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リアが阿保三人に連れられた時は体の半分が凍っていたライラだが今のライラの体には凍った後はなくわずかに制服が濡れているだけだった。
「……そういえばこの火……」
「あ、えっと……実は……」
リアは自分から話そうとしていたがライラはそれよりも先にガルドが出現させた火の玉について聞いてきた。そのためリアはライラに一体何が起きたのかを説明した。
「……そうですか……」
「すみません、私もその時何を考えてたのか寝てしまっていて……」
「気にしないでください、体調はマシになりましたから」
リアから何が起きていたのかを聞いたライラは内心で怒りを覚えながらも務めて落ち着いた声色で、リアに声を掛けた。
「……すみません、本当に……」
しかし抑えたつもりでも声色からは怒りがにじみ出ていて、リアはそれに気づいていた。
「貴方は悪くないのでしょう? なら謝らないでください。それとも、わざとやっているのですか?」
「い、いえ、そんなわけでは……」
「だったら謝らないでください。虫唾が走る」
「す……いえ、分かり、ました……」
リアは反射的に謝りそうになったが何とか踏みとどまった。ライラはそんなリアを一瞥したが何も言わずに席を立った。
「あの、どこへ……安静にしておいた方が……」
「毛布と、食べ物を持ってくるだけです」
ライラはリアを突き放し、一人で更衣室へと向かいロッカーから毛布ともう一つの携帯食料を持ち出してリアのいる場所に戻ってくる。
「あ……おかえりなさい」
一歩もその場から動かずにリアはライラの事を待っていたが待たれていたライラはリアを無視してガルドが出現させた火の玉を水属性魔法を使う事で破壊して毛布にくるまってビーチチェアに寝転んだ。
「あの……昨日の夜みたいに、私が傍に居ましょう、か……? 体を寄せ合う方が、暖かいとは思います……」
「私は必要ありません。貴方が寒いのなら、こっちまで来てもらっても構いません」
少なくとも今は暖かさを求めていないライラだが、リアが寒さで震えない様に気を使うことは忘れなかった。
「私は……大丈夫、です……」
リアは差し込む太陽光をその身に浴びながら答えた。リアが水中にいた時間は行き帰りを合わせて約一時間ほどだった。それからリアが着替えてライラの元へと向かうまでに一時間ほどの時間がたった。リアが阿保三人に起こされた時間は、大体だが午前の九時だった。加えてアイヴァンの移動速度や現在位置を鑑みると私が予想したアイヴァンがトーメル湖に到着す時間に大きな差は生まれないだろう。つまり、あと二時間も経てばアイヴァンがトーメル湖に到着する。
トーメル湖にはアイヴァンが接近してきたことが分かるように結界を張っているのだが結界のサイズ的にアイヴァンがその結界に引っかかるのは、トーメル湖到着の三十分ほど前になるだろう。
そのためアイヴァンがトーメル湖に接近してきていることが分かるのはあと一時間三十分後だ。
「……昨日と比べて、観光客が全然いない……」
ライラが安静にしている様子を近くで見ていたリアはふと気づいた。きっかけは、昨日のようにナンパされたらどう対処するべきかを考えていたことだった。
昨日はライラが撃退していたが体調の悪いライラに対応させるのではなくて自分の力で何とかしなければ、と思っていたところで全然声が掛からないことに気が付き、周囲を改めて見渡してみれば観光客が全然いないことにリアは気が付いたのだ。いないわけではないが、片手で数えることが出来る程度の数しか残っていない。
「……ごほ……統計的に、今日明日明後日の三日間にアイヴァンがトーメル湖に渡ってくる可能性が一番高いからでしょう」
せき込みながらもライラは観光客が居ない理由をリアに話す。私も念のために調べてみたが確かに今日からの三日間の間にアイヴァンがトーメル湖に渡ってくることが多かった。この三日間以外にもアイヴァンが渡ってくることはあるがこれは例外として処理できる程度の回数だった。
そのため今日から二週間、最高でも二週間と二日はあまり人が寄り付かないのだ。
実際に昨日はにぎわっていた露店などはすべて畳んであり人っ子一人確認できない。
「……教えてくださって、ありがとうございます……でも、しゃべるのがつらいなら私の言葉は無視してもらっても、大丈夫ですから……」
謝る代わりにお礼の言葉を口にしたリアは、ライラの体調とのどを心配した。
「貴方が気に掛けるような、ごほ……ことではありません」
どうやら体調が良かったのは寝起きの僅かな間だけだったようでライラの体調はどんどん悪くなっていく。せき込むだけではなく喉も痛くなってきたし、頭痛や眩暈がライラの体を襲う。
「ソルテット様……眠ったほうが、良いと思います……」
体調を改善するためには睡眠をとったほうが良いため、リアはライラに眠ることを進めるがライラは体調不良が原因で眠りにつくことが出来そうになかった。
「……失礼します」
明らかに苦しそうなライラを見たリアは意を決してライラの寝転ぶビーチチェアに寝転んだ。
「……な、に……を……」
そして、リアはライラの事を抱きしめた。少なくともリアは昨日と今日の経験から身を寄せ合い他人の体温を感じることで眠気を誘うことが出来ると確信していたためそこにためらいはなく必要だからしている、そんな雰囲気だった。
「う……こん、な……単、純……」
最初の内はライラも眠気に抵抗しようとしていたが、最終的に抗うことは叶わず夢の世界へと旅立っていってしまった。
「……ゆっくり、休んでください……」
発熱が確認されるライラの体を抱きしめながら、リアは静かに呟く。
「……ここに来るまでは私達と一緒だったから、警戒していてよく寝れなかったんですよね……私が、隣で少し動いただけで目を覚ます程に気を張っていては休まりませんよね……」
今日の朝の事を思い出して、リアは顔色の悪いライラを見つめる。
「……すぐに、よくなりますよ」
リアは何の確証もなく、おまじないに近い感覚で願いを口にしながらライラの髪を梳いた。
「……綺麗だな……」
髪を梳くその手が髪の毛に絡まることもなく、雲をつかんでいるような感じがしている。リアは自分の髪の毛を自分の手で空いてみるが、途中で引っかかり手が止まってしまう。原因は水中に潜ったからではあるのだが、リアはそれを自分の管理不足だと判断した。
「私も、貴方みたいに……」
リアは満足したのかライラの髪の毛から手を放し、ライラの傍にいることに専念した。阿保三人が返ってきた時にどういった対処をするべきなのかを考えながら。




