黒いあいつのお話
すまねぇ、遅れてすまねぇ。次は早めに投稿できるよう努力するから……。
「……ぬ、ぐ……」
「あ、起きた」
ヒョウの獣人は目を覚ますとまず自分の状態を確認し、自分が縛られていることを知るとふぅと息を吐く。
「……俺は拷問に屈しないぞ」
「まだ何も言ってないのに……」
誠は手を腰の後ろに回したまま呟く。腰の鞘に収まってるエビルがカタカタと震えながらこんなことを言う。
「ふん、そんな減らず口をいつまで叩けるかな? 我が炎に身を焼かれればそのうち許しを乞うことになるだろう」
「ふん! そんなことしたら喉が焼けて喋れなくなって情報を聞き出せなくなるぞ」
「なんだと!」
何やらいがみ合ってる二人を見ながら、誠はポツリと呟く。
「焼死って、一番苦しい死に方のトップ3には入るんだよなぁ……」
「……………………」
獣人の口の動きが、止まった。同じようにエビルも喋るのを止めたため、獣人の耳には誠のボソボソとした声がよく聞こえた。
「皮膚が焼かれた程度じゃあ人間は死なないからなぁ。自分の皮膚が焼ける匂いと一緒に激痛が延々と続くらしいんだよなぁ。人間でそんななのに、獣人はどんなことになっちゃうんだろうなぁ……」
ダラダラと、獣人の顔が一気に汗まみれになる。自分の体が燃えるのを想像してしまったようだ。
「……お、俺はそんなことには屈しないぞ」
それでもこう言う辺り、仲間意識が高いようだ。
そんな獣人の言葉に、誠が首を傾げる。
「え? 誰が痛みに訴えるなんて言ったよ?」
「え」
「そもそも人が焼け死ぬのを見るってSAN値がガリガリ減りそうじゃん。なんでそんな辛いことしなきゃいけないんだよ」
誠はそう言いながらゴム手袋をつけた拳を獣人の目の前に持って行き、開ける。
「だから、これを使う」
誠の手の中にあったものに、獣人は自然と視線が向いてしまう。
そこにいたのは、生物だ。体長三十センチほど、体は艶のある黒褐色。全身が上から押し潰されたかのように平たく、頭には長い触覚が生えている。
つまり、ゴキブリだ。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
「うおっ!? なんでそんな腹の底から叫ぶんだよ!?」
予想外の反応に誠がたじろぐ。獣人はそんなのお構いなしに必死にゴキブリから距離を離そうとする。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! その黒い奴を近づけさせるなああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「嫌がりすぎだろ!? 確かに人間がゴキブリ嫌いなのは万国共通だけどさ!」
因みに誠は知らないが、ゴキブリ嫌いなどころかゴキブリを食べる地域が存在する。ゴキブリの足を取り内臓を抜き取って油で揚げて食べたりするらしい。
とてつもない大音量で叫ぶ獣人から誠がゴキブリを持って離れると、ようやく獣人は叫ぶのをやめる。
「……は、話す。何でも話す。だからそれを近づけさせないでくれ」
「……俺、ゴキブリを口の中に突っ込んでやろうとか考えてたのに、意味なかったなぁ」
「やめろ! 何でもするからほんとにそれだけはやめろ!!」
獣人の必死な懇願に、誠は仕方なくといった感じに手を引いてゴキブリを獣人の視界から隠す。
「……ていうか、獣人って皆ゴキブリ嫌いなのか?」
「いや、俺が大っ嫌いなだけで後は皆普通だが……。口の中に突っ込まれるのは誰でも嫌だと思うがな」
「これから毎日ゴキブリを食べようぜ?」
「死んでも拒否する!!」
ゴキブリをそこら辺にポイッと投げ捨てながら誠は獣人に問う。
「そんなことよりも、お前葉奈たちがどこに行ったか知らねえの?」
「知ってたら俺がここにいるわけないだろうが」
「なんでこの場所に隠れてることがわかったんだ?」
「……街中で獣人ですって叫ぶようなことをしといて何を言ってるんだお前は」
「……やっぱあれかー……」
ズッコケてばれたのは痛かったなぁ、と誠は呟く。あれは事故なので仕方ないとは思うのだが、コケてなかったらなと思ってしまう。
「……あ、そういえば儀式のことについて聞きたいんだけどさ」
「……俺は儀式のやり方とかは知らんぞ。そもそも儀式は博士一人で執り行うらしいからな」
そんな獣人の情報に、エビルがカタカタと揺れる。
「マコト」
「断る」
「早すぎないか?」
「どうせ博士殺して終わりにしようとか言うんだろ? エビルさん、俺がごく普通の日本の一般人なのを忘れてないかね? 外国は知らんけど日本人は邪魔だよし殺そうなんてことでき……」
「日本人!?」
獣人が突然驚きの声を上げる。誠が口を閉じて獣人の方を見ると獣人は叫び出す。
「お前日本人だったのか!? どんな取り引きをしたんだ、なぜ日本人が獣人の手助けをしてるんだ!?」
「ちょ、ちょっとー? そんなデカイ声で言われても何がなんだか……」
「だって、ありえないじゃないか! お前ら日本人からすれば俺たち獣人が憎くて仕方ないだろう!? どうしてお前はそんな平然としてられるんだ!?」
「……あ、あのー」
横合いから、突然声が聞こえた。声のする方を見ると、葉奈たちが窓から入ってきていた。
葉奈たちは、縛られている獣人を見て驚いた顔をする。そして何かを言おうとしたが、その前に獣人の声が部屋に響き渡った。
「日本を奪ったのは、俺たち獣人なのに! 何でお前はそんな顔でいられるんだ!?」




