⑮ 文化発表会
池内の務める中学校には文化祭があった。
なんと公立の中学校にも関わらず、三日間も続ける日程でだ。
正式には"文化発表会"と呼ばれるその行事は、初日は各クラスの出し物の見学、二日目は各部活動の発表会、最終日は合唱コンクールと言う、教師にとっては、地獄のスケジュールだった。
修学旅行から帰ってすぐに、まずクラスの出し物を何にするか話し合う。次に早速準備に入る。その間に、中間テストも、期末テストも、体育祭までもが有るのだ。
実際、池内は休む暇も無い。それどころか、いわゆる午前様になるまで、サービス残業の連続だった。正直に言うと、やめて貰いたかった。それでなくても、教師は、授業をしていない時の方が、遥かに忙しいのだ。
何故、この学校で、こんなに行事が盛んなのか。それは生徒たちの"ガス抜き"のためである。彼等にとって楽しいと思える行事を、企画しやり続けなければ、学級経営、そして学校経営までが、パンクしてしまうのだ。
学習指導だけを手厚くしても、ダメなのである。そもそも公立高校への進学者は、生徒全体の三分の一、私立高校への進学者が三分の一。そして残り三分の一は就職するか、アルバイトするか、家事手伝いという名のヤンキーになるか、なのである。
だからイヤでも、池内は頑張るしか無いのだった。
因みに、幸いな事に、体育祭は無事に乗り切れた。
そもそも池内のクラスには、ヤンキー生徒を含めて、運動神経抜群の者が集まっていた。よって当然のように、学年優勝を勝ち取ったのだ。
他クラスの担任から、恨み節を囁かれたが、クラス分けの学年職員の話し合いで、学習面の配慮を優先した結果なのだ。文句なら、あの時点で言うべきだろう。仕方有るまい。
さて、問題の文化祭クラス発表だが、池内のクラスは、話し合いの結果、お化け屋敷をやる事になった。因みに、競合案には、演劇とか迷路作りなどが出ていた。
運動神経抜群だが、手先が不器用な者が多い、我がクラスとしては、準備や片付けの手間から考えるに、これならまだましだろうと、池内は思った。
体育祭が終わってからは、いよいよ本格的に準備を進めた。近所のスーパーマーケットから、廃棄する段ボールを貰ったり、予算から、絵の具や布切れを買ったりした。
平成元年の当時の頃は、まだ世の中はバブル時代。名護屋市から潤沢に学校予算が降りていたのである。




