神様の子供のお話
誠が目を覚まして一番に感じたのは温もりだ。
自分の手を何か柔らかい物が包んでいるような感覚を感じる。
起き上がって見てみると、ファニーが誠の右手を両手で握った状態で寝ていた。
誠は自分の周りの状況を確認してみる。
高そうなベットで寝ていて、隣に椅子の座ったまま寝たファニーがいる。部屋はとても広く、そのまま会議室にでも使えるんじゃないかと思うほどだ。
動くと起こすかもしれないと思うと動くことも出来ない。仕方ないのでもう一度寝てしまおうと寝転がる。
「(眠るでない異界の者よ)」
「おぽっ!?」
びっくりして人の言葉かも怪しい叫びを出してしまい、慌てて口を塞ぐ。幸いにも起きた気配はしない。
「(何故そんなに驚いているのだ)」
(いきなり頭の中に声が響いたら誰でも驚くつーの! てかお前は誰!?)
「(我が名はエビル。世界を作りし偉大なる神の、五番目の子供。……この言葉は先日言ったばかりだったはずだが?)」
(いやいや、普通あんなの夢だと思うじゃん。そんな都合よく『力をやろう』とか言う奴が現実にいるわけないでしょ?)
「(ここにいるが?)」
(そでしたねー)
なんかもう頭が痛くなってきた。なんでそんな契約したんだと思うが記憶があやふやで定かでない。
と、そこであることに気づいた。
(神の子供? じゃあお前も神様!? だったら今すぐ俺を元の世界に戻してゴーゴー!)
「(そなたの世界では親の力を子供がそっくりそのまま引き継ぐか?)」
(無理ということですねわかりたくなかったよこんちくしょうが!!)
暴れたくなってくるがファニーを起こすといけないので控える。
「(それに父であるクリエーターは既に隠居している)」
(クリエーターって何!? 神様作家なの!? 隠居ってなんだよ! 神様が隠居とかわけがわかんねぇよ!!)
「(我に言われても困る。それとそなたの世界に行けないわけではない)」
「マジで!?」
また叫んでしまった。ファニーは少し動いたが眠りが深いのか起きることはなかった。
(帰る方法は!? どうすればいいの!?)
「(我が兄弟の中に、空間を操る者がいる。力を借りることができればあらゆる世界を渡ることができよう)」
(よっしゃそいつどこ!?)
「(わからぬ。この世界にはいるはずだが、正確な位置は近くでなければ感知出来ぬ)」
(よっしゃやることは決まったRPGの始まりだわっはっはー!)
誠はかなりテンションが上がっていた。今までまったく見つからなかった帰る道が見つかったのだから仕方のないことだが。
と、そこで今更誠はあることに気づく。
(お前どこにいるの?『そなたの心の中だ』とかはなしで)
「(そなたの身体の一部として存在している。左眼を叩いてみよ)」
「…………ふぁ?」
左眼に指を動かす。しかし叩くと言われても眼球叩くわけにはなー、と思いながら恐る恐る触ろうとする。
コンッ、と何か硬い物を触った時の音がした。
「え? は、はぁ?」
二三度叩いてみる。眼球があるべきなのに、叩くと石のような感触がする、
そんなことを繰り返していると突然左眼の視界が何かに埋め尽くされた。
ズズッと左眼の辺りから何かが飛び出していて、わけも分からず出てきた物を引っ張る。
シャランッ、という音と共に引き抜いたのは、剣だ。宝石がある奇妙な剣。
「…………………………………………………………………………………………」
たっぷり数分ほど放心して、はっと意識を取り戻す。
(待てい! なんで眼から剣が出てくるんだよ!? 眼から出たにしては剣が大きすぎるだろ!?)
剣は刃だけでも十二分に誠の頭を貫通する長さがあった。こんな物が自分の眼から出てきた事実になんかもう自身の常識を投げ捨てたくなってきた。
「そなたの持つ剣こそが今の我の身体だ」
「きぃぃぃぃゃゃゃゃゃ!! しゃべったぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「な、なんですのいったい!?」
剣が喋ったという現象を見て叫んでしまった。その結果ファニーが驚きながら起きてしまった。
「ファニーさん! 剣が喋った! わけがわからん!!」
「あまり叫ぶな異界の者よ。耳が痛い」
「耳ってどこだああぁぁぁぁっっっ!?」
ギャーギャー騒ぐ誠を見て、ファニーが呆れながら母親のような顔をしたのを、誠は見ることができなかった。




