⑭ 正体不明
「二人とも、気をつけなきゃダメよ?通称チバラキって言われる程、千葉と茨城の女子高生は、ガラが悪いんだから(諸説有り マンガ"今日から俺は!"参照)」
振り返って、ニッコリ笑顔を見せながら、真田は言った。田辺と住田は、今目の前で起こった出来事について、必死に考えていた。
「アンタ一体、ナニ者なんだ?」
田辺が尋ねる。
「私?私はただの帰国子女よ。つい先日、ちょっとだけ、千葉で暴れて、レディースチームを一つ、壊滅させちゃったんだけど。」
「何……それ?」
「そのチームのボスが悪魔……のようなヤツだったから、つい、やり過ぎちゃって。以来、千葉県内では、私、ちょっとした有名人なのよ?」
「そ、そうなんだ……大したハッタリだな?」
「あら……試してみる?」
そう言いながら、二人を見つめる、碧い瞳の眼光は、もう優等生のソレでは無かった。彼女が小脇に挟んだ傘まで、何だか鞘に収まった剣のように見えて来た。
これまでソレなりに、ケンカの場数を踏んで来た、田辺と住田には、よく解った。コイツは本当にヤバイ奴だと……。
「……なあんてね?冗談に決まってるでしょ。差し出がましいマネをして、悪かったわね。じゃあ、くれぐれもトラブルには、気をつけてね?委員長の私からのお願いよ」
真田は、爽やかな笑顔でそう言いながら、その場から颯爽と去って行った。
その後、田辺と住田が、園内で誰にも絡まれ無かった事は、言うまでもない。
実は、以上のような出来事の一部始終を、遠巻きにして見ていた生徒たちが、居たのだ。その者からの話しを、随分後になってから、池内は聞いたのである。彼はますます、真田に対して抱く、畏れのようなモノに、確信を持つのだった。
東京都内から、名護屋市への帰りの交通手段は、新幹線だった。池内は、車内を見回りながら、再度、自分のクラスの人数の点呼に、余念が無かった。
かつて、途中の駅で勝手に下車して、逃亡した生徒も在ったと聞く。まったく、イマドキの中学生と来たら、油断も隙も無いのだ。
田辺の席の横を通った時、彼女に袖口を掴まれた。
「ねえ、池ちゃん……」
コイツ、またウザ絡みを……彼は一瞬そう思ったが、田辺の顔色を見て、考えを改めた。
「なんだ、どうした?腹でも痛いのか?」
「アイツ、ヤバイよ」
彼女はそう言いながら、目線だけを、斜め前にやった。
そこに居たのは、大きなゴミ袋を持って、車内の生徒から、甲斐甲斐しくゴミを集めている、真田だった。真田は碧い瞳で、チラリとコチラを見た。
ソレを見た池内と田辺は、まるで同じように、ブルブルと震えあがってしまうのであった。




