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隠し事のお話

『それで?』

 明かりのない暗い部屋。

 お互いの位置を視認できているのか疑問に思うくらい暗闇に満ちた部屋で、二人は相対していた。

 暗闇で顔は見えず、声も何か被っているのかくぐもっていて聞き取りづらい。

『それで? お前は何もかも知られている彼を放っておいてきたと? 我々の目的も感づいているかもしれないのに?』

『……ええと』

 責めるような口調とは裏腹に、声に感情が篭ってない。だが逆にそれが怖さを増させ、ビクビク怯えさせることになっていた。

『ほら、彼は私よりもずっとずっと強いですから……。いくら強化してても限界はありますし……』

『その服に仕込んだ武器は何のためにある? その胸の物はなんで存在する? 方法など、幾らでもあるではないか』

 ペチンッと軽く叩く。胸についた脂肪の塊が柔らかい弾力で手を押し返し、脂肪が揺れた。

『……いざ自分がやろうとしたら失敗するくせに』

『聞こえてるぞスター』

「それを言うならこっちも聞いてますよ」

 突如、第三者の声が響き渡った。二人が即座にそちらに顔を向けるが、暗くてやはり何も見えない。

「あー、やっぱ暗いですよね。今火を出しますからちょっとお待ち」

 ボウッと酸素が燃え、炎が部屋を照らす。火の玉は宙に浮き、何もない場所で燃え続けた。

 炎の光が第三者の顔を照らす。片目に眼球ではなく宝石が埋まっている少年は、気楽そうに片手を上げる。

「やっほ」

『ちょ、なんで誠さんがここにいるんですか!?』

「お馬鹿。この目に壁なんて概念存在しないんだから、隠し部屋なんて見つけたい放題だよ」

 誠は呆れながらそう言い、二人に近づく。

「とにかく、そのガスマスクいらないでしょ。はい没収」

『あっちょ!』

『こら! やめなさい誠!』

 二人の制止を無視し、誠は二人のガスマスクを取り上げる。現れた顔を見ながら誠は言う。

「というか、なんでガスマスク付けてるんですか? 別にこの部屋に有毒ガスが満ちてるわけでもないし、そういった物が出る仕掛けもないし」

「雰囲気です!」

「あ、やっぱ馬鹿なんですねなるほど」

 納得したような顔をしながら二人を馬鹿にし、誠は部屋に置いてあった椅子に腰掛ける。

「……しかしファニーさん。なんかマーチェさんに色仕掛けやらせようとしてたけど、今更マーチェさんがそんなことしてきたらこっちはビビって警戒しかしませんよ。そっちのやりたい事も知ってるから余計に」

「というかそれならファニーがやってくださいよ。ファニーだってご立派なもの持ってるんですし」

「う、うるさいですわよ!」

 体を腕で隠しながらファニーはそう叫ぶ。だがマーチェは何やら妙なスイッチが入ったのか、ジリジリと近づいて行こうとする。

「大丈夫ですよファニー。私の頭ではファニーに似合う服を常にシュミレートしてますから!」

「貴女仕事中に何してるんですの!?」

「大丈夫です! 脳は左脳と右脳に分かれてるんですから、半分は別のことを考えれるんですよ!」

「いや無理無理。てかそんなことしたら体半分動かなくならない? ……後、妙なテンションで話の流れを持っていくのは止めようか?」

 誠に思惑を読み取られ、ファニーは視線を逸らす。

「……あ、そんな方法もありましたね」

「おいそこの変態」

 マーチェは特に何も考えていなかったらしい。あははと笑いながらファニーの服に手をかけ、スルリと脱がしにかかろうとしている。

 本気で話が進まなそうなので、誠は立ち上がってマーチェの手を叩き落とし、その腕を掴んで逃げられないようにしておく。

「あーれー、捕まってしまいましたー。これではこちらは誠さんの好きにされるしかないじゃないですかー」

「いや、別に捕まえなくてもファニーさんたちはいつでも気絶させる事も頭破裂させることもできるよ?」

「はれっ!?」

「圧縮空気を口の中に突っ込んで空気を解放。莫大な空気が一気に口の中に満ちて、その勢いに耐え切れず頭がリアルパーン。……海外サイトで実際に見た時はなんかもう、気持ち悪いとか怖いとかいう感情も出てこなかったなぁ。唖然としてたわ」

 ヒュウ、と風が吹く音が響く。部屋は密室になっていて、風が吹き抜ける場所などないはずなのにだ。

 エルシの風の力で実際にできるということを二人に教え、誠は笑う。

「というわけで、こっちの質問に答えて欲しいなーって。因みに嘘かどうかは心臓の鼓動見れば一発なので無駄な努力はやめるように」

「………………どうせ、やりはしないのでしょうけど」

 溜め息をつき、ファニーは両手を上げる。

「親友が人質に取られては、私も何もできませんわね」

「……ありがとうございます」

 誠はホッとしたように息をつき、マーチェから手を放す。マーチェがキョトンとしたような顔で見てきて、誠はパタパタと手を振る。

「さっきも言ったけど、捕まえてるかどうかは関係ないから」

 そう言うと誠は椅子に座る。ファニーたちも部屋の隅にあった椅子を引っ張ってきて誠と向かい合う位置で座る。

「……それで、何を望みますの?」

「えっと、質問に答えてほしいんです。これはちゃんと確認しとかないと、大惨事になりかねないので」

 そう前置きをした後、誠は二人に向けてこう問いかける。

「ファニーさんにマーチェさんは、エビルたちの力を使って何をしたいんですか?」

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