解決策のお話
そろそろ真面目に解決策を考えなければならないだろうと、唯一の安全圏であろう風呂の中で誠は思った。
……ペンシャならば誠を覗けるかもしれないが、流石に風呂まで覗き見てはこないと信じたい。
(……あいつら本当何考えてるんだ? 何をどうしたらエルシさんが俺の側に延々居続けるようになって、エビルたちが視線を向けてくるんだ?)
エビルたちとエルシの間に何かあったようだが、誠が聞いても全く答えてくれない。何が原因か分からなければ対処のしようがない。
もういっそあいつらここに置いていって船にでも乗って別の国にでも行ってやろうかと思ってしまう。依代である誠が近くにいなければ神の子たちはそのうちに力が尽き、何もできなくなるだろう。
(割と本気でこれが一番いい気がしてくるなぁ。もうエビルとかはただの武器として生きていってもらった方が幸せな気がする)
まあ流石に冗談だが。
(けど、本当に何があったんだ? エビルたちって同じ目的で動いてるんじゃないのか? エルシさんだけ違う目的持ってる……ってのは考えにくいよな)
湯に顔を半分ほど沈ませブクブクと泡を吹かしている時、ガラッとドアが開いた音がしたのだが誠は気づかずに考え込む。
(やり方の問題かなぁ。エルシさん人間が好きらしいし、人間殺しまくって何かしようとしてて、その計画にエルシさんが反対したとか。……でもそれだとエルシさんとエビルたちの感じからして狙いが俺になるんだよなぁ)
シャワーの音がしているのだが、これでも誠は気づかない。
(前にエルシさん神の子を信用するなってわざわざ言ってきたし、結構俺のこと気に入ってくれてんのかな。多分、人間の好意とは全然違う感情なんだろうけど)
「……でも、だからって長年一緒にいた兄弟より俺を取るかね。俺エルシさんに何かしたっけ?」
「はい?」
「は?」
独り言に反応され、今更のように風呂場に誰かが入ってきたことに気づく。
誰か、というかエルシが入ってきていた。風呂場なので当たり前といえば当たり前だが、裸で。
「ばっかじゃねえのかお前ええええぇぇぇぇ!?」
ボンッ! と風呂の湯がエビルの力によって蒸発した。湯気が風呂場を満たし、視界を埋め尽くす。
それでもエルシのいる方を見てられず、誠は背中を向ける。
「ばっかだろ! ばっかだろお前! なんで入ってきてんだ! 本当何してんだ!? 羞恥心とかねえのか!」
「マコトさんに話したいことがありまして」
「ここじゃなくていいよな!? 絶対ここじゃなくていいよな!? つーか思いっきり見ちゃったんだよもう本当もうさあ本当さあ!!」
ラッキースケベイエーイ、などと喜べるものじゃない。恥ずかしすぎてもうまともに顔が見れそうになかった。顔を見るたびに今の光景を思い出してしまうだろう。
対して、エルシは至極冷静に話してくる。
「ここじゃないと、エビル兄さんたちが見てる場所じゃあ話せないんです」
「………………………………真面目な話?」
「真面目な話です」
エルシの言葉を聞き、真っ赤だった顔が戻った。背中を向けたまま、誠は問う。
「エルシさんたちが、やろうとしてること?」
「……はい」
エルシはそこで少し間を空け、緊張をほぐすように深呼吸をする。
「……私たちは、マコトさんにあるものになってもらいたかったんです」
「あるもの?」
誠が問い返すと、エルシはまたもそこで深呼吸した。よほど緊張しているのか、次の言葉が出るまでかなりの間が空いた。
「……神です」
「……神様?」
「はい」
そこで更に三回ほど深呼吸し、ゆっくりとエルシは言った。
「私たちは、マコトさんに神になってもらい、……そして死んでもらうつもりだったんです」




