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不老不死の魔女-Kamelie-  作者: ariya
海岸の商人

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6 逃げた少年


 朝早くに準備を終えた後ヴィルヘルムはクラウディオと10人の【狩人】を伴い館を出立した。

 椿はまだ眠っているようでありあえて起こさずにおこうと考えた。

 

 行く先は港からそう離れた場所ではない。

 積み荷を収拾するための建物が集まる地区の一部であった。

 その中に食肉を捌く建物がありクラウディオはここが密売の商品の保管庫であると告げた。


「いたか……いや見つからない。急げ」


 目当ての建物から二人の男が飛び出し何かを言い合っているのがみえた。

 

「人数の方はどうだ?」

 

 ヴィルヘルムは物陰から覗きこみ、建物内の配置についてクラウディオに聞いた。

 

「出入り口は三か所、そこに見張りが二名、中に十五人。うち五人の調教師がいて、これの体格がかなりいい……少し骨がいりそうだ」

 

「そうか」

 

 ヴィルヘルムは一緒にきていた【狩人】に指示を出し、見張り番を潰した。

 一人は今立ち去った二名を追わせる。

 その間に中に入り、充満する血の匂いに顔をしかめた。

 

「なんだ貴様は」

 

 奥の方からにゅっと大男が現れた。

 確かにクラウディオの言う通り骨がいりそうだ。

 

「今からここは俺たちの管理下に入った。奥にある

ものも没収させてもらおう」


 ヴィルヘルムは用意していた書類を見せる。

 国の正式な捜査という証明だ。


「何ぬかしてやがる。ここはただの食肉の解体場だぞ」


「表向きはな」

 

 男の太い腕がヴィルヘルムの方へ襲い掛かってくるが、ヴィルヘルムはそれをかわした。

 

 瞬時に判断して、ヴィルヘルムは素早く男に近づく。

 男の足に蹴りをくらわせ、体制を崩させた。

 

 ヴィルヘルムの動きの俊敏さに、男は何が起きたか理解できないようであった。

 

 その間、ヴィルヘルムがひきつれた【狩人】たちが他の密売者を捕らえ拘束していった。

 

 確かに建物の中は食肉の解体場であった。

 畜産牛・豚の血と肉の匂いが充満している。これは、ごまかしだとわかった。

 

 建物の奥の部屋へといくとそこにはいくつもの檻がぎっしりと並んでいた。

 

 どれも滅多にみない異端と呼ばれる生き物たちであった。

 一つ目の鳥、尾が何本もある獣、角の生えた人が収容されていた。

 そしてどれもまだ力が発揮できない幼少の者たちであった。

 

 物心つく前に捕らえて、逆らえないように調教した方が丁度よいのだろう。

 

 中には嗄れた声で威嚇する獣もいるが、どの異端者も疲れ果てているようにみえた。

 

 奥の方で人の姿をした少年・少女が怯えた表情でこちらの様子を伺っていた。

 何人かは血だらけの包帯を無造作に巻きつけられている。

 

 一部変な形に折れているものもいてヴィルヘルムはため息をついた。

 どのような扱いを受けているか嫌でも想像できた。


「これだけの数を本部に届けるのには時間がかかるな……早めに報告して、医療班を送ってもらう方がいい」


 保護された異端者は組織の決められた区間で管理される。

 世間に混乱を与えないために必要な措置であった。

 

 ここをきちんと管理できるだけの人員がくるまで面倒をみる必要があった。

 本部の人間であるヴィルヘルムの報告であれば、すぐに人員を補填してくれるだろう。


「ヴィル、さっき外にでていた二人も確保済みだよ」

 

「そうか」

 

 それを聞きヴィルヘルムはようやく緊張を解した。


「あ、の……」


 檻の奥から小さな声がした。


「ぼくらをどうするの?」

 

 その表情には恐怖の色がみえた。

 特徴を見れば見覚えのある種族である。

 技術や知恵を与えてくれる代わりに【銀十字】から庇護を受けていた。


「安心しろ。ある程度調べがつけば元の親元へ戻してやる」


「帰れるの?」

 

「ああ、その前に色々手続きが必要になってくるが……」

 

 それを聞いて、ほっと安堵した。しばらくしてすぐに不安の表情を見せた。

 

「ねぇ、あの子も早く助けてあげて」


「あの子?」

 

 突然ふられた話題にヴィルヘルムは首を傾げた。


「うん、ここから逃げ出した子がいるの。酷い怪我を負っていたんだけど、調教師を噛み殺して逃げ出しちゃった」


「……」

 

 ヴィルヘルムとクラウディオはお互いの顔を見合わせた。

 そういえば、ここを突入する時のことを思い出した。ここの連中は何人かを探しているようだった。

 

 逃げた奴隷を探しにいったのだろう。


 一体、どこに?――


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