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「くそっ、またか!」

 とっさに攻撃を避けたガルドは悪態をつきながら魔物の群れと距離をとる。

「エメル!」

 しかし攻撃を避けることが出来なかったエメルは魔物の攻撃を背中から思い切り受けてしまい、声もなく倒れ込んでしまっていた。

 魔物の奇襲により負傷し、このままなんの行動も起こさなければエメルが確実に死んでしまという状況下でバトルトは何を血迷ったのか私に対して大きく振りかぶった剣を振り下ろしてきた。

 とっさに氷魔法を使いバトルトの攻撃を止めることに成功した私だが氷魔法は氷魔法であり防御魔法ではない。

 とっさに作り出したこともあって小さな塊に過ぎない氷の礫はすでに半分近く斬られているしバトルトの力が強く攻撃を受け続けることもいつかはできなくなってしまいバトルトの攻撃はそう遠くないうちに私の体を切り裂くだろう。

 その時、リアが私の腰辺りに突進する勢いで抱き着いてきた。

 何事かと思ったがリアは私が腰につけているホルスターに入っている水入りの試験管を抜いて蓋を開け、中に入っている水をバトルトに向かってぶちまけた。

 大半の水がバトルトには掛からなかったが需要なのは私がリアのぶちまけた水を使って素早く氷魔法を発動させることが出来るという点だ。

 バトルトの攻撃を受け止めている氷の礫を維持しつつ魔法陣を使わず感覚的に魔力放出を行い魔力現象を起こし、それを魔法として空中を舞う水に対して氷魔法を使用する。

 この氷魔法は私とバトルトの間を仕切るようにして氷の壁を形成しひとまず目先の脅威を避けることに成功する。リアを庇いつつ氷の壁から離れるのと同時に氷の壁はバトルトの土属性魔法によって破壊されてしまった。

「バトルト! 手伝ってくれ!」

 追撃に警戒していた私の元に届いたのはガルドの助けを求める声だ。私達とバトルトの攻防は始まって間もないが状況は刻一刻と変化していっているようだ。

 ガルドはエメルを助けようと魔物の群れに切り込んだが先ほどと同じように一対多の状況に対応できない。

 そのためガルドはエメルを助けるどころか大量の魔物に押され始めていたし倒れているエメルは魔物に追撃を食らわせられていた。

「くそっ今行く!」

 悪態をつきながらもバトルトはエメルとガルドの手助けに向かったのだが、本来なら私に攻撃する前にガルドのもとに向かっているべきだ。

 いつでもいいはずの私の処刑を優先するということは仲間の命よりも私情を優先したということだ……わかってはいたことだが、こいつらは本当に救いようが無い。ここで殺してしまった方がリアの為になるのではないかと思ってしまう。

 こいつらはリアに対しては紳士的だと言えなくはないがリア以外の自分よりも立場が低い人物に対してはかなり攻撃的だ。ゲームの中ではリアの知らないところで平民を何十人と殺していたぐらいだ。

「ソルテット様、お怪我はありませんか?」

「ありません」

 リアの心配の言葉に短くそして突き放すように言う私だが、これにはちゃんとしたわけがある。どこからか、ピシりと壁が割れ魔物が生れ落ちるときの音がしているのだから。私はホルスターに入っている水の数を確かめそれをすべてリアに持たせる。

「持っていてください」

「は、はい」

 リアに手渡すことが出来た水入り試験管の数は四つ。心もとないというのが正直な感想だ。

 出現する魔物の数が先ほどより多ければ私一人では対処できなくなる可能性が高い。

 だが今回出現する魔物は先ほどよりも数が多くなっていることは間違いないだろう。

 リア護衛用小型分身はすでに魔物が生まれる場所と数を把握しているが、ライラ・ソルテットは出現前の魔物を検知する方法を知らないので、容易に行動を起こすことが出来ない。

 壁が割れるような音は段々と大きくなっていきライラ・ソルテットが音の発生場所、つまりは魔物の出現場所を発見できたのはもうすでに魔物が生れ落ちてきてからだった。ライラ・ソルテットの視界をかすめるように何かが落ちてくる。

「ま、まさか…………」

 私の近くにいたリアも何かが落ちてきた光景を見ていたようだ。リアはゆっくりと、天井を見上げる。

 天井にはいくつかの亀裂が走っていてその亀裂から魔物の姿が見え始めていた。そして、天井にある亀裂の数はなんと二百三十個。

 つまり、魔物が二百三十体、すでに落ちてきた一体も加えると合計で三百三十一体の魔物が私たちに襲い掛かってくるということだ。私たちは魔物の出現範囲の大体真ん中あたりにいるため適度に足止めをして一方的な攻撃を行うことが出来ない。

「シュメラさん、こちらに」

 私はリアの手を取って言う。リアが頷くのを見て私はリアの手を引きながら阿保三人のもとに向かった。阿保三人が戦っている場所は魔物の出現範囲内から出ているからだ。

「そ、ソルテット様! 魔物が降ってきています!」

 私たちが移動している間にも魔物は天井から生れ落ち床めがけて落ちてきている。リアには水入りの試験管を持たせているがそれ自体に攻撃力はなくリアの持っている水があれば私が援護しやすくなるというだけだ。

 そのためリアから意識を離さず近づいてくる魔物を氷魔法で攻撃しつつ移動しなければならない。

 だがまあライラ・ソルテットにはこれぐらいなら造作もないことだ。第一階層の魔物相手ならば二百三十一と言う数であってもライラ・ソルテットが負ける道理はない。

 さすがにこの規模の戦闘が何十回も続けば魔力切れを起こしてしまうかもしれないが。

 天井から落ちてくる二百三十一体の魔物を見れば阿保三人は命の危機を感じて撤退という選択をしてくれるだろう。ちなみにだがもし阿保三人が戦闘を続けようとした場合はリア護衛用小型分身を使って洗脳魔法を使って阿保三人をダンジョンから出るように仕向けるつもりでいる。

 ただ、その必要はなさそうだ。

「魔物の数が多すぎる! バトルト! 撤退するぞ!」

「ああ、分かった! エメル、行けるか!?」

「な、何とか……」

 どうやらエメルに救出に成功したようだがバトルトとガルドは魔物の掃討は不可能だと判断したようだ。ちなみに阿保三人が相対している魔物の数は五十七体の魔物でいまだに一体も減っていない。

「リア! 撤退しよう! 魔物の数が多すぎる!」

 たかが五十七体だというのに数が多すぎるとうバトルトは言う。少し離れたところから魔法を魔物に放てば五十七体の魔物なんて簡単に掃討できる実力をエメルもバトルトも持っているはずなのに、だ。

 だが撤退するという判断をしたところは評価してもいいだろう。

「リアから離れろ!」

 不意に、肘から先の感覚がなくなってしまう。何が起こったのかはリア護衛用小型分身から把握はしているがライラ・ソルテットとしては一切把握できていない。

 いや、現実を受け止めきれていないと言うべきか。

 リアには余裕がなさそうだったので私が天井から魔物が生れ落ちようとしていると伝えようとしたタイミングで阿保三人の内の一人、ガルドが大声とともに手持ちの武器を振るった。

 ガルドの攻撃範囲内に魔物などいるはずもない。阿保三人は追いかけてくる魔物から逃げていて天井の亀裂から産み落とされた魔物はリアの安全を考えて進路上の魔物はすでに討伐済みだ。

 では、ガルドは一体何に対して武器を振るったのか? 私の肘から先の感覚がないことを踏まえて考えると、分かってくるだろう。

 ガルドはリアと手をつないでいる私の腕に対して武器を振るったのだ。

 宙を舞う腕と切断された腕の断面を見る私とリアはあっけにとられる。そのまま硬直するのはリアで腕を切り飛ばされた痛みでその場にうずくまるのは私だ。

「ぐっぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛」

 私はすでに痛みに対する耐性を持っているがそれは痛みを我慢できると言うだけであって痛みを感じないと言う訳ではないため、我慢しなければ汚い悲鳴が私の口から漏れ出してしまう。

「な、なにを……?」

 リアやライラ・ソルテットからすればガルドの行動はあまりにも唐突だった。

 だがガルドからすれば私がリアを魔物の群れに連れて行こうとしていたように見えたのだろう。だから私を攻撃した。

「リア、逃げるぞ!」

 ガルド達はリアの手を取り二百三十一体の魔物が出現する範囲の中心に向かって駆けていく。

「待ってください!」

 リアは悲鳴に近い叫び声をあげるがガルドをはじめとした阿保三人は聞く耳を持たない。

 阿保三人からすれば迫る魔物から逃げることが最優先事項なのだろうがリアにとっての最優先事項は二百三十一体の魔物が生まれる範囲から出て迎撃態勢を整えることなのだろう。

 リアは天井を見上げどんどん魔物の出現範囲の中心に近づいて行っていることに気づき顔が青くなっていく。

「止まってください!」

 リアは幻覚の森で引きずられた時とは違い身体強化魔法を自らの体に作用させた状態でガルドの手を進行方向とは逆に引っ張りながらその場で強く踏ん張り阿保三人の進行を止めようとした。

「うおっ! ……リア?」

 リアの抵抗はガルドの歩みを止めることに成功したようだ。またエメルとバトルトもガルドと同じように足を止めた。

「ソルテット様を助けないと! それに――」

「あいつのことは気にすんな! 行くぞ!」

 リアは天井から魔物が降ってこようとしていることを伝えようとしたが伝える順番が良くなかったようだ。先に天井から魔物が降ってくると言っていればまだ可能性はあったのかもしれない。

 ガルドはリアがまた抵抗して進行を妨げない様にするために抱きかかえて移動を再開した。

 再開したがおそらくリアと阿保三人が魔物の出現範囲から出るよりも先に二百三十一体の魔物がすべて産み落とされるだろう。現に今も二十二体の魔物が天井から降ってきている。

 私とリアが阿保三人のいる方向に走った時は一度に産み落とされる魔物の数は十体に満たなかったことを考えるとあと数十秒もしない間に二百三十一体の魔物が産み落とされることになるだろう。

 また今のまま私がいる場所から逃げるようにして移動しているようでは魔物の出現範囲から逃れられないだろう。

「な、なんだ……魔物が降ってきた……?」

「……天井に、裂け目が……」

 魔物が降ってきたことで始めて天井に亀裂が入っていることに気づいた阿保三人は足を止めて呆然と天井を眺めている。

「魔物が降ってくる、リアを守るぞ!」

「ああ!」

「わかった!」

 そして阿保三人は魔物の出現範囲の中心に近い場所で立ち止まり遊撃を行うという判断をしたようだ。しかも先ほど上から降ってきた二十二体の魔物に対して攻撃を行うことなくリアを囲むような位置に付き周囲を警戒し始めた。

 確かに、天井から魔物が降ってくることが分かっているとはいってもどこからどのタイミングで魔物が降ってくるのかが分からないためリアを囲むような位置に付くのは間違っていない。だがそれは目の前にいる二十二体の魔物を無視する理由にはならないし今ならまだ私のいる魔物出現範囲外まで向かうこともできるはずだ。

 そもそも阿保三人には二百三十一体の魔物と戦い勝利を収める力がないのだから取れる手段は逃げるという手段だけなのだが、どうやら先ほどの戦闘を本当に自力で乗り切ったのだと勘違いしているようだ……いや、それだけじゃない。

 もし先ほどの戦闘を自力で乗り切ったと勘違いしているだけなら明らかに三十を超える魔物が生まれてくる亀裂の数をみて戦うという判断は取れないはずだ。

 なぜなら阿保三人は間違いなく三十体の魔物に苦戦していたからだ。三十体の魔物に苦戦したにも関わらず三十を優に超える魔物の生まれる亀裂を目にして戦うという判断をとる理由は、なんなのだろうか? 阿保三人は数もまともに数えられていないのだろうか? 

 私がそんなことを考えている間にも時間は進み、またしても天井からは魔物が落ちてきた。今回落ちてきた魔物の数は三十五体だ。

 今すぐにでも攻撃を開始するべきだが、阿保三人は魔物を睨むだけで攻撃を行わない。

「み、皆さん? 一体何を?」

 リアが困惑するレベルで阿保をさらす阿保三人の考えていることはわからないがこのまま私が何もしないと阿保三人は間違いなく魔物の物量に押されて殺されてしまうだろう。

 私にとって阿保三人は死んでほしい人間であるのと同時に死なれると困る人物だ。そのため私は阿保三人のことも救出しなければならないのだが片腕を切り落とされたライラ・ソルテットは未だに腕を切り落とされた痛みに悶絶していて使い物になりそうにない。

 痛みを我慢すればすぐにでも戦えるのだがライラ・ソルテットの実力だと阿保三人とリアを保護しながら二百三十一体の魔物を掃討できる確証がない。

「このままでは大量の魔物に押しつぶされてしまいます! 魔物の出現範囲から出ましょう!」

 私が逡巡している間にリアは行動を起こした。リアの言葉を聞いて二十二体の魔物と三十五体の魔物を合わせて五十七体の魔物が居るにも関わらず攻撃を行わない阿保三人は一瞬迷う様子を見せた。

「わかった、リアがそういうのなら」

 バトルトは渋々とではあったがリアの提案受け入れた。

「俺も、それで構わない」

「リアの判断を信じます」

 続いてエメルとガルドもリアの提案を受け入れたためリアはすぐに移動を開始した。

「付いて来てください!」

 そういって、リアは阿保三人の間を抜けて私のいる場所に向かって走り出した。

「リア! それに近づいてはいけません!」

「距離的にこっちに行くしかないんです! それに魔物だっているじゃないですか!」

「あれぐらいの魔物なら俺達で瞬殺できる!」

「あれより少ない数の魔物相手に死にかけてた癖に何言ってるんですか!」

「なっ! どういうことだ!」

 リアは後ろから付いて来る阿保三人を見るが、すぐに視界から外した。

「リア!」

 バトルトはリアの名前を呼ぶがリアは反応せずに私のいる場所まで走ってきた……かと思えば通り過ぎていった。リアはどうやら私の切り飛ばされた腕を回収しに行ったみたいで私の元に来たリアは私の切り飛ばされた手を持ってきていた。

「すぐに直しますから、もう少しだけ耐えてください」

 そしてリアは痛みに悶絶しているライラ・ソルテットに声を掛けて回復魔法を使用し始めた。

「リア! そんなやつの治療に掛ける時間がある、な……ら…………な、何んだ、この魔物の数は……?」

 非難するバトルトの声は尻すぼみになっていく。次々と産み落とされる合計で二百三十一体の魔物を目視したのが原因だろう。

 この場にいる全員が二百三十一体の魔物が産み落とされるダンジョンの天井に発生した亀裂を目視したにも関わらず阿保三人は二百三十一体の魔物が産み落とされたことに驚いていることを考えるとやはり阿保三人は数を数えることが出来なかったのだろう。あるいは、すべての亀裂から魔物が生まれるはずがないと高を括っていたのか。

「この数は、さすがにまずいんじゃない?」

 二百を超える数を見て何とかなると言い出したらどうしようもなかったが、さすがにそうはならなかった。

「だな……一時撤退だ」

 遠距離から攻撃すればいいだけなのにガルドは逃げるという選択をした。逃走を一時撤退と言い換える理由は多分くだらないものなのだろう。

「逃げるにしても、まずはソルテット様の怪我を直さないと……」

 回復魔法は確かに怪我を直していてもう少しすれば腕は完全にくっつくだろう。今回の怪我はかなり綺麗な怪我で水属性魔法の治癒魔法でもくっ付けることはできただろうがここまで短時間で腕をくっつけることはできない。

 リアが回復魔法を掛けてくれたおかげで私の腕は時間の経過で完全に元通りになるぐらいに直っていて腕を切られた痛みも、ほとんど残っていない。

「いえ、もう治療の必要はありません」

「本当ですか? 無理はされていませんよね?」

「していないです。それに、逃げるにしろ戦うにしろ早く決断しなければいつかは魔物が私達のもとに到達してしまいます」

 阿保三人が魔物を警戒しているおかげなのか魔物は私達がいる場所に向かってくることはなく私たちの様子を伺っているがいつ魔物がこっちに突っ込んでくるかもわからないのだから流暢に話している暇はない。

 だから私は断りを入れることもなく魔法を使用する。

 魔法陣を展開し魔力を注ぎ込み、氷魔法を発動する。発動される魔法は最初に魔物を掃討したのと同じ魔法だ。規模は増しているがやっていることは何も変わらない。先端が鋭く尖った氷の礫を魔物に向けて飛ばす。

 誤射を気にしなくてもいいのでただひたすらに氷の礫を魔物に向けて飛ばし続ける。第一階層の魔物の中に防御力が高い魔物はいないので魔物の掃討にそこまで時間はかからない。

「行きましょう。早くこのダンジョンから出なければ」

 状況は刻一刻と変化している。こんなところで流暢にしてはいられない。

「な、なんですか、その魔法……」

「え?」

「だ、だから……今、貴方が使った魔法は一体何なのかと聞いているんです!」

 エメルは声を荒げて私に詰め寄ってくる。早くダンジョンの外に出なければリアの安全が脅かされる状況だというのにエメルが私の腕を掴んできたせいで、動けない。

「何ってただの初級魔法じゃないですか」

「そうですよ、シトラル教育機関で習った魔法じゃないですか」

「い、いや……あ、あり得ない……」

 一瞬、やらかしたかと心配したがリアの言葉を聞く限り私がやらかした訳ではないみたいだ。私はリアに使えない氷魔法を教えるなんて無意味なことはしていないので私の常軌を逸した戦闘経験が原因で狂いかけている常識をリアに植え付けた可能性はないからだ。まさか、エメルは範囲魔法を使えないのだろうか? いや、そんなことを気にするべきタイミングは今ではない。

「早くダンジョンの外へ向かいましょう」

「そ、そうですね。行きましょう」

 様子のおかしいエメルを気遣う時間は必要ない。最優先事項はリアの安全の確保だ。

「あの数の魔物を一瞬で……」

「やはり、あいつは危険人物だ。今後一切リアに関われないようにしなければ……」

「僕もその意見に賛成です」

 阿保三人はなぜか私を先頭にしてダンジョンから脱出するために移動を開始した。

 なんの躊躇もなく最後尾から付いて来ている阿保三人は初級魔法を発動した私のことを危険人物と判断したようだ。

 まあ、いい……いいのだろうか? まあ、良いという事にしよう。

 私たちは阿保三人を追ってダンジョンの奥に向かっていったがダンジョンの入り口から現在位置はそこまで離れているわけではない。そのため何もなければ数分で外に出ることもできるだろう。だが何もないわけがなく移動している最中にかなりの数の魔物と遭遇することになった。

 魔物と遭遇した場合、阿保三人ではなく先頭にいる私が魔法を使って素早く魔物を掃討していっている。そのためダンジョンから出るのにそう時間はかからないだろう。

「ソルテット様! 確かあの角を曲がれば……!」

「ええ、ダンジョンの出入り口が見えてくるはずです」

「貴様! 何を根拠にそんなことを言っているんだ!」

 阿保の言葉は無視だ。誰がこれを口にしたのかを認識することすら面倒くさい……が、正直に話すと根拠は全くない。

「あ、あれ……二階層に続く階段?」

 なぜなら、リアに着けている本体と同様の力を持つ分身でもダンジョンの出入り口を検出することが出来なかったのだから。

「な、なんで! 道は、間違えていないはずです!」

 だがリアの言う事は何一つとして間違っていない。リア護衛用小型分身はヘルトアブルト大迷宮に私たちが侵入した直後に第一階層のマッピングを完了している。だが、その情報によればこの通路は間違いなくダンジョンの出入り口が存在する通路になっている。

 つまり、どういうことかと言うと……私にもダンジョンの出入り口が消えて第二階層につながる階段が出現した原因が分からないということだ。

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