オムライスのお話
早めに上げれなかったけど、代わりに二つ投稿するから許してくだせぇ。
でんないしんやが仲間になった!
そんなやり取りから一時間後、誠はファニーの所へ戻ってきていた。
葉奈たちは別の隠れ家へと移動した。隠れ家、というかただのホテルだが。
名義では誠とファニー、マーチェにエルシの四人を使っているので、多分バレることはないだろう。金銭面もファニーの名前を見た人が何故か無料にしてくれたので問題ない。
(……つーか、ホントにあの人は何者なんだ? 俺、あの人が何してるのか一切知らないんだよなぁ)
今度聞いてみよ、と思いながらエルシの部屋に向かうのだが、そこで奇妙な物を発見した。
歪んだ扉が、床に転がっていた。
「……まさかマーチェさん、力技で突破したのか?」
誠がそう呟いた瞬間、ちょんちょんと誠の肩を誰かが叩いた。
「ん? あ、マーチェさん」
振り返ると、そこにはマーチェが立っていた。マーチェはゆーらゆらと体を揺らし、
「まーこーとさーん? ――遅い!」
そして勢いよく誠に向かって走り出す。
そのまま一瞬で後ろに回り込み、首を両腕で締め上げながらマーチェは叫ぶ。
「帰ってくるの遅いんですよ! あれこじ開けるのにどれだけ苦労したと思ってんですか!?」
「ぐぇ!? ギブ! ギブですって!」
誠はペシペシとマーチェの体を叩く。だが悲しいかな。これはプロレスとかではなくただの喧嘩。ギブアップなど認められていないのだ。
……因みに、マーチェが後ろから首絞めを行っているため、その豊満な胸が誠に当たっているのだが両者共に気づかない。マーチェは割と本気で怒っているし、誠は割と本気で意識が飛びそうになってるのでそんなのを感じる余裕がない。
「ぬおー! バガヂガラァァァァァァッッ!!」
火事場の馬鹿力+神の子に作られた腕を用いてようやくマーチェの腕が離れる。誠の顔色は何だがかなりヤバイ色になっていた。
マーチェはまだご立腹らしく、頬を膨らませている。
「全くもう! せっかく選んだ服が台無しになったじゃないですか!」
「ああ、やっぱそこなんですね。はいはいそれじゃあ夕飯はマーチェさんの好きな奴でいいですよー」
「オムライス」
「子供! って待って待ってやめてやめてほんとやめて!」
五分ほどギャーギャーと騒ぐと、多少気は晴れたらしく、マーチェはようやく首絞めをやめてくれる。
「……そういえばファニーさんは?」
「女の子の前で別の女の子の話をするなんて……誠さんはダメダメですね」
「エビル、構わん。燃やしてしまえ」
「冗談ですから! ファニーなら出かけましたよ、仕事があるとかで!」
「最初からそう言えばいいものを……」
エビルから手を離し、はぁと誠は溜め息を吐く。
「それじゃあ私は部屋に篭りますから、夕飯はよろしくお願いします」
「はいはーい、お勤め頑張ってくださーい」
マーチェが手を振りながら歩き去っていく。手を振るのをやめ、誠に背中を向けた時に、誠はマーチェに向けて言う。
「……閉じ込めるのはやりすぎた、ごめん」
ぴたっと、マーチェの動きが止まる。くるりと振り返り、笑いながら言う。
「素直に謝れたのはよろしい」
それだけ言うと、マーチェはスタスタと歩き去っていった。
頭を掻きながら誠はポツリと呟く。
「気合い入れて作んないとなぁ」
卵昨日使ったばっかだからまだあるな、と思いつつも誠はエルシの寝てる部屋に向かう。夕飯も大事だが、その前にエルシが起きてるかも確認しないといけない。夕飯の数的な意味で。
部屋の前でノックをしてみるが、反応はない。
「ああ、こりゃ寝てるかな?」
「待て、エルシが喋らないのを忘れたか」
「そういやそうか。エルシさーん、起きてる?」
大きめの声で呼びかけるが、反応がないのは変わらない。
「……一応部屋に入って確認するか。まさか着替え中で『きゃーえっちー』ドゴーンみたいなことはないだろうし」
コソッと部屋の扉を開けて中を見る。エルシはベッドの上で横になったままだ。
誠は腰から鞘ごとエビルを引っこ抜き、ベッドの側にあった椅子に置く。
「起きたら話聞いといて。妹さんは大切に」
それだけを言うと誠はエビルの返事を待たずにさっさと部屋から出て行く。
「……わかっている」
部屋から出る直前、エビルのそんな呟きが聞こえた気がした。




