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Day.16 戦いは既に始まっている

蝉の鳴き声に起こされる朝にも、ここのところ随分と慣れてきたように思う。

窓の外でみんみんと喧しく安眠妨害する奴らとの付き合いもあと一月ほどだと思えば、ここんとこ連日の熱帯夜さえもどうにか乗りきれそうだ。

カーテンの向こうから射し込む夏の陽光は、今日も嫌と言うほど暑くなるぞと告げているようで、俺は汗ばんだシャツをパタパタして、僅かばかりの涼しさに目を細めた。


「うぅん…もう朝なのか真也?」


モゾモゾと俺の隣で身動ぎした莉乃姉は、薄いシャツを絶妙に見えないところまではだけて、俺の手を手繰り寄せるように握った。

時計を見ると6時を少し過ぎたくらいだ。


「一応朝だが、休みの日にわざわざ起きるような時間でもないぞ?」

「う~ん、真也はどうするんだ?」


少しだけ迷ったようにそう訊いてきた莉乃姉に視線を向けながら、俺は無防備過ぎる姉のシャツを正しながら答える。


「シャワー浴びて着替えたら買い物に行くさ、明日からの食料と朝飯を買ってこなきゃいけねぇし。」

「ダメだぞインスタントばかりは、そもそもあたしが作るから買うなら普通に食材だ。」

「いや、まぁ今日はそれでもいいが、明日からはそうもいかねぇだろ。俺は料理なんてできないし、買っても無駄にしちまう。」


俺がそう言うと、話しながら漸く直したシャツをまたもはだけさせながら、莉乃姉がずいっと顔を近づけてきた。

少し近づけばキスしてしまいそうな距離で、ムッと目を細めた莉乃姉が身を乗り出すと、逃がさないと言うように体重を預けてくる。


「そうやって真也を一人にしたら、また他の女の子に迫られてキスとかしちゃうんだ。しかもとびっきりの可愛い娘に。」

「ちょっと待て、あれは姫百合がいきなり…。」

「つまり強引だったり不意討ちだったりしたら、まぁキスされるのも仕方ないと?」

「その言い方はズルくないか?」

「ふんだ、どちらにしてももう許可は取ってある。暫くは真也と一緒に暮らすんだってな。」


………許可だと?

目の前で勝利を既に得たような笑みを浮かべる莉乃姉。

もちろん俺はそんなこと知らないし、許可した覚えだってない。

そもそも姫百合との一件以来、徹底抗戦の構えだとかなんとかいって、ほとんど軟禁状態で莉乃姉が泊まり続けてるんだ。

何処に行くにも自由ではあるが、もれなく莉乃姉がベタベタとくっついてくる。

いつの間にか生活道具一式も宅配便で送られて来ていたし、俺が呆れて頭を抱えたのも記憶に新しい。

毎日莉乃姉からの誘惑を必死に躱しつつ、3分の1ほど残された夏休みをどうにかこうにか乗りきって、あぁ漸くこの修行みたいな日々も今日で終わると思っていたのに、誰だ一体そんな嫌がらせのような莉乃姉にとってのボーナスタイムを許可したのは。


「ふふん、まずはあたしの両親だが、結婚資金は心配するな、いつでも挙げられるように二人が小学生だった頃から貯めていると言っていた。」

「………。」


俺が呆れて頭を抱えていると、莉乃姉は続けざまに爆弾を投下してくる。


「次に水無月のご両親だが、結婚式と孫の出産予定には二人で駆けつけるぞガッハッハ!と、龍鉄さんからは許しを得ている。沙耶さんは、空にも可能性があると思っていたんだけどって言われた。あたしとしたことが物凄い強敵がいたことを失念していたな、今後は空さんも要注意だ。」


もはや呆れをゆうに通り越して頭痛がしてきた。

あの筋肉ゴリラめ、好き勝手なこと言いやがってクソッタレ。

つか沙耶さん、何で莉乃姉をその気にさせるような援護射撃を、寧ろ自分の娘の首を絞めてますよ、まぁそもそも前提がおかしかったとも思うが。

俺が力なく項垂れていると、莉乃姉が自信に満ちた笑顔で俺の肩を叩いた。


「安心しろ真也、あたしがちゃんと養って幸せになるから!」

「俺は将来養われてるのか?」

「あぁ!真也はあたしと毎日イチャイチャしてくれれば大丈夫だ!子供は二人くらい欲しいな!あぁでもそういうことは二回とは言わずいくらでも…えへへ、真也があたしの…。」

「待て莉乃姉ストップだ暴走するな。」


だいぶ意識がトリップし始めた莉乃姉の肩を揺すって現実へと引き戻す。

恍惚の表情が元に戻るまで、半ばささやかな反撃も兼ねて前後左右に揺らしまくる。


「あぁ~、真也がいっぱいいる~?ハーレム~?」

「んなわけあるか!」


何か逆効果だったらしい。

揺らすのを止めて目が回っている莉乃姉を横にすると、俺は立ち上がってシャワーを浴びに風呂場へ向かう。

暑い、朝から無駄に汗を掻いた。

浴室に入って少し冷たく設定したお湯を浴びると、長い髪が重く感じる。

そろそろ切りに行かないとな、せめて毛先くらい整えてもらわないとだらしないか。

夏の暑さには心地よい温度をボーッと浴びていると、インターホンの音が微かに聞こえてきた。

こんな朝っぱらから誰だろう、恵恋あたりなら前にも早朝からインターホン連打してたからありえるな。


「はーい、今出まーす。」


莉乃姉がとたとたと玄関に向かう足音が聞こえ、すぐに鍵を開ける音が続く。

つか莉乃姉、ちゃんと着替えたんだろうな、あの格好のままは…。

嫌な予感がして俺は慌てて身体を拭き、簡単な部屋着に着替えて玄関に急ぐ。

洗面所からそっと玄関を覗き込むと、案の定着替えてなんていなかった莉乃姉が、敷居を挟んで誰かと対峙していた。

言わんこっちゃない、来客が無言なのはきっとあんなあられもない姿で莉乃姉が出てきたからだ、まさか男じゃないだろうな?

濡れたままの髪も構わずに莉乃姉に歩みより、入り口に立ち尽くす来客が誰なのかを見た。


「だ、誰ですかこの美人さんは!?莉乃さんだけじゃあきたらずまさかの二人目ですか!?」


…緋結華だった、しかも何か勘違いをしている。

俺は溜め息を吐いて肩をすくめると、知らず真ん中分けになっていた前髪を右目を隠すように分けて、降りていた髪を手で結んだように持ち上げた。


「寝惚けてるのか?俺だ。」

「……真也くんが髪型変えると普通に美女にしか見えないんですよ、私なんかよりよっぽど綺麗なんですもん。」

「気のせいだ、俺は間違いなく男だからな。で?こんな早くから何の用だ?」


俺が問いかけると、緋結華は怒ったように俺を見た。


「そんなことより真也くん、これは一体どういうことなんですか?」

「…いや、何となく解るだろ?」

「解りますけど、駄目ですよこういうのは。私たちは未成年ですし、お二人は付き合ってもいないのに…。」

「よし真也、今すぐ市役所に婚姻届を出しに行こう!」

「色々と過程をすっ飛ばすな。それに出すつもりもないぞ。」

「そこをなんとか!ね、名前を書いて印鑑押すだけでいいから!」

「それしたら一緒だろうが!」

「駄目です!ズルいです!」

「何でそこでズルいって言葉が出てくるんだよ。」

「えぇい邪魔をするな緋結華!あたしの真也は誰にも渡さない!」

「真也くんは誰のものでもありません!」


はぁ、何なんだよ朝からコイツらは。

取っ組み合いになりそうな雰囲気の二人を引き剥がし、とりあえず間に入って仲裁する。


「二人とも落ち着け。何をそんなにムキになってるか知らないが、そんな大声出したら近所迷惑だ、とりあえず中に入ってくれ。」

「そうですね、前の道を歩いているだけで聞こえていましたから。」

「あれ?恵恋ちゃん?」

「どうした冴塚、お前まで朝から真也を奪いに来たのか?」

「なんだ恵恋、急にどうした?」


緋結華の後ろにいつの間にか立っていた恵恋が、部屋の奥から起きてきた夏音を優しく抱き上げて俺を見上げてくる。

その、何故か不機嫌そうな表情で。


「何だとはご挨拶ですね真也さん。姫百合さんと二人っきりで旅行しておいて、夏音を預けたわたしにはお土産の一つも買ってこなかったくせに。」

「ぐっ…。」

「しかも私の留守中を狙って家に来て、お父さんから夏音を引き取ってお礼は無しですか?」

「いやその、狙ってた訳じゃなくたまたま恵の野郎しかいなかっただけで…。」

「あら、だとしてもそれでお仕舞いだなんて、わたしは随分と都合のいい女に思われているみたいですね。」


恐ろしく冷たい無表情でそう言った恵恋は、一歩前に出て間近で俺を見上げた。


「ねぇ真也さん、どうなんです?」

「いや、絶対にそういう風には思っていない。今回は本当に俺が悪かった。」

「じゃあきちんと埋め合わせはして下さいますね?」

「あぁ、もちろん俺にできることなら。」

「…ふふふ、ありがとうございます真也さん。」


冷たい無表情から柔らかな微笑みを浮かべた恵恋に、俺は不覚にも目が離せなかった。

いつもは凛と大人びて見える恵恋が、こうして笑うと年相応の可愛い女の子なんだって意識させられるんだ。

恵ときちんと向き合うようになってから見せ始めたこの笑顔を、俺が曇らせてしまいたくはない。


「どうしました真也さん?わたしの顔に何か付いてますか?」

「あ、いやそうじゃないんだが…。」

「流石にそこまで見つめられると恥ずかしいのですが…。」


うっすらと頬を赤らめながら見上げてくる恵恋。

それがまた俺の胸をドキッとさせて、無性に抱き締めてしまいたくなる。

ホントに変わったな恵恋は、凄くいい意味で。


「やっぱり恵恋は笑ってる方が可愛いな、だからできれば睨んだりしないでくれ。」

『なっ!?』

「え、どうした?」


更に顔を赤くした恵恋が何か言おうと口を動かして、何も言わずに視線を気持ち良さそうに恵恋を見上げる夏音に落とした。


「えっと…まったく、いつもそうしてわたしに優しければ睨んだりしませんよ。」

「え、俺恵恋に冷たく当たってたか!?」

「そうですよ、もっと女の子として扱ってください。」

「いや、俺の中で恵恋はちゃんと女の子だぞ?」

「そうじゃなくて、もっとできればその…こい。」

『ワーッ!ワーッ!』


恵恋が何か言おうとした途端に、それまで恵恋の後ろで黙っていた二人が間に割り込んできた。

夏音が驚いて恵恋の腕の中から飛び出して、奥の部屋へ走っていく。

恵恋も驚いたように目を開いて、しかしすぐにいつもの無表情に戻った。

かくいう飛び出してきた二人も、物凄く気まずそうに何処を見るでもなく固まっている。


「……はぁ、何がしたいんだよ二人とも。」

「あの、その…そう!虫です!」

「は?」

「黒くて大きな危ない虫が二人の間に飛んでて、それを追い払おうとして、そうですよね莉乃さん!」

「そ、そうだな!危なかったんだぞ真也、もう少しで刺されるところだった!」

「いや、そんな虫いたか?」

「いたんですよ真也くん!」

「そうだな、丁度二人からは見えない位置だったんだ!大丈夫だ、もういなくなった!」

「そうなのか、まぁ二人が大丈夫ならいい。つかそろそろ中に入れよ、世間じゃまだ早朝って言われてもおかしくない時間だ。」


俺がそう言うと、二人は決まりが悪そうに奥へと入っていく。

俺も向きを変えて奥へ戻ろうとすると、後ろから服の裾を掴まれた。


「真也さん。」

「ん、どうした恵恋?お前も中に入れよ、ここ何日かでお茶くらいは淹れられるようになったんだぜ。」

「真也さん。」


振り返ると、恵恋が俯いたまま俺の手を握ってきた。

俺は不思議に思って、顔を見ようと姿勢を落とす。


「大丈夫か恵恋?暑さで具合でも悪いのか?」


そう言うと恵恋は片手を離すと、自分の胸に手を当てる。


「…確かに最近、胸の辺りがモヤモヤするようになりました。」

「え、マジかよ。おい、あんま無理するな。」

「そうですね。でもわたしはこれでも臆病で、今の関係だって気に入っているんです。」

「ん?どういう意味だ?」

「でも、わたしも諦めたり我慢したりしたいわけないんです。このモヤモヤがどうして起こるのか解ってるのに、どうにもできずに見ているだけは、凄く辛い。」

「ん?………原因が判ってるなら、どうにかできるんじゃないのか?」

「はい、後はわたしの覚悟だけです。」


まだ俯いたままそう言った恵恋の頭に、俺は手を乗せて優しく撫でる。


「もし俺の力で役に立てるなら言えよ、絶対に協力するからさ。」

「…本当ですか?」

「恵恋に嘘は吐かないよ。」


恵恋の気持ちいいくらいサラサラな黒髪を撫でながら、俺はしっかりと頷いてみせる。

その気配を感じ取ったのか、恵恋は少しだけ顔を上げて俺を見上げた。

うっすらと赤い頬で瞳を潤ませて、少しだけ俺を見つめる。


「なら真也さん、もう少ししゃがんでくれますか?」

「え、しゃがむのか?」

「早くしてください、お二人に聞かれたくないんですから、戻ってこない内に。」

「あぁ、わかった。」


俺は恵恋が小声で話しても聞こえるように、顔が同じ高さになるようにしゃがんだ。

いつもと様子の違う恵恋の整った顔が、吐息がかかりそうな距離になる。


「さっきは邪魔をされましたし、良いですよね?」

「え、何のこと…っ!?」


マシュマロみたいだって最初に表現した奴は、きっと今の俺みたいに、心からそう思ったんだろうなって、一瞬そんな考えが頭を過った。

首の後ろに回された恵恋の腕から感じる温もりが、驚いている俺を逃がさないように強くなる。

薄青色の花が描かれた白地の浴衣は思ってた以上に薄くて、肌の柔らかさとか、ふわりと香る石鹸の匂いとか、恵恋という存在を包み隠さず伝えてきた。

でも何よりも破壊的だったのは、普段は絶対に見せない恥ずかしげな表情を真っ赤に染めた小さな顔が、すぐ目の前でぎゅっと目を閉じている事実だ。

驚きが薄れていくにつれて、鮮明になっていく感触。

男にはない柔らかな温もりが、春風みたいにふわりと触れている。

まるで恵恋の感情が流れ込んでくるように、それは俺の鼓動をどんどん加速させていく。

時間の感覚なんて判らなかった。

その行為がほんの一瞬だったのか、暫くそうしていたのか、でもとても長く感じたその時間は、恵恋がそっと離れていくことで動き始める。

互いに無言で、開け放したままの玄関に座り込む。

声なんて出せるはずもなかった。

どうしてとか、今までの関係とか、色んな思考がぐるぐると空回る。

目の前で俯いて座り込んでいる恵恋の可愛らしく覗く小さな耳がさっきより真っ赤なのは、やっぱりそういうことなのだろうかと。

だからって訊けない、それは流石にできない。

そうこう悩んでいる間に恵恋が立ち上がり、開いたままの玄関を閉じて言った。


「ほら真也さん、いつまで呆けているつもりですか?お茶くらい淹れられるようになったのでしょう、ならさっさと披露してください。」

「あ、あぁわかった。」

「まったく、さぁ立ってください。」


そっぽを向いたまま差し伸べられた手を取って立ち上がると、恵恋は振り返りもせずに奥へと行ってしまった。

その揺れる艶やかな黒髪を見送って、俺は張りつめていた緊張の糸が解けたのを感じた。


「はぁ、こりゃ真剣に考えないとマズいよな。」


莉乃姉だけだと思っていた、こんな俺に友達以上の好意を向けてくる人なんて。

でも姫百合も恵恋も、女の子として大切な唇まで捧げてくれた。

答えがどうなろうと、きちんと向き合って答えないといけない。

姉さん、俺も変わっていくんだな。

この選択で、俺は誰かを傷つけることになる。

それはどうやっても避けられないし、この穏やかで楽しい関係が壊れてしまうかもしれない。

だけどそれでも、俺は選ばなきゃならないんだろう。

それを承知で、彼女たちは俺を選んでくれたんだろうから。

莉乃姉にも約束したからな。

次の卒業式までに、俺は決断しないと。

誰を選ぶのか、それとも誰も選ばないのか。

彼女たちが色々な想いを込めて動かした歯車の行き先を、俺が決めるんだ。

重たいな姉さん、人の想いっていうのは。

これからもきっと、こんな重さをたくさん背負っていくことになるんだろう。

もっと強くなるよ、姉さんに誇れるくらいに。

…でもまぁとりあえずだ、今は朝っぱらから集まった皆の話を訊かないと。

部屋への扉を開けながら、俺は莉乃姉から教わったお茶の淹れ方を必死に思い出していた。






Eko Side


熱くなった頬を冷ます方法があるのなら、頭を下げてでも訊きたい状況だった。

正直に言ってもっと熱くなっている部分はあるのだけれど、それを考えると余計に頬が加熱されるから、今冷ますべきはひとまず頬なのだ。

やってしまった、自分はとんでもないことをしてしまった。

それは遂になのか、それともやはりなのか、表現なんて今はどうだっていい。

いつもの冷静さなど何処かに置いてきてしまったが、とにかくせめて見た目には何事もなかったかのように振る舞わないと。

何しろ目の前には、わたしのライバルである二人がこちらを訝しげに見ているのだから。


「どうした冴塚、そんなところで黙って立って。」


そう問いかけてくる小湊さんが、正直言ってとんでもない格好で真也さんのベッドに座りながらわたしに視線を向けてくる。

その隣、ソファに可愛らしく座る御奈坂さんも、小さく首を傾げながらわたしを見た。


「そうですよ、どうぞこちらに座ってください。」

「いえ、お構い無く。」


無理です、今二人に近づいたら確実に何かを察してしまいます。

顔は相変わらず熱いし、変な緊張感で背中には嫌な汗がうっすらと滲んでいる。

二人とも勘が鋭いタイプでしょうから、落ち着くまでは少し距離を…。


「どうした恵恋こんなとこで、座らないのか?」


最悪に近いタイミングでやって来た真也さんが、わたしの後ろに立って声をかけてきた。

迂闊でした、そりゃそうですよね。

わたしがこちらの部屋に入った時点で玄関には誰もいなくなったんですから、真也さんだってこっちに来るに決まっている。

どうしましょうか。

前に進めば顔が赤いのがバレて何を聞かれるかわかりませんし、真也さんの側にいたら身体の熱が一向に冷めない気がします。

迷って動けずにいると、真也さんがキッチンに入って急須を取り出すのが見えた。

そうです、その手がありました。

お茶を淹れる手解きをしていればお二人から見えづらくなりますし、集中して教えれば意識が逸れて熱も冷めるはずです。

たまにはそういう気の効かせ方もできるじゃないですか真也さん、いえ十中八九偶然でしょうけど。

そうと決まればちゃんといつも通りの自分に戻らないと、怪しまれるのは得策じゃないですね。


「仕方ないですね、わたしがちゃんと淹れられるかどうか見ていてあげますよ。」

「お、それはありがたいな。余計なことをしないように見ていてくれ。」


柔らかな笑みを浮かべた真也さんに、どくんと胸が高鳴った。

………失敗したかもしれませんね、寧ろ熱さが悪化しそうな予感がします。

偉そうに言っておいてすくみ足になりながら、準備をしていく真也さんの手元を覗き込む。

むぅ、前途多難です、教えられそうなことがありません。

料理と言うか、こういうことだけは不器用だと思っていましたけど、食わず嫌いみたいなものでしたか。

自信なさげにしていながらもてきぱきと準備を終えて、人数に適した葉の量も完璧です。

苦手意識があるせいでやろうとしなかっただけで、本格的に教えたら簡単に負けてしまいそうですね。


「どうかな恵恋、ちゃんとできてるか?」


そう言って手を止めて振り向いた真也さんから目を逸らし、わたしは不機嫌に呟く。


「えぇ、そうですね。特に教えることはなさそうです、真也さんのくせに生意気です。」

「なんだそりゃ。まぁ恵恋のオッケーが出たなら自信持てるかな。」


薄く微笑んだ真也さんが作業を再開する。

…ホント、反則的な笑顔ですね。

これじゃ次々とライバルが増えるのも仕方ないです、根本的にお人好しすぎるくらいがありますし、欠点を探す方が難しいんですから。

しいて挙げるなら見た目の近寄りがたさと人付き合いの不器用さでしょうけど、最近はどちらも緩和されつつありますし。

これは夏休みが明けたら大変なことになりそうですね。

クラスの女子どころか、学年を跨いで狙ってくる人が出てきそうです。

今までは悪い噂が先行していたから近寄る女性がいなかっただけで、御奈坂さんの話では既に見た目だけでも注目を集めているらしいですし。

今の真也さんの雰囲気に気づいた女子が見逃すはずがないですね、一週間もすれば放っておいても大変なことになりそうです。


「どうした恵恋、できたぞ。向こうに行こう。」


気がつけば真也さんがお盆に四つの湯飲みと急須を載せて苦笑していた、どうやらわたしが出入り口を塞いでいたらしい。

わたしが道を空けると、真也さんは小さくお礼を言ってお盆を二人が待っている部屋に持っていく。

…なんか、納得がいきません。

わたしはこんなにも真也さんのことで悩んでいるのに、何でそんなに涼しげな表情なんですか?

だってキスですよ?

初めてでしたし、凄く恥ずかしい思いをしましたし、今だって真也さんの唇の柔らかさが…。

……気持ち良かったですねキスって、なんだか解け合うような、一緒になれたような気持ちです。

うぅ、でも折角なんですから思いっきり抱き締めてくれたって良かったのに、せめて背中に腕を回して頭も撫でてくれたりとか。

まさか、わたしのスタイルが悪いのが原因なんでしょうか。

細いばかりでどこもかしこも小さいですし、高校二年生とは思えない体格なのは自覚していましたけど、もしかしなくてもそれが…。

キッチンからそーっと部屋を覗き込む。

そこにはお茶を並べてお礼を言われている真也さんと、女性さえ羨むスタイルの二人。

小湊先輩はモデルに即スカウトされそうなほどスタイル抜群で、見た目なんて女優かって思うくらい凛々しくて美人です。

肌も白くてすべすべしてそうですし、髪も長くて艶々してて、世の中の不平等さを体現したみたいに胸が…。

何よりも現状一番真也さんとの距離が近い人ですし、無敵すぎて途方に暮れてしまいそうです。

今日だって普通に泊まってたみたいです、しかも同じベッドに寝てたんでしょう。

スキンシップも凄くて、真也さんも嫌ってわけじゃなさそうですし、羨ましいです反則です。

それに御奈坂さんだって侮れません。

小湊先輩ほどじゃないにしても、あれは着痩せするタイプです、結構大きいことは以前海で確認しました。

見た目は小湊先輩とは違って可愛らしい美人さんですし、あのふわりとした髪は似合ってて可愛いです。

あの誰にでも気さくに優しく接する性格も、ただでさえ可愛いのにそれを引き立ててしまう。

なんでしょう、二人が無敵すぎて歯が立たない。

わたしには真也さんにアピールできるものなんて何もないのに。

はぁ、折角勇気を出してここまで来たのに、これでは勝ち目なんてないじゃないですか。

夏休み最後の一日くらい、真也さんと一緒に過ごしたかったのに。


「恵恋?」


一人キッチンで落ち込んでいたら、真也さんが心配そうにわたしの顔を見に来てくれました。

間近に見る真也さんはやっぱり綺麗で、胸は音が聞こえてしまいそうなくらい高鳴ってしまう。

だから悔しい。

以前なら、まだ意識する前までは自然と触れることができたその手も、今では躊躇してしまうから。

ただ声をかけるだけのことが、一体いつからこんなにも難しいことになったのでしょう。

辛辣な台詞で虚勢を張っても不安でなかった頃など、もう思い出せないんです。

真也さん、わたしは弱くなってしまいました。

貴方に優しくされて、お父さんとの関係も良くなって、周りには素敵な仲間までいてくれる。

以前は真也さんだけが唯一の救いで、それでも意地を張って冷たくして、一人で生きていくんだと強がっていました。

その頃に比べたら、信じられないほど恵まれているのに。

わたしはやっぱり、真也さんの一番になりたい。

嫌われたくない、負けたくないんですよ。

顔を上げて、しっかりと真也さんを見る。

真耶さん、不躾と笑ってもらっても構いません。

でももしもお願いが届くなら、わたしに勇気を下さい。

貴女の素敵な弟さんに、一歩近づくための勇気を。


「………です。」

「え?」


―――頑張れ。


「大好きです真也さん!だから、わたしと、デートしてください!」


Eko Side End






何を言われたのか理解するのに、結構な間があった。

恥ずかしさで顔を真っ赤にして、瞳を潤ませた恵恋を見つめて、さっきの感触が再来する。

どれ程の勇気を振り絞ってその言葉を叫んだのか。

それは今までの恵恋からは想像もできないような大きな一歩。

莉乃姉や緋結華がいるこの空間で、今まで誰とも交わろうとしなかった恵恋が声に出したんだ。

さっきのキスよりも、或いは勇気がいる行為だっただろう。

その想いが俺に向けられていることを誇りに思うし、傷つけない答えが出せればと思う。

けど俺にはまだ、その告白に対する答えを出すことができない。

莉乃姉や姫百合からの気持ちも、等しく考えて答えを出さないといけないから。

贅沢な悩みだ、俺ごときには不釣り合いな悩みだろう。

だからこそ曖昧にはしたくない、ちゃんと俺自身の答えを探したい。

俺は表情を引き締めて恵恋を見ると、静かに頷いた。


「ありがとう恵恋、凄く嬉しいよ。」

「………じゃあ。」

「だけどごめん、答えは保留させてもらっても構わないか?」

「………。」


不安そうに表情を曇らせた恵恋に、俺は真剣な顔で続ける。


「こんな俺に対して好意を抱いてくれた人がいる、その気持ちにもちゃんと答えたい。だから、来年の3月、それまでに必ず答えを出す。俺の思いを、恵恋に伝える。………ダメだろうか?」


恵恋は溢れそうになった涙を浴衣の袖で拭うと、ぎこちなくも笑顔を浮かべた。


「仕方ないですね、こうなるだろうって思ってました。」

「悪い。」

「…いいですよ、待ちます。ここで答えを急かしたりしたら、わたしはきっとどんな答えでも納得できないでしょうから。」

「ありがとう恵恋。」

「お礼なんかいりません、わたしは真也さんを待つのに慣れてますから。」


そう言っていつもの雰囲気に戻った恵恋は、しかしすぐにもじもじと言いづらそうに俺を見る。


「あの…デートの約束も3月まで保留ですか?」

「あぁ、いやそれは…。」

「ダメだダメだ!あたしが真也を独り占めだ!」


あぁ、やっぱりか。

こういうときに空気を読んだら負けだと思ってんだろうなこの姉は。

まだ恵恋の告白に固まっている緋結華を放置して、莉乃姉がどたばたと走ってきて俺と恵恋の間に立ち塞がる。


「早速お出ましですね小湊先輩。真也さんと大事な話の途中なんです、そこを退いてください。」

「断る!その大事な話に真也が頷いてしまったら、夏休み最後の一日をあたしは寂しく過ごす羽目になるだろう!」

「先輩はもう十分すぎるほど真也さんを独り占めしていたでしょう、みっともなく我が儘を言わないで下さい。」

「ふんっ。大人げなく我が儘を言うみっともなさなんてなぁ、真也をみすみす逃す寂しさに比べたら些細なことなのだ!大事な人に抱き締めてもらうためなら、あたしは何も恥ずかしくないのだ!あーっはっはっは!」


あぁなんか久し振りに聞いたなその高笑い、呆れてものが言えない。

俺が溜め息を吐いて項垂れていると、シャツの裾がちょいちょいと引っ張られた。

振り返ると、緋結華が中腰で俺の影に隠れ、何故か手招きしている。

俺は感情的な莉乃姉とクールに反撃する恵恋の言い争いから目を離し、緋結華と同じように立て膝で視線を合わせた。


「どうした緋結華、何でそんなこそこそしてんだ?」

「いえ、莉乃さんと恵恋さんの間を取って、私とフラトレスでお喋りしませんか?」

「………は?」

「ですからですね、間を取って私と…。」

「いや言わなくていい、別に聞き取れなかったわけじゃない。」


つか実はこいつが一番強かじゃないか、恐るべしだな緋結華。

俺は更に深い溜め息を吐いて、無邪気に笑みを浮かべて名案と顔に張り付けたような緋結華の頭に手を置いた。


「緋結華もさ、何か変わったな。」

「え、そうですか!?」

「あぁ、更に突拍子がなくなった。」

「えぇ!?そんなに突拍子ないですか?」

「この状況下でその提案が出せるんだ、相当なもんだよ。まぁ、緋結華はそのままでいいんだろうけどな。」


そう言って俺が緋結華の軽やかにウェーブがかかった色素の薄い髪を撫でていると、心地良さそうに目を細めていた緋結華が俺の頬に触れた。


「いいえ真也くん、私も変わろうと思ってるんですよ。」

「へぇ、じゃあ緋結華はどんな緋結華を望むんだ?」

「そうですね…。」


そこで一旦目を伏せた緋結華は、俺の空いていた手を両手で包み込むと、そのまま自分の胸の前へ祈るように寄せた。


「姫百合ちゃんも恵恋さんも、真也くんに助けてもらって、大きな勇気を得られました。大切な一歩を踏み出して、今までとは違った未来を選びとることができました。」

「俺は何もできなかったさ、二人が自ら掴み取った未来だよ。」

「いいえ、それは謙遜しすぎですよ真也くん。真也くんがいたから私たちは変わろうと思えて、一歩を踏み出す勇気を貰えるんです。それは紛れもなく真也くんの影響力で、優しく私たちの背中を押してくれるんです。」

「うぅん、良く解らないが。」

「だからですね…あ。」


何かを言いかけた緋結華が、しまったという顔をして慌てて俺の手を離した。

そのままサササっと後ろに下がると、何事もなかったみたいにソファに座る。

あぁ感じてるよ、後頭部にひしひしと二人分。

はぁ、そういや言い争いがいつの間にか聞こえなくなってたなぁ。

微笑みの裏に隠された感情と、絶対零度の視線。

さて、ここはどう振り返るべきか。

なるべく自然な笑顔で?

いいやそれとも、俺も緋結華に倣って無言で立ち上がるべきか。

そうして悩んでいる内に、俺の両肩ががっしりと掴まれた。

なるほど、世の中って常に選択なんだな。

ホントに、えげつないくらい制限時間は短かったってオチだ、迷ってる場合じゃなく逃げるべきだった。


「なぁ真也、今日は誰と一緒にいてくれるんだっけ?」

「なぁ二人とも、ちょっと肩が痛いんだが…。」

「そうですね真也さん、そこははっきりしてもらわないと。じゃないと温厚を絵に描いたようなわたしでも、ちょっと文字にするにも憚られる言葉で真也さんを問い詰めてしまうかもしれません。」


あはは、恵恋が言うと驚くほどリアルだな。

俺の申し出はさらりと流されてるし、こりゃ結構ヤバイかも。

そうだ、緋結華に助けを。

かなりみっともない気がしなくもないが、今はそうも言ってられない。

俺はソファでこちらを窺うように見ていた緋結華に視線を送った。


(おい緋結華、なんか助け船を出してくれ。)

(真也くん?)

(どうにか話を逸らしてくれ。)

(あぁ!そうですね真也くん。)


緋結華はソファから立ち上がってこちらに歩み寄ると、犯罪者のように両肩を拘束されている俺の前にしゃがんだ。


「真也くん、私とお茶してくれるんですよね?」

『はぁ!?』


三人の驚きが見事にハモった。

そりゃそうだろう、これじゃ火に油どころか火に火薬だ、爆発してもおかしくない。


「…終わった。」

「え、何か私間違えました!?真也くんが見つめてくるから、てっきりお前はいいのかって意味かと思って。」

「俺はそこまで自意識過剰じゃないし、どうにか話を逸らしてもらおうと思ったんだよ。」

「………あはは?」


緋結華、もう笑えない状況だよこれは。

お前からはわからないかもしれないが、さっきの発言から肩を掴む力がどんどん強くなってきてるんだ。


「真也、あたしもいい加減にしないと怒るぞ?」


いや莉乃姉、多分だけど俺は今のところ何一つ悪さはしてないと思う、それにもう十分過ぎるほど怒ってるよな?


「ふふふ、真也さんどうしたらいいですか?何だか急に笑いが止まらなくなってしまいました。」


こっちはもっと怖い、正直冷や汗が止まらないぞ恵恋さん。

さて、これ以上悪くはならないだろうってくらいに最悪な状況だが、全く打開策は見つからないな。

生憎と俺の身体は一つしかないし、ここまで悪化した雰囲気のまま全員一緒にってのは難易度が高すぎる。

かといって誰か一人を選ぶのは後味が悪いし、いっそ今日は一人でいるというのも。


「おい姫百合ちゃん、普通に開いてるぞ。」

「ちょっと峰岸先輩、勝手に入っちゃダメですよ!」


その場にいた全員が、聞き覚えのある声が聞こえた玄関の方へ視線を向けた。

何食わぬ顔で入ってきた峰岸こと不法侵入者と、申し訳なさそうにして後ろに続く姫百合。

二人は部屋に入った瞬間に、俺たちの状況を見て無言のうちに固まった。

夏らしい爽やかな出で立ちの峰岸は、床に座る俺と、それを取り囲むように立っている三人の女子を順番に見て、凄い勢いで俺の胸ぐらを掴んできた。


「この裏切り者めー!」

「いきなりなんだ!?」

「桐生!お前はそうやって世の中の可哀想な男子たちの可能性さえ奪うと言うのか!」

「訳わかんねぇよ!」

「ちょっと峰岸先輩!何がしたいんですか!」


可愛らしい女の子の格好をしている姫百合が、慌てて峰岸を止めに入る。


「止めるな姫百合ちゃん、俺は世界中の迷える男子たちの魂の叫びを代弁しているんだ!」

「意味がわかりません!とにかく暴れないでください!」


何事かと固まっていた三人もその騒ぎに我に返ると、四人がかりで峰岸を引き剥がす。

あぁもう、今日は一体何なんだ。

朝っぱらから面倒ごとばかりが転がり込んでくる、夏休みの最後くらい心穏やかに過ごせないのか。

俺は身体を起こすと、取り押さえられてる峰岸を呆れた目で見た。


「で、何の用でここに来た?何でいきなり掴みかかってきやがった?」

「単純に暇だった、遊ぼうぜ桐生!」


よくもまぁいけしゃあしゃあと。


「そうだな、その前に何回か殴ってもいいか?」

「桐生、こういう場合一発ってのが相場じゃないのか?」

「残念だったな、今はタイムサービスなんだ。」

「……こんなに嬉しくないタイムサービスって初めてだ。」

「まぁまぁ真也先輩、拳を抑えてください。」


姫百合が大人しくなった峰岸から離れながら苦笑する。

俺はゆらりと持ち上げていた拳を納めると、立ち上がりながら言う。


「チッ、姫百合に一生感謝して生きていけよ峰岸。」

「一回の間違いが重すぎる!?」


泣きそうな顔をして凹む峰岸を姫百合がソファへと連れていき、ゴタゴタはとりあえず誤魔化すことができた。

峰岸よくやった、心の中でだけ感謝しておくぞ。

っと、俺まで忘れるところだった。

俺はうやむやになった話に溜め息を吐いていた恵恋を後ろから引くと、皆から見えないようにキッチンへと隠れる。


「どうしたんですか優柔不断な真也さん。」

「う、そんなに毒を吐くなよ。」

「ふん、知りません。」


そっぽを向いてしまった恵恋に苦笑しながら、俺は顔を恵恋の耳元に近づけて言った。


「今日はこの状況だし難しいけど、今度都合のいい日にでも二人っきりでデートしよう。」

「え………本当ですか?」

「あぁ本当だ、ここでうやむやに誤魔化そうとするような不誠実さは持ち合わせていないつもりだよ。」


恵恋は驚いたように俺を暫く見つめたあと、嬉しそうな微笑みを浮かべて俺に抱きついてきた。


「凄く…嬉しいです。約束ですからね、破ったらわたしと結婚してもらいますからね?」

「峰岸じゃないが、一つの約束が重すぎないか?」

「当然です、女の子との約束はそれくらい大切にしてください。」

「そうだな、心に刻んでおくよ。」

「………破ってくれてもいいですよ?」

「ちゃんと守るさ、約束だろ?」

「むぅ、意地悪ですね真也さん。」


悪戯っぽく笑う恵恋の頭を優しく撫でてやると、俺は放置していた急須を指差した。


「とりあえず、人数分淹れちまうか。」

「そうですね、あと二つ湯飲みを出さないと。」


そう言って笑い合いながら、二人で六人分のお茶を用意するのだった。






現在午前7時を過ぎたところ。

本来ならば夏休みの最後を彩ることもなく、翌日から始まる二学期の準備を早々に終わらせて、莉乃姉にベタベタとくっつかれて終わる予定だった朝。

だってのに、ウチのリビングには相も変わらぬ顔ぶれが、思い思いの位置に座ってお茶を啜っていた。

流石に峰岸まで来たら莉乃姉も恥ずかしくなったらしく、今はウチの衣類ラックから出した私服に着替えてベッドの縁に腰かけている。

緋結華と姫百合は並んでソファに身を寄せ合い、峰岸と恵恋は対角線を繋ぐように離れてクッションに座っていた。

俺は意図的に空けられた莉乃姉の隣に腰を下ろすと、皆の顔を一通り眺めて溜め息を吐く。


「で、改めて訊くけどな峰岸。お前は何の用があってここに来たんだ?」

「桐生が好きすぎてつい会いに…。」

「あぁいい忘れてた、冗談抜きで頼むわ。じゃないと無言で外に放り出して鍵をかけてしまいそうだ。」

「………冗談が通じないなんて桐生じゃない!」

「よし今すぐに出ていけ、なんなら手伝ってやる。」

「オーケー桐生、掴みはもう十分ってことだな、俺も本題に入ろう。」


軽く笑顔がひきつった峰岸が、皆からの冷たい視線に耐えかねて咳払いをする。

そして姿勢を正すと、ポケットから財布を取り出して、中から数枚の紙を取り出した。

それはカラフルな色使いで縁取りされた長方形のもので、地元の遊園地の写真がプリントされている。

峰岸はそれを扇状に広げると、自慢気に俺たちの方へつき出した。


「ここに椿カーニバルスクエアのフリーパスチケットが6枚ある、こいつを使ってしまおうと思って来たわけだ。」


にわかに皆がざわついた。

まぁ、峰岸にしては驚くほど気の利いたサプライズだと思う。

椿カーニバルスクエアは、隣の椿町にある巨大アミューズメントパークだ。

千葉にある有名なテーマパークほどの規模はないものの、一通りのアトラクションは揃っているし、お化け屋敷とか観覧車とかは地元でも有名…らしい。

らしいというのも、俺はまだ家族が健在だった頃に一度行ったきりで、それも随分と昔のことだからあまり覚えていないのだ。

チケットを見てなんとなく雰囲気は思い出せるものの、イメージははっきりと浮かばない。

すると莉乃姉が俺の方を見て、キラキラと瞳を輝かせながら笑った。


「懐かしいな真也、昔桐生家と小湊家で一緒に行ったよな。」

「あぁ、莉乃姉もいたんだっけ?悪い、全然覚えてないんだ。行ったことあるってのは覚えてんだけど。」

「何っ!?なら尚更行かないと!あたしとの大切な思い出が失われてるなどあってはならないからな。」

「いや、莉乃姉との思い出がありすぎて忘れてんじゃないか?」

「えへへ、真也の中にあたしがいっぱいなのか~。」

「そこの二人、デレデレしないでいただけますか?」


冷たい視線、というより思いっきり嫉妬が混ざった視線で恵恋が俺を睨む。

つか俺が悪いのかよ、勝手に一人で蕩けてんのは莉乃姉だぞ。

恵恋はその冷たい視線のまま峰岸に向き直ると、小さく悲鳴を上げた峰岸に言った。


「峰岸さん、たまには良い働きをするじゃないですか。騒がしいばかりで役に立たないチャラ男かと思っていましたが、存外気の利かせ方は知っていたようですね、僅かですが見直しました。」

「人を誉めてくれるのか貶めたいのかどっちなんだよ!?」

「黙りなさい無礼者、さもないと今まで感じたことがないほどの恐怖に沈めますよ?」

「おい桐生、冴塚って地球上で最も理不尽なんじゃないか?」

「お前にだけだろ、おめでとう、特別扱いしてもらえるなんて良かったじゃないか。」

「言葉だけなら嬉しい内容なのに、現実はえらく泣けてくるぜ。」

「まぁまぁ。でも峰岸くん凄いです、そんなにたくさんのチケットを何処で手に入れたんですか?」


苦笑しながらもフォローに入った緋結華に、峰岸は沈んでいた表情を見事な笑顔に変化させて頷いた。


「実は親父の知人の中に椿カーニバルスクエアの関係者がいるらしくて、その人から貰ったものなんだ。で、ウチはもう家族で遊園地って感じじゃないし、せっかくだから貰ったってわけ。」

「へぇ、そういうのって羨ましいです。」

「まぁ、俺のつてじゃないから偉そうには言えないさ。」

「私も小学校の頃に行ったきりなので、久し振りに行ってみたいです。」

「御奈坂って本当に良いやつだよな。」


珍しく優しくされた峰岸が感動していると、姫百合が峰岸の持つチケットをまじまじと見つめる。


「ボクは行ったことないから楽しみだなぁ、実家の方は田舎すぎて何もなかったし。」

「そうかそうか、じゃあ姫百合ちゃんは俺がエスコートしてやろう!」

「あ、えっと……ボクは真也先輩と回りたいな。」


…姫百合、結構えげつないこと言うな。

今までの笑顔が嘘みたいに無表情となった峰岸は、立ち上がって拳を鳴らすと、俺を指差して言った。


「桐生、俺はお前を倒さなければ前に進めないようだ。」

「気持ちは解るが、まぁ落ち着け。」

「戯け!モテモテのお前に俺の気持ちが解るわけがない!」

「…お前、戯けの意味を知ってたのか?」

「………使ってみたかった、何かカッコよくね?」


はぁ、こいつはモテないわ、途方もなく馬鹿すぎる。

あれ、そういえば。

俺は緋結華に戯けの意味を聞き始めた峰岸を放置して、嬉しそうにチケットを眺める姫百合に声をかけた。


「そういや姫百合、結局一人称はボクなのか?実家にいた間は私って言ってただろ?」


姫百合は驚いたように顔を上げると、少し顔を赤らめて照れくさそうに答えた。


「その、まだそうやって自分を呼ぶのに慣れてないのもあるんだけど。えっと…真也先輩と二人っきりの時だけの特別にしようかな、なんて思ってたり。」

「………。」


反応に困った、いや迷惑とかじゃなく恥ずかしくて。

確かに告白もされたし、キスも…したんだが、やっぱそういう状況だけの特別って言われると恥ずかしい。

顔が熱い、何て返すのが正解なんだ?

鈍いだの鈍感だの言われ続けてきた俺だが、最近は流石にどんな意味合いのことを言われてるのか解るようにはなってきた。

素直に嬉しい、それが今の気持ちだ。

彼女の大きな変化に俺は少なからず関わっているし、そんな可愛らしくて健気な後輩の女の子から特別だと言われたんだ、ただそうかと返すのは失礼だろう。

あぁもう、恥ずかしさで上手く頭が回らない。

でもちゃんと言わないと。


「姫百合。」

「な…何かな、真也先輩。」

「えっと…ありがとう。」

「ど…どういたしまして。」


何だろうこの空気。

お互いに気まずくて顔を見れない、熱さも全然引かないし。

すると突然峰岸が正面から俺の肩を掴むと、今にも爆発しそうな笑顔で拳を握った。


「テメェばっかマジで羨ましい特別扱い受けやがって!桐生、やはりお前はここで倒す!並木高校全男子達の代表として!」

「真也ぁ、あたしが隣にいるのに後輩の女の子に甘い言葉を囁くとか、もうそろそろ襲うぞ?唇じゃ終わらせないからな、子供の名前を一緒に考えながら式場の下見に行くぞ?」

「そうです、意識は失わないけど手足の自由が効かなくなる麻酔を用意しておいて下さい。お願いしますねお父さん。え、何に使うかですか?ちょっとこのままじゃまずいので既成事実を作ろうと思いまして。」

「真也先輩、ボクを女の子にしてくれたの嬉しかったよ。だから…ね?」

「事実は間違ってないけどな!このままじゃ俺って最低野郎だよな!?」

「頑張ってね真也くん。」


前後左右から引っ張り回されながら俺は思った。

あぁ、無事に新学期を迎えられたらいいなと。






椿カーニバルスクエアの入場口は混雑していた。

子連れの夫婦や俺たちと同い年くらいのカップル等々、夏休み最終日を満喫しようとする人たちで溢れている。

遊園地側も最後の力を振り絞るように声を上げているもんだから、名前の通りカーニバルが始まりそうなほどの賑わいだ。

その中でも特に集中して混雑しているチケット売り場を横目に通りすぎ、俺たち六人は入場口の係員にチケットを見せる。


「はい、大人六名様ですね。」

「えぇ、お願いします。」

「あ、あのっ!」


俺が全員分のチケットを渡してゲートを抜けようとすると、何故か係の女の子に呼び止められた。


「え、何か?」

「私、18時までここでバイトしてます!」

「ん?…えっと、お疲れ様です、頑張ってくださいね。」

「………はい。どうぞごゆっくり。」


何故だか落ち込んだ様子の女の子に首を傾げつつゲートを抜ける。

すると直後に莉乃姉が右側から腕を組んできた。


「えへへ、真也に一番乗りだ。」

「あのさ莉乃姉。」

「何だ、嫌だったか?」

「そうじゃなくて。今の女の子なんだが、何で俺にバイトが終わる時間を言ったんだ?誰か友達と勘違いしたのか?」

「………あの娘も報われないな、こんな鈍感美人に一目惚れとは。」

「は?」


一目惚れ?

なんだよそのお伽噺、現実にそんなことあるのか?

俺が首を傾げていると、左側の手を姫百合に握られた。


「ボクも先輩と手を繋いで歩きたい。」

「姫百合までどうしたんだ?」

「先輩、戦いは既に始まっているんですよ。」

「戦い?」

「今の受付の女の子が開戦の火蓋を切ってしまいましたから。」

「何だそりゃ。」

「杞憂が現実的な危機感に変わったんです。その兆しがさっきの女の子で、ボクたちにとっての危機は明日から始まります。それは徐々に増えていって、ボクたちには抑えきれなくなる。」

「なぞなぞみたいだな、どういうことだ?」

「すぐに解ると思いますよ。先輩も忙しくなると思うけど、どうか気持ちに素直でいてね。」

「ん?」


悪戯っぽく笑った姫百合は、そのまま手を繋いで前を向いた。

忙しくなるって、そう言われても心当たりは思い浮かばない。

既に今日という日が忙しいと感じているのもあるが、明日から始まる新学期だって、今までと変わることはないだろう。

しいて言うなら終業式での一件があるからな、多少周りからの見る目が変わるかもしれないくらいか。

と言っても俺よりは他の五人の方が目立ってたし、姫百合にいたっては性別が変わってしまっている。

その辺りの好奇の視線から守ってやろうとは思うが、それがそんなに忙しいだろうか。

何にしても思いつく限り、さっきの女の子の行動と結びつく事柄はない。

まぁ姫百合がその内解ると言うのだし、その時まではのんびりさせてもらおうかな。


「ほら真也、広場に着いたぞ。」

「ん?おぉ、こんな感じだったな。」


俺たちはまず最初に通過するメイン広場に着いていた。

ここからそれぞれのアトラクションに向かう出発点で、はぐれた際の待ち合わせ場所としてよく使われる所だ。

中央には大きな噴水がキラキラと水を噴き上げていて、水面には夏休み最後の熱い太陽が輝いていた。

俺は左右の二人に引っ張られる形で案内図の側まで行くと、一通りアトラクションの名前を読み上げていく。


「流れ星コースター、夢色メリーゴーランド、満月観覧車………何か随分と可愛らしいネーミングなんだな。」

「カーニバルだからな、きっと楽しそうな名前を意識したんだろう。」


莉乃姉が昔を懐かしむように案内図を綺麗な指先で辿っていく。


「ほらここ、昔真也が買ったばかりのかき氷を引っくり返して泣きそうになった場所だ。」

「本人も忘れてるような恥ずかしいエピソードをよく覚えてるな。」

「真也と一緒に過ごした時間は全て記憶してるぞ。あたしはあの頃から真也一筋だからな、大切な想い出なんだよ。」


莉乃姉は嬉しそうに目を細めて俺を見上げてきた。

その澄んだ大きな瞳が、俺の中に想い出を探しているみたいにじっと見つめてくる。

恥ずかしくなって思わず視線を逸らすと、莉乃姉はいっそう強く身体を押しつけてきた。

艶のある綺麗な黒髪から俺と同じシャンプーの匂いがして、でも俺なんかよりずっと良い匂いになっていて、知らずに鼓動が早くなる。

落ち着けよ俺、いつものスキンシップじゃないか。

いい加減慣れろよ、これまでずっとこうだったんだから。

でも最近、やっぱりちょっと違うんだよな。

想いが伝わってくるというか、今まで以上にドキドキさせられるというか。

これって、何だ?


「さぁ小湊さん、今度はわたしの番ですよ。」

「ちょっ、何をする冴塚!」


いきなり俺と莉乃姉の間を割るように入ってきた恵恋が、かなり強引に俺の腕を取った。


「いくらなんでもスキンシップが過ぎます、見てるこっちが恥ずかしい。」

「ふんっ、あたしと真也が相思相愛という動かぬ証拠だな、あっはっは!」

「冗談には付き合いきれません。真也さん、まずは何処に行きますか?」

「あぁっと、そうだな…。」

「勝手に話を進めるな!真也はあたしと二人っきりで観覧車に乗って将来を考えるんだ、一日中イチャイチャしながらな!」


いや莉乃姉、流石にそれは嫌だわ、暑さでぶっ倒れそうだ。


「いえ、真也さんはわたしとメリーゴーランドで同じ馬に乗るんです。」


…意外にメルヘンっぽいの好きなのか?


「真也先輩、一緒にジェットコースター乗ろうよ!ボク乗ったことないから、しっかり先輩に掴まっておくね。」


大丈夫だぞ姫百合、安全バーがお前をしっかり逃がさないから。


「真也くん、お化け屋敷、お化け屋敷行きましょう!」


何でそんなに興奮してんだ緋結華。


「桐生、帰っていいかな?」

「あぁうん、チケットありがとう、ここまでご苦労様。」

「おい!女性陣からのお誘いは困ったように笑ってたくせに、何で俺の時だけ真顔でガチなんだよ!」

「いや、帰りたい奴を引き留めるのもな。」

「酷すぎる!お前がそんなに冷たい奴だなんて知らなかった!絶対に訴えてやる!」


涙目で俺を指差した峰岸が何故か自慢げに笑って、どっかの名探偵がやるみたいに指を自分の顎に添えてみせた。


「訴えるって、俺がお前に何か罪になるようなことをしたか?」

「単純なことだよ、それは…名誉毀損罪だ!」


まるで名誉を毀損された様子でもない峰岸が、まるで勝利を確信してるみたいにウインクして俺を見た。

うわぁ、覚えたての言葉を使いたがる子供かよこいつ。

俺が溜め息を吐いていると、俺の服を引っ張って恵恋が冷たい視線を峰岸に送った。


「真也さん行きましょう、そこの生まれてこのかた名誉なんて持ち合わせたことがないような人は放っておいて。」

「…なぁ桐生、俺って実は物凄くメンタル強い気がしてきたぞ。」

「あぁ、そればっかりは認めるよ。普通の人間なら泣きながら出口に走ってる。」

「ふん、このくらいでへこたれる人が弱いんですよ。」


俺と峰岸は視線を交わして、確かにこの瞬間心の中で首を横に振った。

いや、お前の視線の冷たさは尋常じゃないと。

………つうか、そろそろ収拾つけないと先に進めないか。

俺は目の前の大きな案内図に目を通しながら、各アトラクションの位置を記憶した。


「とりあえずさ、時計回りに歩いていこうぜ?今日は結構混んでるみたいだから全部のアトラクションには行けないだろうけど、さっき皆が言ってたとこくらいは回ろう。」

「そうだな、真也の言う通りだ。早く並び始めないとこれじゃ何処にも乗れないぞ。」

「そうですね、なら早速行きますよ真也さん。最初は位置的にメリーゴーランドですから。」

「そうだな、なら行こうか。」

「姫百合ちゃん、一緒に乗ろうよ。」

「はいっ、緋結華さん!」

「真也はあたしと!」

「残念でした小湊さん、ここはわたしに譲ってもらいますからね。代わりに観覧車の際には邪魔しません。」

「むぅ仕方ないな、ここは大人しく引き下がるか。」

「クソ、俺にだけ誰も話しかけてくれねぇ。」

「まったく、行くぞ峰岸。真也の代わりにはならないが、観覧車までは相手をしてやる。」

「姉御ー!」


それぞれが楽しそうに話しながらようやく初めの広場から移動を始める。

俺は苦笑しながら、少し離れて歩いている恵恋に並んだ。

恵恋が不思議そうに俺を見上げて、すぐに前を向いた。


「メリーゴーランド、楽しみです。」

「あぁ、俺も乗るのは久し振りだし気になってるよ。」

「…少女趣味とか思ってますか?」

「まぁ、ちょっとだけ意外に思ったけどな。」

「そうでしょうね、だと思いました。わたしには似合いませんから。」


恵恋は少しだけ目を細めて、側を通りすぎたカップルを見た。

女の子は彼氏にベッタリとくっついて、まさに女の子らしいといった風だ。


「感情表現が苦手なんですよ、これでも少しはマシになった方です。」

「気にするなよ、それでも恵恋は十分魅力的だ。」

「ふん、お世辞は間に合ってます。」


少し唇を尖らせてそっぽを向いてしまった恵恋の横顔は、やはり十分に魅力的だ。

俺は恵恋の前に立ち止まると、訝しげに俺を見た恵恋に手を差し出した。


「では行きましょうかお姫様、向こうに白馬を待たせてありますよ。」

「っ!?」


顔を真っ赤にした恵恋に、俺は微笑みを浮かべた。


「たまにはこういうのも良いだろ?」

「………ちゃんとエスコートしてくださいね、わたしの王子様。」


そっと触れた温もりを離さないように、俺は優しくその手を引いた。

その時見えた恵恋の横顔は、幸せそうな笑顔だったから。

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