飛ばないお話
誠と葉奈は飛空挺乗場にやってきていた。
「……あー、やっちまったなー」
「す、すいません」
放っておくと地べたで土下座しかねない葉奈を抑えながら誠を首を振る。
「いや、葉奈がこけたのは不可効力だから仕方ない。仕方ないんだけど……」
はあー、と誠は溜め息を吐く。エビルがカタカタと震える。
「悔やむのは後だ。せめて目的を達成しろ」
「わー! エビルに言われるとなんかむかつく!」
「どういう意味だ!?」
「わからんのか、このたわけが。……まあいいや、さっさとやること終わらせよう」
誠と葉奈は乗場の中に入っていき、受付っぽい人に話を聞く。
「すいませーん。飛空挺の時刻表くださーい」
「……あー、ごめんなさいね。しばらく飛空挺はこないの」
「え?」
受付のお姉さんは苦笑いをしながら教えてくれる。
「なんでも飛空挺を襲う魔物が沢山いるから危険なんだって。ルーチュバルク行きの飛空挺も魔物に襲われて落ちちゃったらしいし、トルネアからここまで来た飛空挺も襲われたらしいじゃない」
「……あーあれか」
「知ってるの?」
知ってるも何も、誠たちはその飛空挺でここまで来たわけで。ついでに言えばその魔物を殺したのはエルシなわけで。
「だったら何となくわかってるとは思うけど、空の旅は危険すぎるため暫く運行停止っていう感じみたい。まあもうすぐ国が魔物退治をするみたいだし、ちょっとしたら乗れるようになると思うわ」
「海の船はないんですか?」
「毒の海を行きたがる人がいると思う? それ以前に船は殆ど腐って使えないって聞いたけど」
「……オーノー」
「諦めなさい。王宮魔術師は転移魔法が使えるって噂だけど、私たち庶民のためにそんなことしてくれるボランティア精神溢れた人じゃないでしょうし」
そう言って受付のお姉さんは仕事に戻る。誠も葉奈を連れて外に出る。
外に出て、空を見上げながら誠はポツリと言った。
「……いやー、まさかゲームでよくある『ストーリー進むまで次の大陸行かせねーよ』的なことがあったとは……」
「マコト、頼むから人の言葉を喋れ」
「I'm fine.(私は元気)」
「何語だそれは!?」
「There are no ships.(船はありません)」
「……それはいったい何語なんだい?」
「聞いたこと、ないですね……」
獣人二人にも通じなかった。この世界に英語はないのだろうか?
(……いや、だとしたら何でみんな日本語喋ってるんだ? ……ご都合主義とか言われたらそれまでだけど)
とりあえず今はそんな世界の不思議を気にしてる場合ではない。飛空挺が飛ばないことを先に気にするべきだろう。
「で、どうするんですか? 飛空挺が飛ばないとなるとここから逃げるのは無理ですよね?」
「そうだな。……暫く隠れるしかないか」
「そうですね。幸いにも他の人たちには私たちの居場所を知られてはいないようですし」
格郎と真奈はそんなことを言いながらゴソゴソと二人揃って何かをしている。誠と葉奈は後ろから覗き見る。
二人が持っていたのは羊皮紙だ。そこにはこの国の地図のような物に補足らしき文字が書かれている。
「……これ、何語ですか?」
「パーニル語、獣人たちで使われる言語だ。これは他の奴らから奪い取った物だ」
「……あれ? なんかさらりと物騒なことを言った気が……?」
「マコト、それは気のせいだ」
「そうかー、そうかもなー――とでも言うと思ったか」
「内容は何なんだ?」
「無視かい!」
格郎は地図を指差しながら説明してくれる。
「あいつらのアジトだ。……といっても殆ど寝泊まりするためだけの場所のようだな。この場所に博士たちがいるようだ」
「博士?」
「エリガルト博士。葉奈に顎の記憶と人格を入れるための儀式を長年研究してきた人だ。儀式ができなくて今頃暴れてるだろう」
「……マッドサイエンティストかー。……あれ? というかこのアジト襲撃すれば終わりじゃね?」
「獣人が五十人ほどいるはずだ。君は依り代だが、音速を超えた速度で動く獣人について行けるのか?」
「……やりようによる、かなー。別に殲滅するんじゃなくて儀式が実行できなければいいんだし。……つーかエビルさんよ? 随分と静かだなお前」
誠の問いに、エビルはいつもみたいにカタカタ震えたりせずに答える。
「……暫くはお前を見させてもらう、それだけだ。力を貸して欲しいなら貸してやる」
「…………まあいいか。あ、格郎さんちょっと聞きたいことがあるんですけど」
「……?」
誠の問いに、格郎は何とも言いようのないに顔になるが、誠の期待していた答えを出してくれる。
「……本気でやるのか?」
格郎の問いに、誠はキツそうな顔をしながら答える。
「まあ、致し方ない犠牲ということで」
そう言い残し、誠はアジトへと向かう。
途中で、少々寄り道をしていくが。




