⑳ 多勢に無勢
清水は、まるで竹刀を構えるように、おもむろに両手を前に出した。すると、その手の中に、光の剣のようなモノが出現したのだ。
「……やっぱり貴方、物理的な媒介は、必要無いのね?少し羨ましいわ」
背中合わせのジャンヌが、そんな事を呟いた。
そこからは、2対100近くの、大乱戦だった。ジャンヌも清水も中々の実力者だったが、やはり多勢に無勢。二人の顔にも少しずつ、疲れの色が見え始めた。
「流石に、これは……キリが無いね?」
ちょっと弱音を吐く清水。
「ケンジローも天使の端くれなんでしょ?貴方のチカラは、まだまだこんなモノじゃあない筈よ!」
激励するジャンヌ。
するとその混乱の渦中に、もう一人の人物が、何処からともなく出現した。
それは、黒髪ロングヘアーのセーラー服の少女。永遠の17歳。真田雪子だった。
「あらあらジャンヌ、苦戦しているのかしら。少し手伝おうか?」
「ああ、雪子さん。いいところへ……是非お願いします」
「……えっ、誰?」と清水。
「かつて私の命を救い、チカラの扱い方と、闘いの極意を教えてくれた、恩人であり、師匠にあたる方よ」
「そう……なんだ」
言われてみれば、どこかで見たような気もする清水。
そんな遣り取りを、二人でしている間にも、雪子は次々に悪魔を焼却して行く。
「ボヤボヤしていると、全部雪子さんに持って行かれるわよ!」
そう言うジャンヌの剣撃が、勢いを増した。
清水も、負けてはいられなくなった。
やがて、三人でほぼ全ての悪魔たちを滅却した。
後には、おびただしい数の、意識を失った地域の様々な人たちが、格技場の床に転がっていた。
そしてそこに、ラスボス的な一匹だけが残っていたのだ。
それは、どさくさに紛れて、抜け出した黒いモヤモヤたちが合体し、空気中の微粒子を集めて、でっち上げたカラダの中に入ったモノだった。見るからに悪魔じみた見た目のそれは、巨大な赤い鬼のような姿をしていた。
「やれやれ。やっと私の出番ね?」
その時、格技場の北出入り口から、そんな声が聞こえて来た。
その声の主は、今日も黄色いワンピースを着た、村田京子だった。
「三次元の世界で、物理的ボディを持ったものは全て、私のチカラからは、逃れられない。コレを食らいなさい!絶対零度の洗礼よ!」
彼女はそう言うと、その両手の間から、強烈な冷気を撃ち出した。確かに絶対零度の宣言は、伊達では無いようだった。
何の攻撃も繰り出せないまま、その巨大な赤い鬼は、たちまち凍り付き、動けなくなった。
「さ、後はみなさんで、煮るなり焼くなり、好きになさって」
勝ち誇ったように、皆の方に振り返った京子は、そう言ったのである。




