仲間になりたそうな目のお話
「日本を奪ったのは、俺たち獣人なのに! 何でお前はそんな顔でいられるんだ!?」
獣人のその言葉に、誠の動きが止まる。
カタカタと、エビルが震える。
「まあお前は異界人だからな。この世界のことを知らないでも無理はないが」
「……異界?」
獣人たちの誰かが、エビルの言葉を理解できずに呟く。
「そもそも獣人たちの服装で何か思わなかったのか? あの服は日本独自の物なのだろう?」
「…………」
「で、マコトに問うが……別の世界とはいえ、自分の国を奪った奴らの手伝いをまだするつもりか?」
静寂が訪れる。エビルはもう何も言わないし、獣人たちは状況を理解できずに動くことができない。
誠は口を開かず、静かにエビルを鞘から引き抜く。ヒョウの獣人は情けない声を上げ、格郎は体を強張らせ、真奈は葉奈を自分の体で隠した。
「……エビル」
「なんだ?」
「お前はいったい何時の話をしてるんだ?」
キンッ、という音がした。
誠がエビルを鞘に戻した音だった。
「あのさ、俺もちょっとだけマーチェさんにこの世界の歴史教えてもらったんだけどさ、お前の言ってるのは二百年も前の話だぞ? どんだけ昔の話をお前は持ち出してるんだよ。当時生きてた人の孫が寿命で死んでるレベルじゃねえか」
「いや、過去がどうとかではなく、今も続く問題だと思うのだが……」
「それこそだから何って話だろ。そもそもこっちの日本は文化とかが似通ってるだけの別の国。そんなお国の問題とかに関わってらんないし」
何より、と誠は付け加える。
「そんな昔のことを気にして目の前の困ってる人見捨てるとか、それこそ馬鹿らしいつーの」
「…………」
誠が言い切ると、エビルは何も言わなくなってしまった。
呆れてんのかな、と誠は思いながらヒョウの獣人に近づき、目の前でこの国の地図を広げる。
「そういや聞き忘れてたんだけどさ、儀式って何処でやるの?」
「……こ、ここだ。三魁葉奈を捕らえたらここに連れていけと言っていたから、まず間違いない、と思う」
「そっかそっか、ありがとな」
誠は獣人に礼を言いながらエビルを鞘から引き抜く。ビクッ! と獣人の体が震える。
「ま、待て待て! 俺はちゃんと喋ったろ嘘偽りなく! やめろ、やめてくれ!」
「……なに早とちりしてんだか」
誠は呆れながら獣人の縄を切り、獣人を自由にしてやる。
獣人は驚いた顔で誠を見る。
「……良いのか? 俺の拘束を解いて」
「んー? だってお前は喋っちゃったからなぁ。拘束は解いてやらんと可哀想じゃん」
「そ、そうか。それじゃあ俺はこれで……」
そそくさと出て行こうとする獣人の尻尾を誠は掴む。ギャッ! と情けない悲鳴を獣人は上げる。
「な、なんだよ! まだ俺に何か用があるのかよ!」
「いや、用というかなんというか……お前が自殺しに行ってるから止めようと思ったんだけど」
「……え?」
「いや、さっきも言ったろ? 『喋っちゃった』って。……まさかと思うけど、敵さんに博士殺せば終わるとか儀式をやる場所とか教えちゃった奴が無事で済むと思ってるわけじゃないよな?」
「……あ」
「殺されるぞ、間違いなく。……そもそもこの部屋の監視自体どういう体制で動いてんだ? ローテーションとか定期報告とかあるんだったら間違いなくお前に何かあったと分かるし、その後に俺らが動いたらお前が何か喋ったと思われてもおかしくないぞ」
ダラダラー! と夏場に全力ダッシュした人みたいに大量の汗を放出する獣人。可哀想に思ったのか葉奈が新品のタオルと飲み物を手渡す。
汗を拭き取り、水分をしっかりと補給した獣人はゆっくりと口を開く。
「……田内真也。見ての通りヒョウの獣人で、足の速さには自信あります」
突然自己紹介したかと思えば、真也はその場に膝をつき、頭を床に押し付ける。
「死にたくないです! 仲間に入れてくださいお願いします何でもしますから!!」
でんないしんやが仲間になりたそうな目でこちらを見ている。
仲間にしますか?




