⑦ 正義の味方
「……それが、正義のためであるならば」
「正義かあ……難しい事を言うのね?正義なんて、この世に、ヒトの数だけ存在するのよ?」
「じゃあ、キミの思う正義でイイよ。僕の勘が確かだとすれば、キミの正義なら間違いない」
「ソレでイイのね?後悔しない?」
「ああ、キミが本名を、明かしてくれるならね?」
「解ったわ」
清水は固唾を飲んで、彼女の次のセリフを待った。
「私の本当の名は、ジャンヌ・ダルク。肉体的な年齢は18歳。とある事情で不老不死になったから、今はもっと年上なの。ついでに今から貴方に、事情を説明するわ。信じられない話ばかりだと思うけど、イエス様に誓って、ウソは一つも無いのよ」
彼女は、何時の間にかタメ語になっていた。
それから彼女は、自分が、時空調査隊の一員である事。保護者役の村田京子も、その仲間だという事。自身も過去の世界から救い出されて、今が有るという事。敵は、一部の爬虫類族と四次元人である事、あの黒いモヤモヤの正体が、四次元人である事。悪意を持った四次元人の事を、通称"悪魔"と呼んでいる事……などなど、長い説明を、清水に向かって語った。
「……どう?ケンジロー。俄かには信じられない話だったでしょう?」
最後にそう言うと、真っすぐな眼差しで、ジャンヌは清水を見た。
清水としては、もう、その話を信じるか信じないか以前に、突然の情報の洪水に対して、戸惑うばかりだった。が、彼は頭脳明晰な少年である。それに少しだけ、厨二病の傾向も有った……中三だけど。
「……あ、ああ、信じるよ。だから今後は、キミに協力する」
彼はやっとの事で、そのセリフを絞り出したのだった。
その後、ジャンヌは慣れた手つきで、気を失ったままの辻本を、後ろ手に縛り上げた。紐は剣道の防具から拝借した。そして清水に「直ぐにインターホンで、職員室の先生に連絡して。不審者が有った事を伝えて」と指示を出した。
清水は彼女に言われるままに行動し、やがて正気を取り戻した辻本は、訳が分からないまま、駆け付けた先生方によって、格技場から連れ出されて行った。この後は恐らく、警察に連絡されるか、それとも保護者に引き渡されるか、先生方の判断に任せるしかないだろう。
現場には、二人から事情を訊くために、担任で顧問の池内先生が残った。
そこで清水が、代表で説明し、ジャンヌは彼の後ろで、怖くて震えている……という演技をしていた。さっきまでは、あんな鬼神のような強さと、有事の際に、テキパキ動けるところを見せていたのに、大した演技力だ。思わず清水は苦笑した。




