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不老不死の魔女-Kamelie-(2026年9月21日完結予定)  作者: ariya
海岸の商人

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7 来訪者


 フローエ夫人の別荘で留守番をしている椿は庭の中で過ごしていた。

 使用人からは気に入った花があれば摘んでも良いと許可を得ていた。

 

「綺麗」


 赤い薔薇の花が咲く庭で椿はうっとりと見とれていた。


 赤いつながりで椿の苗を思い出した。

 先日、ヴィルヘルムと一緒に行った植物園で購入したものだ。

 

 王都の館の庭に植えてみたが、今はどうなっているだろうか。

 ヨーゼフが面倒をみてくれているから心配はないのだが、気になってしまった。

 

「お茶の準備が整いました」

 

 女の使用人に声をかけられた。

 名前はカティという。

 

 椿は彼女に案内されるままガゼボへ向かった。

 ガゼボの下――テーブルには淹れたばかりの紅茶と焼き菓子が並んでいた。

 

「ありがとうございます。あの、何か手伝うことがあれば言ってください」

 

「とんでもありません」


 

 カティは頭を横に振った。

 


「椿さまは奥様の大事なお客さまです。しっかりもてなすようにおおせつかっております」

 

「ですが、今はあなた1人で大変でしょう」


 別荘にいる使用人のほとんどが【狩人】であり、今はヴィルヘルムと一緒に出払っていた。

 今別荘にいるのはこのカティ1人だ。

 

 このように広い屋敷で、掃除・洗濯とすることはいっぱいだろう。


「私のことまで気にせずにお仕事に専念なさってください」


「いいえ、椿様のお世話をするのも私の大事な仕事です」

 

 使用人は椿を椅子に座らせた。


 目の前に並ぶお菓子の匂いに椿は思わずのどを震わせた。


「さぁさぁ、どうぞ。この港町で人気のケーキです」


 カティに誘われるままフォークへ手を伸ばして、ケーキを口へ運ぶ。

 口の中でほろほろととろける甘いクリーム、一緒に添えられた苺の酸味が効いて椿の舌を喜ばせる。

 ごくんと飲み込んだ後に椿は思わず言葉にした。


「美味しい」


 その反応をみてカティはくすくすと笑い、お茶を促した。


 お茶を飲むと身体の中がじぃんとあたたかくなる。

 匂いも故国のものと異なり思っていた味と異なることではじめは驚いた。


 ああ、そういえば。


 ふと先日行った東海の品物を揃えた店を思い出す。

 あそこにもお茶が置かれていたと思う。

 椿の故郷と似たお茶が。


 帰る前に、またお店に行ってみよう。

 持って帰って、ヴィルヘルムと一緒に楽しむのもいいかもしれない。


 かさり。


 薔薇の園から草がこすりあう音がした。

 その音は何かが通りかかり草を踏み、草木に引っかかる音であった。

 

「子犬でも迷いこんだのでしょうか」

 

 カティは首を傾げ、音のした方へと向かった。

 野犬であろうと主人の留守を任された者として侵入者を許すことはできない。

 

 椿は気になり、席を立った。

 使用人の制止の声が聞こえたが、椿は構わず音の方へと迷わず突き進む。

 

 薔薇の木々をいくつか抜けたところで黒いものがそこに落ちていたのを発見した。

 はじめは何かわからなかったが、よくみれば汚れた衣に身を包んでいた十歳程の子供であった。

 

「大変っ! ……大丈夫?」

 

 椿は迷わず子供に駆け寄り抱き寄せた。

 酷く熱い、高熱にうなされているようだ。

 手足をみると打撲痕が多い。

 

 それを見ただけで椿は少年は酷い環境にあったのだと察した。

 

「う、ん」

 

 少年は薄く瞳を開き椿を見つめた。

 少し驚いた表情を浮かべたが、そのまま瞼を閉ざした。

 

 椿は急いで少年を抱え上げ、カティに声をかけた。


「お湯と清潔な布をっ。急いで」


 カティが何か言う前に椿は指示を出し、少年を自分の部屋へと連れ込んだ。

 

 少年の服を全て脱ぐと胴体にも酷い傷跡があり、眉をしかめた。

 

「ひどいわ」

 

 汚れた衣類はもう着れない。

 捨てて、お湯に清潔な布をつけ少年の体を拭った。


 傷口に砂や小さな石が付着していれば何度も布で軽くあてて取り出した。

 

 カティにも手伝ってもらい少年の身はある程度綺麗になった。

 

「ごめんんさい。勝手にいろいろ指示してしまいました」

 

 落ち着いた頃に椿はカティに頭を下げた。

 ここは椿の家でもないし、ヴィルヘルムの館でもない。

 

「よいのです。椿さまがそう望まれるのであればそのようにするのも私の務めですので」

 

 なんということもないとカティは笑ってくれた。

 

「それに、このような小さい子供をみていたら弟を思い出しちゃって」

 

「弟?」

 

「ここよりもっともっと山奥にある田舎村に置いてきたやんちゃ坊主です。最近までは伏せっていましたが、また復活しちゃって……」

 

 彼女は優し気に微笑んだ。

 

「何か食べ物をもってきましょう」

 

 果物であればすぐに準備できる。

 

「ありがとう……カティ、さん」

 

 名前を呼ばれカティはあらと嬉しそうに笑った。

 

「覚えてくださったのですね」


「覚えていたのですが………うまく発音できなくて」

 

「お上手ですよ。また気軽に呼んでください」

 

 そういい彼女は部屋を去った。

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