女の子が落ちてきたお話
「で、何でこうなったんだっけな……」
そう呟く誠の左眼はどっかの戦国武将が付けてそうな黒い革眼帯がある。
左眼が宝石なのを鏡で見てみると結構怖かったので、そこら辺の店で適当に買った物だった(左眼の石は透視が出来るみたいで、眼帯してても普通に視界は確保できている)
「どうかしましたのマコト?」
その誠の右隣にはファニーがいる。その格好は赤のロングスカートの水色の長袖服で、若干胸元が開いていて何気に困る。
「うーむ、やはり数値が少し違いますね。誤差の範囲ですがもう少し研究を……」
左隣には変わらず白衣のマーチェがいるが、何やら結晶を見てぶつぶつ言っている。もしかしたら結晶は携帯のような物なのかもしれない。
(えーと、確か最初……)
『元の世界に帰るための旅に行きます』
『あ、じゃあ私も行きますわ』
『ファニーが行くなら私も行きます! あ、邪魔にはなりませんので、その……』
ここまで僅か十秒である。
(あれー!? なんでこうなったのかわかんない!?)
「(まあ、そなた一人でこの世界を動き回れるとは思えぬ。ちょうど良かったではないか)」
頭に直接響く声の主はエビル。今は眼に入れてある(という表現は変な気がするがこれ以外に言いようがない)
(……問題が一つ)
ちらりとファニーとマーチェを見て思う。
(ファニーさんはもう前ので戦力としての期待はなし。マーチェさんは明らかに科学者ですパワードスーツでも持ってこい)
「(意味がわからぬが?)」
(そして俺は平和主義日本の一般人! この面子誰一人として戦えない! 初期雑魚に全滅必須!!)
RPG風に例えてみるとしよう。
『まものが あらわれた!』
『マコトたちは どうする?』
マコト・ファニー・マーチェ『戦う』
『マコトの こうげき!』
『マコトは けんでなにかをきずつけるゆうきがない!』
『ファニー の こうげき!』
『ファニーは まものを なぐった』
『まものに ダメージを 与えられない!』
『マーチェの(ファニーと以下同文)』
こんな調子では最初の街から出た瞬間教会に逆戻りだ。デスペナルティでお金が尽きてしまう。
(あ、いや教会で復活出来るのは主人公の特権だから俺ら無理だ)
何この積みゲーと頭を抱えたくなるがそこでふと気づく。
(エビル! お前しかいない任せた!)
「(……一つだけ言わせてもらうがそんなに魔物に襲われることはない)」
(え?)
「(街道には衛兵が見回りを行っているし、そもそも襲われることは希有だ。そなたが心配するようなことはない)」
(フラグ乙。そのたまたま偶然を拾うのが物語の主人公です)
「(まあそう思いたいならそれでも良かろう。……我は暫し眠る。必要とあれば起こせ。契約には従おう)」
(はいはいおやすみ〜)
そんなやりとりをしていると目的地に着いた。
煉瓦のような物で出来た建物には『飛空挺乗場』と書いてあった。その周りには見栄えのためか建物を囲むかのように木が植えられている。
「では少しお待ちをー」
マーチェはそう言いながら建物の中に入っていく。その後ろ姿を見ながら誠はファニーに問う。
「今さらながら何でここに来たのかを知らないのですががが」
「ががが? ここに来たのは飛空挺に乗るためですわ。アルティルナは海に囲まれた島で、飛空挺以外だと遠くて行きにくいのよ」
「海は……大体察しました」
(船が腐って沈むんだろーなー)
そういえばアルティルナって水の国なのに水が死んでるとか大丈夫かなーと空を見上げて思っていると、何かが見えた。
見えているのはおそらく飛空挺なのだろう。だがそれより気になることがある。
「なんか、落ちてね?」
「え?」
ゆっくりと、降下するというより落下しているといった表現が正しい状態を、誠は見ていた。
そうやって見ていたからなのだろう。飛空挺から何かが出たことに気づけたのは。
「は?」
その何かに集中すると、何故か都合よく左眼がカメラのズームみたいに視界を拡大させた。
茶色の外套を着た女性、というよりは少女だ。肩に触れるか触れないかの辺りまで伸ばした金色の髪を持っていた。
少女が、落ちてきていた。何気に意識がない状態で。
「親方! 空から女の子がってなんじゃそれゃ!?」
「な、なんですのいったい!?」
誠は眼帯を取ってトントンと左眼を叩いて剣を引っ張り出して呼びかける。
「エビル! エビール! 海老とビールが組み合わさったような名前の正体不明さん助けて!」
「いきなり随分な言いようだな」
言いながらも剣の宝石が少し光った。何をするんだと疑問を放つ前に結果が現れた。
轟ッ‼︎ と誠がロケットの如く垂直に飛んだ。誠の足裏から炎が吹き出していた。
「にょんちぬしんるべ⁉︎」
何だいきなり! と言いたかったのだがGだか風圧だかで口が上手く動かなかったようだ。
その勢いのまま少女に元へすっ飛んでいき、そのまま腕に引っ掛けた。誠が適当にバタバタと両腕を振り回していると偶々少女に引っかかっただけだが。
「ひっかかっ……!?」
ぼんっ、と何やら聞きたくない音がした。足裏から出てた炎が消えて無くなっていた。
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
しこう ていし。
誠の体は、即座に重力に従って落下を開始した。
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃああああぁぁぁぁぁぁ!!」
地上のファニーから見ると奇怪な声を発しながら誠が誰かを抱えて落ちてるように見えるのだが、本人はそんなことを気にする余裕はない。
「エビルぅぅぅぅ!? ヘルプマジヘルプ!!」
ボンッ! と誠の叫びに応じたように空中で爆炎が生じた。
誠を目の前を遮るように現れた爆炎は誠の身体を少しづつ減速させていく。……誠に衝撃波を浴びせて。
「あばばばばばばびびびびびぶべ!?」
そしてそのまま近くに生えてた木に向かって突っ込んだ。
「……し、死ねる。人間ロケットとか実際やると本当に死ねる」
「安心するがいい。今のそなたがあの程度で死ぬことはない」
「安心できねぇなおい……」
痛む身体を動かす。なんだかんだで腕には少女が引っ掛けられていた。
「しかし兄妹が空から落ちてくるとはな」
「ほんと、どこの映画だっ……待て、今なんて言った?」
「む、分からないか?」
ちょいちょいっと剣が少女を指して言う。
「そこにいるのは我らが父の八番目の子供、風を司るエルシだ」
どうやら人型も混じっているらしい。




