妙な感覚のお話
誠は葉奈たちの所へ戻るために街中を歩いていた。
そこら辺の店で売っていたアイス片手に誠は呟く。
「……エビルさんエビルさん、この暑さどうにか出来ませんでしょうか? 火と熱を司るんでしょ?」
「そんな無駄なことに力など使うわけないだろう。万全の状態ならばとにかく」
「……(使えない子)」
「聞こえているぞ」
そんな感じにゆったりとしながら歩いていた誠は、突然妙な感覚に襲われる。
「……?」
体の右半分だけが水に浸かっているかのような感覚。チラッと右を見てみるが、そこには誰もいないし変わった物もない。
「……エビル、なんか変な感じしない?」
「どうした突然」
「いや、なんて言うか……」
誠が自身の感じていることを言葉にしようとした瞬間、妙な感覚は消え去った。
まるで、エビルに気づかれたくなかったかのように。
「…………」
「マコト?」
「ちょっと寄り道する」
誠は右側に注意しながら歩く。その途中で誠は小さな石畳の道を見つける。
小さな道を通っていくと、さっきの妙な感覚が戻ってきた。エビルも気づいたのか、カタカタと揺れている。
妙な感覚が強くなる方へ誠は歩く。歩けば歩くほど人気が少なくなっていった。
「エビル、これが何か分かる?」
「分からん。魔法の類だとは思うが……」
誠はエビルを鞘から引き抜く。辺りからは
人の気配が一切なく、不気味なくらい静かだった。
(……獣人か、自称神様か、それとも完全に別の何かか……)
どれにしても、誠がまともに相手していい相手ではない。エビルがいてもそれは変わらない。
(一旦逃げた方がいいかな? でも後で来た時にはもう消えてても困るし)
悩みながらも、誠は足を止めない。妙な感覚はドンドン強くなっていく。
辺りに警戒しながら歩いていると、ドンッと後ろから誰かにぶつかられてた。
「わっと!」
地面に倒れる寸前で誠はバランスを立て直す。ふーと一息つき、気づく。
妙な感覚が、今ので消えてしまっている。
「っエビル!」
誠は勢いよく後ろを向きながらエビルの名を呼ぶ。
が、誠の視界には誰もいない。さっき誰かにぶつかられてたのに、だ。
「マズイぞマコト! 追いかけろ!」
「わかってるよ!」
誠は全力で走るが、誰かを見つけることがない。
走って追いかけることを諦め、誠はエビルを掲げながら叫ぶ。
「飛べ!」
ゴッ!! と爆炎を伴いながら、誠はエビルと共に空高く飛ぶ。
上から辺りを見渡すが、どこにも人影はいない。
「ああくそ! 逃げられた!?」
「今のは誰だ?」
「わからないから困ってるんだよ! 獣人とかだったらいいんだけど……」
こういう時に一番困るのが、何処の勢力かがわからないことだ。知らないということは、対策の取りようが一切ないということになるのだ。
極端な話、街中を歩いていたら、いきなり背中をナイフでブスリなんてこともあり得るのだ。
「……マコト! あそこに誰かいるぞ!」
クンッとエビルが剣先で方向を示してくれる。誠も見ようとするのだが、誠の視力では捉えられない。
「働け左眼! エビルこれどう使う!?」
「イメージしろ」
「ま・た・イ・メ・ー・ジ・か・よ! この世界まさか全部想像力なのか!? 想像力が乏しい奴に未来はないのか!?」
叫びながらも誠は頭の中で適当に望遠鏡をイメージする。すると左眼の視界だけが六倍くらいに拡大される。
エビルの示した方を見ると、そこには全力疾走する俺悪役ですと言わんばかりの顔をした男がいた。
「いた! あいつか!?」
「とにかく追いかけるぞ!」
再度爆炎を伴ってエビルが宙を飛び、男の目の前に降り立とうとする。
……ただし、剣先が地面に向けられていたので、誠は顔から地面に、つまり石に突っ込むことになったが。
ズドンッ! と派手な音が小道に響く。頭に巻いていた布が赤く染まっていく。
「な、なんだ!?」
男が驚いているが、答えられる人はここにはいない。
ムクリ、と誠は立ち上がる。頭の布から血が染み出してきているのだが誠は全く気にしていない。
そんな誠から何かを感じ取ったのか、男は懐から拳銃(に似ている別の何か)を取り出そうとする。
が、拳銃の銃口辺りが光り出し、あっという間に溶け落ちた。エビルが熱で溶かしたのだが、男には知る由もない。
「な、なん、なんなんだよお前!?」
「……痛かった」
「はぁ!?」
ブツブツと、誠は呟く。
「痛かった。マジで痛かった。痛かっただと過去形みたいだけど実際は今も頭は痛い。痛いでは普通済まない気がしなくもないけど、そこはどうでもいいんだ、うん」
ゆっくりと、誠は男に近づいて行く。男は後ろに下がろうとするが、盛大にずっこけてしまう。
血まみれで、ゾンビみたいな顔になった誠は男の顔を見ながらはっきりと口にする。
「……これでお前が無関係で何も情報なかったら八つ当たりしてやる!!」
「なんで!? 八つ当たりだってわかってるなら止めてくれよ!? つーか俺はそこの女に用があるだけだよ!」
「……女?」
ゾンビ誠が後ろを振り向くと、
「…………ど、どもです」
「マーチェさん?」
足をガクガクと震わせるマーチェが立っていた。




