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不老不死の魔女-Kamelie-  作者: ariya
ふとした日常

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5 ガラス工房



 シュミット通り――メインストリート、繁華街に比べると人の通りが少ない。


 工房がいくつか並んでおり、画家や、職人が、集まる場所でもあった。


 貴族の出入りは少ない。直接、職人に発注したい為に訪れる貴族は変わり種とさえ言われる。

 

 人の流れは緩やかなものであり、ヴィルヘルムは好んで歩くことがあった。


(油絵の具の匂いがきつい時があるが、人の雑多な足音、香水の混ざり具合に比べたらましだ)


 椿はあちこちに視線を移していた。

 はじめは緊張していたが、今は物珍しい雰囲気への興味が優っている。


「こっちだ」


 ヴィルヘルムが向かうのは、ひとつの工房だった。


 扉を開くと強い熱気に晒される。


 奥の方では、火を扱いながら作業に集中した職人たちがいた。

 珍しい東海人の少女が来たが全く気に留めていない。


「ようこそ、お越しくださいました。ヘル・エーデルシュタイン」


 奥で手伝いをしていた女性が、ヴィルヘルムに挨拶する。

 ヴィルヘルムが軽く頷くのを確認して、彼女は椿に視線を移した。


 一瞬、瞳が揺れているのを見て椿は緊張した。


 物珍しい東海人に興味を惹かれた瞬間がありありと伝わる。


 女性は丁寧に礼をした。



「では、こちらが依頼内容のフロイラインですね」



 余計なことを聞かない女性にヴィルヘルムは満足げに頷いた。


「こちらはとても熱いでしょう。別の部屋へ案内します」


 女性の言う通り別の部屋へと移動した。

 窓が開いており、王都に流れるエルン川に面しており涼しい風が入ってきた。


「ふぅ……」


 椿は思わず息を吐き出した。



「こちらになります」



 女性は大きな木箱を運んできて、テーブルに置く。

 箱にはたくさんの装飾品が並んでいた。


「フロイラインは黒髪、黒い瞳と伺い、明るめの色がよく映えると思いました」


 装飾品は胸に取り付けるブローチで、赤、青、緑と色とりどりのガラス細工で綺麗であった。

 椿は思わず見惚れてしまう。


「この赤は少し目立つような……今日のドレスは青系だし」


 ヴィルヘルムは難色を示した。

 

「このように小さいカットのものであれば、変に色の喧嘩にはならずに、逆にアクセントとして際立ちます」


 女性の説明を聞きながら、ヴィルヘルムは手袋を付け替えてブローチを手に取る。

 小さな赤ガラスの装飾が施されていた。


「……」

 

 ヴィルヘルムはそれを椿の胸元に合わせてみる。


「確かに悪くないな」


 納得した声に、女性は頷いた。


「フロイラインのドレスは青系とはいえ、落ち着いた青灰色……一目みてこの赤も似合うと感じ入りました」


「それなら、これとこれ……あとは、椿の好きなものを」


 ヴィルヘルムは先程のブローチ以外にもいくつか指差ししていき、椿の方へ声をかけた。


「え、いえ……私は大丈夫です。このように美しいものが見れただけで満足で」


「俺の役に立ちたいのだろう。なら、見栄えのするものをいくつか持っておいた方がいい」


 本当なら宝石装飾品を考えていたが、あまり多くを購入しすぎては気後れすると思った。

 ガラス細工であれば宝石程高価ではない。

 それでも職人の細やかな手がかかるため値は張るが、ヴィルヘルムからすれば大したものではない。


「では、今し方ヴィル様が選んだもので……それと」


 椿はちらりと女性の方を見つめた。


「何か欲しいものがあるのか? ネックレスか?」


 言えば、工房で作られた品を持ってきてもらえる。

 ヴィルヘルムの問いに椿は首を横に振った。


「あの、その……」


 椿は困ったように俯いた。


「私と2人で話したいのでしょうか?」


 女性の言葉に椿はこくりと頷いた。あまりに強い頷きようだ。


「殿方の前では恥ずかしいのですよ」


 そう言いながら女性は椿と一緒に別の部屋へと移った。


 ついて行きたいが椿が、首をふるふると振っていたので仕方なく待機とした。

 

 ヴィルヘルムは用意された飲み物に手を出した。


 静かな風が吹き、ヴィルヘルムは窓の外の光景を眺めた。


「お待たせしました」


 しばらくして椿は戻ってきた。

 

 時間はそれほどかからなかった。

 時計をみると30分程だろう。


「何か欲しいものが見つかったか?」


「はい」


 どうやらこっそり購入したいものがあったようだ。


「では、そのお代も含めて……」


「大丈夫です。この前、エヴァ様からいただいた謝礼金がありますので」


 椿は慌てて言った。

 【銀十字】に協力すれば、相応の謝礼が支払われる。今回は椿に情報を隠して巻き込んだ為多めに渡されたようだ。


「そうか」


 ヴィルヘルムは目を細めた。

 彼女が自分で考えて購入した。当たり前すぎる行為であるが、見ていて微笑ましく感じた。


「では、本日の品は明日までにお届けします。フロイラインの品も出来次第お届けしますね」

 

 女性も同じなのか、先程から楽しそうにしていた。

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