わせた。
『ちひろ様、魔人に変身してはいけません。ここで、暴れてはなりませぬ。』
俺の体を見て、分身仏の言葉を聞いて、ダニエルは狼狽している。
『ちひろ様、何とかしましょう。すぐに鑑定をさせましょう。』
なんたる単細胞。この男はしばらく使えそうだ。俺は、ちひろの姿に戻り、再び、ダニエルの膝の上に乗った。
『やっぱり、ダニエルおじちゃんは、味方だね。鑑定は明日までに、やってね。』
俺は、ダニエルのほっぺにキスをした。ダニエルは、嬉しそうな顔をしている。
『おじちゃん、時々、遊びに来てもいい?』
『ああ、いいとも。ちひろ様なら大歓迎です。』
『わーい。おじちゃん、大好き。』
俺は、ソファーの上でジャンプをして喜ぶふりをした。大きく飛んで、スカートが時々めくれる。わざとパンツを見せた。ロリコンダニエルは、嬉しそうにしている。この男、俺の頼みなら何でも聞いてくれる。フランスは、俺の思いのままになる。俺は疲れたふりをして、ダニエルの膝の上で眠った。ダニエルが、イタズラするかと思ったが、紳士的に振る舞い、俺をソファーの上に寝かせ、毛布をかけてくれた。ちょっと見直したぞ、ダニエル。
仮眠をとり、すっきりした。DNA鑑定に出したのは、他でもない、聖杯だ。聖杯といえば、キリストの血を受けた器と言われている。であるなら、器の底にキリストの血液が染み込んでいるのではと思ったのだ。DNA鑑定の際、破損や盗難を防ぐため、分身仏を聖杯の警備に当たらせた。ウイルスサイズの分身仏だ。もしも、検査員が聖杯に何かしらのことをしようとしたなら、すぐに奪い、瞬間移動するように命令してある。俺には甘いダニエルも、一応、泣く子も黙る、フランスの諜報部員の長官、つまりボスである。長官直々の命令なら、最優先で調べるであろうし、器の扱いも慎重になるはずだ。
『ダニエルのおじちゃん、ちひろ、お家に帰るね。また、明日、来るね。バイバイ。』
俺は瞬間移動で、大宮に戻った。取り寄せた本が数冊届いている。俺は、がむしゃらに、その本を読み漁った。ユダヤの三種の神器に関する本だ。どの本にも興味深いことが書かれている。ただし、全て、推測であり、証明されたものではない。推測は、人の頭の中で考えただけに過ぎない。言い換えれば妄想と同じだ。俺は、自分の推測を妄想のままにしたくはない。証明したいのである。




