世界の危機①
この一年間で、色々と成長することが出来た。まあ、体だけは、成長せずに退化して、ベビーの姿になっているが。初めの頃、分身仏を出すたびに疲労が溜まり、エネルギーがみるみる内に消費されるのに驚いた。今では、髪の毛を抜くのと全く変わらない。最近では、世界各地の主要な都市に分身仏を駐在させている。日本国内では、危険と思われる人物や団体を見張らせている。もちろん、わが愛するかすみ、天才レイちゃん、偉大なる師匠彩先生、この女性3人の護衛もさせている。
最近は大きな事件もなく、平和な日々が続いていた。当たり前だが、平凡な日常が、なんとも幸せに思ってしまう。しかし、一つだけ心配なことがある。四月から保育園に通わなければならない。それを思うと憂鬱になる。レイちゃんの為と割り切ってはいるが、それでも、恥ずかしい。同じ年齢の子たちと遊ばなければならないのは、苦痛の何者でもない。同じ年齢というのは、もちろん本当の年齢のことではない。レイちゃんと同じ3歳児ということである。レイちゃんの精神年齢は非常に高い。大人と会話するのと何ら変わらない。いや、普通の大人以上の知識を持っているから、凄く楽しいのだ。
翌日、俺にとって、衝撃的なことが起きた。それは、夕食時の会話から始まった。
『ねえ、ママあ。レイ、バレエを習いたいの。ダメ〜。』
『バレエ?そうねえ、やるなら小さい時から始めた方がいいわよね。3歳だから、適齢かもね。』
かすみはニコニコしていた。彩先生も同意見のようだ。
『私も、バレエを習ってましたのよ。あれは、姿勢がよくなりますし、スタイルも綺麗になるわ。』
俺は嫌な予感がした。そして、そういう予感は大抵当たるのだ。
『レイが、真面目に通うならいいわよ。』
かすみがレイちゃんの頭を撫でながら話した。いあなあ、俺も頭を撫でられたいなあ〜、などと思っていたら、かすみが俺の顔を見てきた。
『あれ、ちひろちゃんどうしたの。ママの顔をじっと見て。』
『ちひろ、羨ましいなあという顔をしてるわ。ちひろもバレエをやりたいみたいね。』
おいおい、違うよ。かすみに頭を撫でてもらっているレイちゃんを羨ましいと思っただけだよ。
『あらっ、ちひろちゃんもバレエを習いたいの?そうね、レイと二人で通った方が、レイも楽しくできるかもね。どうする、レイ?』
『うん。ちひろちゃんと一緒にバレエに行きたい。』
『はい、決定。ちひろ、良かったね。希望が叶って。善は急げ。私がバレエ教室を探してきますわ。』
俺はおしゃぶりをつけられ、何も言うことができなかった。まあ、例え反抗しても、彩先生が決めたことは、決して覆ることはない。保育園に、バレエ教室。俺、どうなってしまうのだろう。世界中の悪を叩き潰し、ついには悪魔と戦ってきた俺がバレエを踊るのか。恥ずかしくて、顔が赤くなってしまった。




