⑲ 波乱の始まり
そんな波乱の有った、練習試合の翌日。
金曜日は、お疲れ休みと言う意味で、簡単なミーティングを済ませた後、剣道部の練習は無しになった。
顧問の池内を始め、皆が帰った後、主将の清水は、格技場の片付け・戸締まりの最終点検のため、少しの間居残っていた。このような時、いつもは一人なのだが、今日は側に、ジャンヌも居た。
「やっと、二人きりになれたわね……」
おもむろに、彼女がそんな事を呟いた。
「……えっ?今、何か言った?」
部室の戸締まりを確認しながら、答える清水。
「まったく……貴方のせいで、大変な事になったわ」
尚も、そんな事を言うジャンヌ。
「えっ、僕のせいで、何か変わった事が?」
シラを切る清水。
「昨日の乱闘騒ぎの直後、あの体育館近辺に居た筈の、悪魔の気配が、全て一気に、消え失せてしまったのよ」
「へえ〜、何故かな?」
「もう誤魔化すのは、おやめなさい」
「……!?」
「貴方……天使なんでしょ?」
「あの国木田という名の生徒に、取り憑いて居た悪魔を、チカラを行使して、一瞬で滅却したわね?」
「な、何を言っているんだい?ジャンヌ……」
「ごめんなさい。私、実は、最初から気づいていたのよ。でも、貴方の存在は、ニンゲンにとって悪いモノでは無いから、そのまま、見て見ぬふりを決め込んでいたの」
「……」
「ただ、あんなチカラの使い方をしてはダメ。近所の悪魔たちが、皆、裸足で逃げ出してしまうわ……」
「……」
「せっかく私たちが、隠密行動で、一匹ずつ退治していたのに、その努力が、危うく水の泡になるところだったのよ?」
「それは……申し訳無い事をしたね」
清水はついに、自白的な発言をした。
「……まあ、いいわ。今回は、結果オーライよ」
「……えっ?」
「貴方も感じるでしょ?この格技場は今、とんでもない数の、悪魔たちの集団に、すっかり取り囲まれているわ」
「……!」
「予定とは少し違うけど、おかげ様で、今から、この近辺に存在していた、全ての悪魔を、一掃出来そうよ?」
ジャンヌがそう言うと同時に、鍵を掛けた筈の、全ての窓や扉が、瞬時に明け放たれた。そして、悪魔に取り憑かれ、正気を失った、数十名の老若男女の人々が、次々になだれ込んで来たのだ!
ジャンヌと清水は、格技場の中央へと移動し、背中合わせに立った。
「さあ、どうぞ。今こそ、貴方が本気を見せる時よ?」
彼女はそう言うと同時に、自らも、竹刀袋に隠していた、オリハルコンの剣を鞘ごと出した。そしてソレを、その場でスラリと抜いて、青眼に構えたのである。




