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暑さのお話

 蝉の鳴き声が聞こえてきそうな暑さの中、やはり無謀だったのだろう。

「……うん、日陰で休もう、な?」

「す、すみません……」

 暑さでフラフラし始めた葉奈を引っ張って誠は日陰へと行く。ちょうど公園があったので適当な木陰を探してベンチに葉奈を置く。

 公園には変わらず日常を過ごす一般人の方々が。公園の噴水に座ってドーナツのような何かを食べる親子。この暑い中を笑顔で走る男。

 ……ロボが街中を走り回ったり海で異常現象が起きたりしているはずなのだが、どんな世界でもよくわからないことは各々が自己解決してしまうらしい。

「えーと、道のりは……」

 誠は途中で手に入れた地図と睨めっこをして道を確認していく。葉奈は熱中症になってはないがだいぶ顔が赤くなっている。

(んー……なるべく日陰を通っていけば大丈夫か? そもそもあんな暑そうなもん着てる方が悪いんだよなぁ。かといって外套なくせば尻尾丸見えぎゃー獣人だーという展開に……)

「いっそ透明化ができたらいいんだけどなー……」

「光魔法にあるが、マコトには関係ないな」

「炎って、主人公がよく使う属性だけど使い道少ないよな。フライパンとか鍋とか常備してどこでもクッキングとかすればいいのか?」

「そのような物持ち運んでも邪魔なだけであろう」

「そうか? こっちの世界には棒切れと鍋の蓋で世界を滅ぼそうとする魔王を倒す奴がいるから、フライパンと鍋を使いこなせば戦えるだろ」

「そやつは化け物か!?」

(ゲームだということは言わないでおこう。面白いから)

 そんな馬鹿らしい会話をしながら、誠は道順を確認し終える。

「葉奈、そろそろいける――わけないか」

「すみません……」

 ベンチでぐでーんとする葉奈を見て、誠はぷっと吹き出す。

「完全にワンちゃんだな」

「犬じゃなくて狼です! 言いたいことはわかりますけどそこは譲れません!」

「はいはい了解了解。ちょっとなんか飲み物買ってくるから待っといてねワンちゃん」

 抗議する葉奈を誠は放置していく。あれだけ元気なら大丈夫だろう。

 スポドリぽいっのはないかなーと思いながら誠は辺りを見回すが、もちろんそんな物はない。

 仕方ないので適当に目のついた店で飲み物を買おうとすると、奇妙な物を見つけた。

 この店、ジュースとかを売っている店のはずなのだが、誰も目を向けそうにない店の隅の方に売られているそれは、ジュースというよりはポーションだ。

 赤色青色といった色の液体はまだいい。だが毒々しい色をした液体など誰が好き好んで飲むだろうか? 緑色の液体なんて青汁を連想させてるし。

 気になったので店員を呼んで聞いてみると、店員さんは何故か苦笑いしながら教えてくれる。

「それはポーションだよ」

 ほんとにポーションだった。誠はガクッとずっこけそうになるがギリギリ堪えた。

「……体力回復? HP30%分とか?」

「体力回復、というか怪我が早く治るのもあるにはあるよ。その緑色のやつ」

「……この毒々しいポーションは?」

「栄養剤。別に毒はないよ」

「赤青は?」

「赤は体を中から温めてくれるポーション。青はその逆。あ、でも効き目が強すぎるからあんまりオススメしない。暑いからって飲むにはまだ温度が低い。それって火山とかで飲むのを想定してるからね。ところで買う? 一つ銀貨一枚だけど」

 つまり一個千円かよ高いなそんなの誰が買うんだ!? と叫びたい気持ちを堪え、別の言葉を口に出す。

「……質問なんですけど、このくそ暑い中黒いローブを着るような変な奴になら、青のポーション飲ませても平気ですかね?」



「なんか一気に涼しくなりました!」

「……こんなに効き目があると逆に怖い。成分どうなってんだ?」

 すっかり元気になった葉奈と青ポーションを交互に見ながら誠は呟く。なんでもない時に飲んだら体が凍るのではないだろうか?

「まあ元気ならいいか。ポーションの効き目がどれくらいなのかわかんないし、さっさと行こうか」

「あ、そうですね――わっ!?」

 ズテンッ! と何やら派手な音がした。音源の方を見てみると、葉奈がすっ転んだようだ。

「おーい大丈夫か?」

「だ、大丈夫です……」

「どっか怪我してな……い、か」

 誠の言葉が途中で止まる。

 いや、誠だけではない。周りにいた人々も全員喋るのを止め、辺りに静寂が訪れていた。

「? なんですか?」

 誠は何も言わず、頭を指差す。

 葉奈が頭に手を当てると、柔らかい耳の感触が。麦わら帽子で隠れているはずの、だ。

 見れば麦わら帽子が葉奈のいる場所の少し先に落ちている。さっきこけた時に落としたらしい。

「……え、えと」

「エビル」

「わかった」

 誠はエビルと短いやり取りをしながらエビルを鞘から取り出し、流れるように麦わら帽子を拾い、葉奈の頭に乗せ、葉奈の腕を掴む。

「お邪魔しましたー」

 ボンッ! と爆炎が生じ、勢いよく二人は空へと飛んでいく。

 それから数秒経ち、ようやく現実を認識した人々が叫び声を上げた。

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