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不老不死の魔女-Kamelie-  作者: ariya
危険な異端者

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6 事件のあと


 移動中にシェートンは教えてくれた。


「あれは、【吸血鬼】だ」


「【吸血鬼】?」


 どこかで聞いた話だ。

 クラウディオから【銀十字】の話を聞いた時、異端者の種族について教えてくれた。


 人の血を飲み生きる存在。

 歩く災害。


 あまり良い話は聞かなかった。



「奴らは自分が上位種と考え、人間、他の異端者は支配するものと考えている」


 シェートンの語りは、クラウディオから聞いた話そのままだった。



「奴隷を大量購入している。食料か、暇つぶしの玩具か……特に最近は東海人を好んで大量購入している」


 シェートンは吐き捨てるように言った。

 その話は知らなかった。おそらく奴隷時代を思い出さないようにクラウディオは伏せたのだろう。


 馬はゆっくりと歩いてある。

 日が沈み冷え込むが、シェートンが着せてくれた上着が暖かった。

 綿が入った上着は懐かしく、椿は馬に揺られながらうとうととした。


 気づけば瞼が閉じて、シェートンは話すのをやめた。


 ◆◆◆

 

 屋敷に近づくシェートンたちに気づき、ヴィルヘルムが飛び出してきた。


「椿っ!」

 


「眠っています。だが、急いで医者にみせるといいでしょう」

 

 シェートンは椿をヴィルヘルムに手渡した。

 シェートンは首を示し、そこをみてヴィルヘルムは首を傾げた。

 特に異常らしい異常はないが。

 

「傷はなくなっていますが、【吸血鬼】に噛まれました。一応異常がないかチェックはしておいた方がいいでしょう」

 

 その言葉を聞きヴィルヘルムは激しく後悔した。

 例の化け物が逃亡したと知った時、椿の安全を確認していればよかった。


 彼女の身辺を守るため自分の目の届く範囲においていればこんな目には遭わなかっただろうに……。

 

 悔しさを感じヴィルヘルムは椿を抱きしめた。


「早く中で休ませてあげましょう。夜の港町も結構寒いですよ」

 

 そういわれ急いで椿を部屋へと連れて行った。

 シェートンはクラウディオに事情を話し、急いで医者を呼ばせた。

 

 施設から呼び寄せた医者にいろんな場所を診てもらったが、【吸血鬼】になる徴候はないと判断された。

 

 彼女の持つ能力【治癒】のおかげか。

 

 安堵しているとシェートンが部屋で待機しているのを思い出した。

 椿のことは医者に任せ、シェートンに話を聞くことにした。

 

「みたのか? 【吸血鬼】を」

 

「ええ、生意気なくそがきでしたよ」

 

 シェートンは肩を揺らして答えた。

 

「お前は何者だ」

 

「貿易と卸売を少々」

 

「ただの商人が【吸血鬼】と渡り合えるか」


「【銀十字】」

 

 その言葉を聞きヴィルヘルムは反応した。

 

 こんな男の存在は知らなかったが、【銀十字】の単語を知っているということは関係者か。

 

 シェートンはにやりと笑って続けて言った。

 

「……ではなくただの協力者です」

 

 今回の密売の件の情報を収集していたのは彼自身であった。

 

 ――倉庫から異端者の匂いが酷いので、早々に何とかしてほしい。

 

 その通達相手は以前より懇意にしていたフローエ夫人であった。

 

 彼女はこれを受け取りしばらく考え込んだ。

 シェートンが別宅にいるスタッフに伝えるのではなく、フローエ夫人に伝えたというのは本部の人間が派遣された方がよいと判断されたためだ。


 ヴィルヘルムが良いのだが、彼は椿をハンスの餌にしたことで怒り厳しい。


「海が見たいです」


 椿へのお詫びの話でフローエ夫人は試しにヨアヒム海岸の別荘を提案した。

 すると、するするとヴィルヘルムが密売の件に挙手してくれた。



 もちろん、椿の身の安全は大事だ。


 だが、いつもの奴隷売買――ヴィルヘルムとクラウディオがついていいるから大丈夫だ。

 フローエ夫人はそのように判断した。

 

 それがこんなことになるとは。

 

「シェートンだったか。椿を助けてくれてありがとう」


「礼を受けるにはまだ早い」


 シェートンは先程の光景を思い出した。

 

「私がかけつけた頃にはあの子はすでに【吸血鬼】の毒牙にかかっている。【吸血鬼】の仲間入りを果たしている可能性がある」


 それを聞きヴィルヘルムはめまいを覚えた。

 

「早めに迎えに行けば……」

 

 密売者を捕らえた日の夜に様子だけでもみにいけばよかった。

 それだけでも違ったかもしれない。

 

「全くだ」

 

 追い打ちをかけるようにシェートンはヴィルヘルムを責めた。

 彼の言葉は先ほどまでの丁寧さは消えていた。

 これが素の姿なのだろう。

 

「あの娘が異端者だから守る必要がないと考えていたのか」

 

「そうではない」

 

「では、何故ここに置いていた。危険な奴が町を徘徊しているとわかっていた段階で、非戦闘の何も知らない女使用人しかいないこの館で」


 ヴィルヘルムの声は震えた。

 今、何を言っても言い訳にしかならない。


「……ここが安全だと思っていた。手負いの【吸血鬼】が逃亡したと聞いて、捕縛するのを優先的に考えて」

 

「おかげであの子は危険な目に遭った」


 今してみれば言い訳にしか見えない。

 ヴィルヘルムは唇を強く噛んだ。

 


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