威圧感のお話
居心地の悪さが半端ない。
「…………」
「…………」
「「「…………」」」
「……どうしたんですか、この状況」
パンでレタスやハムを挟んで食べる誠。そしてその隣で微動だにしないエルシに、そんな二人に視線を向ける三人の神の子を見て、葉奈はそう評した。
それは俺の台詞だろと思いながらパンを咀嚼しながら頭に手を当てる。
あの後エルシに聞いても一言も答えてくれず、ただ全力警戒しながら誠の側に居続けていた。トイレや風呂にまで入ってきそうになった時は流石に追い出したが。
一方、エビルたちも何も話してくれなくなっていた。ただ何とも言えない視線を誠に向けてくるだけで、話しかけても離れてしまう。
威圧感が常に隣に纏わりつくというのは思っているよりストレスが溜まるらしい。まだ朝にも関わらず頭痛がする。
せめて会話でもして気を紛らわせようと、この中で唯一会話ができる葉奈に話しかける。
「ファニーさんたちどうしてるか知ってる?」
「えと、ファニーさんは知りませんけど、マーチェさんなら部屋で作業してました。確か『こっちにどんな事情があっても仕事はちゃんとしとかないといけない』だそうです」
「真面目……とは違うか。有給休暇も取れないような仕事ってわけでもないだろうに。地位的にも」
「……? マーチェさんって偉いんですか?」
マーチェが何者かを知らない葉奈は首を傾げる。偉い役職に付いてるのかどうかの詳細は誠も全く知らないが、テズニムについて話した時に一応了解していたことから考えるに、それなりに人を動かせる地位にはいるのだろう。
「多分ねー。聞いた感じ、仕事をこなし続けてたら役職が付いたんだろうけど」
「何の仕事ですか?」
「物作り」
範囲の広すぎる答えに、葉奈がまたも首を傾げる。とはいえ、サイジェスタの科学者だと伝えるとそれはそれで面倒なことになるのだが。サイボーグ忍者に襲われたこともその魔術師に襲われたこともあるし。
そうこうしていると葉奈が朝食を食べ終えてしまい、席を立つ。いつも通り墓参りに行く葉奈に行かないでとも言えず、誠はそのまま葉奈を見送る。
もう買い物にでも出て逃げ出そうかと考えもするのだが、神の子たちはどこまでも追いかけてきそうで落ち着かない。ペンシャは間違いなく空間転移をしてくるだろうし。
というわけで真也でも苛めて精神安定を図るかと思い、誠は真也を探し始める。とにかくこの状況をどうにかしたい。
だが何をしているのか、今日は珍しく真也がいない。どこかに出かけているのだろうか?
後の候補は。
「……ファニーさんは放っておいた方がいいよなぁ。大事なことはマーチェさんが言ってくれてるだろうし。うん、マーチェさんの所に行って仕事を手伝おう。エルシさんたちも手伝って」
「「「「…………」」」」
無言が辛い。
(くっ……! ちくしょう! 本当になんなんだよ今日は! 記憶失う前の俺、解決策を教えてくれよマジで!)
心の中で叫ぶ誠だが、マーチェの部屋の前に『作業に集中するため開けないでください』と書かれたプレートがあって結局丸一日この状態になったりするのだが、それは別のお話だ。




