㉔ 来世の契り
ただ現在の二人の間柄が、中学校の教師と生徒。
しかも、歳の差が10年も離れているという状況に、すっかり尻込みしていたのだ。
「アタシが死んだのが、あっちで貴方が亡くなってから10年後だったの。だからこんな事に……貴方はすっかり大人で、一方の私は子ども。こんなんじゃあ、貴方に相手にして貰える訳も無い」
田辺がそう言って肩を落とした。
「それで自暴自棄になって、そんな不良みたいなマネをしていたのね?」
真田がそう言って納得した。
「一旦、物理的な肉体を失い、三次元の世界を卒業した貴方たちは、どちらも四次元の住人になったのに、未練が残るこの世界に、また戻って来た……そうなんでしょ?」
真田が二人に尋ねる。
最早、どちらも否定しなかった。
「池内先生」
「何だ、真田?」
「確か日本の法律では、女性は16歳になれば、結婚出来るはずですよね?」
「ああ、そうだとも。ただし、保護者の承諾が必要だ」
「では、そうなさったら如何ですか?」
「口で言うのは簡単だ。しかし、俺たちの立場は……」
「お黙りなさい!」
ジャンヌ・ダルクが、珍しく大きな声を出して、ピシャリと言った。目の前の二人は、驚きの余り目を白黒させていた。
「この世に、愛より尊いモノが在りましょうか?愛は、全てに優先されるべきモノなのです!二人が時空を超えてまで愛し合っているのなら、何を躊躇う必要があるのですか!」
「お、おう」
真田の豹変ぶりに、驚く池内。
しかしコレは、心の何処で予期していた事態だった。
「何なら、このジャンヌ・ダルクが自ら、後見人として、田辺さんの自宅まで、ついて行って差し上げましょうか?」
「……えっ?今、何て?」
「ああ、申し遅れました。ジャンヌ・ダルク。ソレが私の本名です」
「なるほど。道理で……」
池内の中で、これまでの全ての違和感が腑に落ち、疑問が氷解した。
「自分たちの事は、自分たちで決断し、解決するよ」
最後に池内は、力強くそう言った。
「……そう。それは何よりね?」
ジャンヌは満足そうにそう言って、田辺の方を見た。
田辺も無言で頷いていた。
「最初に言ったように、コレは私の余計なお節介。最終判断は、当事者である、貴方たち自身のモノです。じゃあ、そろそろ私は自分の世界に戻らないと……あとは若いお二人で、好きになさってね」
その言葉を最後に、ジャンヌは格技場から出て行った。
あとに残された池内と田辺が、その後どうなったのかは……神のみぞ知るところなのである。




