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行く先が決まったお話

「ええと、泊めてくれてありがとうございますマーチェさん」

 そう言って頭を下げた誠の前には白衣を着た赤髪の少女がいた。

 幼さが残った可愛らしい顔に反して身長は誠より一つ下くらいで、かなり大きな胸が白衣を押し出している。

 今誠がいるのは色々な薬品が瓶詰めされて置かれている。机の上には大量の書類が積まれている。

「気にしてくれるのなら少しお願いがあるのですが……」

 誠にマーチェと呼ばれた少女は恥ずかしそうに上目遣いでこちらを見てくる。

「俺に出来ることなら何でも、はなくてもある程度ならしますよ」

「ほんとですか!? でしたら貴方の頭を解剖させてください!」

「………………………………………………………………………………………………んん?」

 何かおかしな言葉が聞こえた気がして、思考を放棄しそうになった。投げ捨てそうになった意識を拾い上げる。

「貴方の頭を解剖させてください!」

 拾い上げてそのまま背負い投げを決めた。

「あの、大丈夫ですか?」

「…………はっ!? やばいやばい飛んでた!」

「大丈夫そうですね。よかった〜」

 本気で言ってるように誠は感じたのでいい子なのかなーと思う。

「まともな頭じゃないデータをとっても意味ないですもんね」

 そんな甘い思考はハンマー投げの要領で遠くに投げ捨てた。

「あの、マーチェさん? それは言葉通りですか……?」

「はい!」

 明るい笑顔を見て誠はその場で頭を抱え出した。ファンタジーってこんなのだっけ? と自分の記憶を探っていると最近のファンタジーはそんなもんだった気がしてきた。

「何をしてるんですの?」

 ファニーの声がして誠は顔を上げる。そしてまた思考が停止した。

 ファニーが着ている服はどこか天使を連想させる服、というかまんま天使だった。美しさが、ではなく、いわゆるコスプレの意味で。

「お前が何をしとるんだ!?」

「着たくて着てるわけじゃありませんのよ!!」

 顔を真っ赤にして叫びながら睨む目の先にはマーチェの姿があった。

「やっぱりいいですねファニー! その恥ずかしそうな顔も最高です!!」

 ハアハアと息をして水晶のような物をファニーに向けるマーチェの姿が。

「この子駄目な奴だー!!」

「し、失礼ですね! 可愛い子を愛でるのは万国共通なんですよ!?」

「その理屈で世界平和でも実現させちまえ!!」

「……はっ! 確かにファニーのこの姿を全世界に見せれば人類全てがファニーの元に集うかも……ありえます!」

「ありえませんわよ!? あ、ちょっとマーチェ! 本気でやるつもりですの!?」

 ドタドタと走る音が聞こえてきて溜息を吐く。

「もう少し落ち着けばいいのにな」

「(そなたはおとなしい女子《おなご》が好みなのか?)」

「おおう!? え、エビルか」

「(うむ、少し伝えることがあったのでな。まずは我を外に出してくれ)」

「まあいいけど」

 左眼をコンコンと叩いて出てきた柄を掴んで引き抜く。何気にこの手順が面倒だった。

 出てきた剣が勝手に動いて積まれた書類に向く。

「そこの書類、そこに必要な情報がある」

「勝手に見ていいのかな?」

 と言いつつも誠は書類を手に取る。幸いにも字は本の字と同じだった。

「……汚染水? 何の関係が?」

「その水を飲んだ者の症状、我が兄妹の力と無関係ではないのだ」

「?」

 書類にはアルティルナという国で病気が流行ったこと。病気の元が水であること、病気の症状などが細かく書かれていた。何でも病気になった者の殆どが死んだが、一人だけ生き残った人がいるらしい。

「我が妹であるウォンターは、自身の適用者を選ぶ際に自身の力を込めた水を飲ませるのだ。この紙に書かれし症状はウォンターのものと酷似している」

 書類には、水を飲んだ者は最初に腹痛を訴え、次に高熱を出し、激痛を訴えながら暴れ狂い、最後には腐って死ぬと書いてあった。

「お前の妹物騒すぎないか!?」

「そう言うな。我も適用者を選ぶ際に我が炎でその身を焼かせるのだ。大した差はありはしない」

「こっわ! お前ら神じゃなくて悪魔の子供だよね!?」

「それよりも、この国に行こうではないか。久方ぶりに兄妹に会いたい。それに妹が他の兄妹の居場所を知っているかも知れぬ」

「アルティルナ、ね。どういう国なんだか」

 バレないように書類を綺麗に戻して部屋を出る。

 まだドタドタと走る足音が聞こえてきていた。

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