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本気と書くお話

 というわけで暇なのだ!

 ……何がというわけなのかは本人もよくわかってないが、今の誠はとにかく暇なのだ。

 エルシはエビルを持って何処かに行ってしまったし、ファニーも出かけた。

 一応マーチェはいるのだが、何やら忙しいらしくずっと部屋に籠りっきりだ。時々爆発に似た音が聞こえてきて凄く怖いが、本人曰く大丈夫らしい。

 元の世界ならば漫画読むなり本を読むなりゲームするなりで暇を潰せるのだが、この世界にそんなものは存在しない。

 図書館にでも行けばいいのかもしれないが、残念ながら図書館は開いていない。

 というよりこの辺り一帯は大体閉まっている。ロボが暴れ走っていたので仕方ないだろう。

 というわけで誠はとても暇にしていた。因みにスマホの充電は完全に切れていた。

 ソファにゴロンと寝転がって誠はむくりと起き上がり呟く。

「……散歩でも行くかな」

 玄関に行き、誠は扉を開ける。

 ムワァと、熱気が誠を包み込んだ。外は真夏のように暑い。

 バタン! と勢いよく扉を閉め一言。

「外に出るのはやめとこ」

 暇潰しを諦めるには充分すぎる暑さだった。

 結局最初に戻り、暇を持て余す誠。

 そこに、

「マコトさーん。いますかー?」

「いますよー。なんですかマーチェさーん」

 マーチェがやってきた。その顔に疲労が滲み出ている。

「暇してるならちょっと手伝ってくれませんか?」

「別にいいですけど……素人が出来ることですよね?」

「当たり前です。というかそんな重大な物は素人だろうと玄人だろうと部外者には見せられませんよ」

 来てくださいと言うマーチェに、誠は付いていく。今の彼は暇潰しのためなら大概のことはやる状態だった。

 マーチェは自分の部屋のドアノブに手をかけ、勿体振るようにゆっくりと開ける。

「どうぞどうぞ。女の子の部屋ですよー」

 誠は部屋に入ってまず一言。

「うーん、俺の知ってる女の子の部屋はこんなゴチャゴチャした機械はないかなー」

 マーチェの部屋だが、まず正面には巨大なモニター。それ以外の壁には小さなモニターという壁が一切見えないようになっている。

 更に床には工具や部品がごっちゃごちゃになって散らかっている状態だ。足の踏み場もない。

「えーとですね」

 だがマーチェは床にある物などお構いなしに踏んでいく。バキバキと明らかに壊れる音がするのだが全く気に留めてないようだ。

 後で勝手に掃除してやろうと心に誓いながら、誠はできるだけ部品を踏まないようにしてマーチェの元へ行く。

 マーチェの側には机があり、その机の上にはノートパソコンに似た物があった。

 キーボードがある場所には液晶画面があり、その横にはタッチペン。これで一々文字を書いて入力しないといけないというよく分からない代物だ。

「とりあえず、このプログラムの一を二十一までのプログラム全部に写してください」

「え? それって別にコピーして貼り付けるだけじゃあ?」

 誠の言葉に、マーチェは不思議そうに首を傾げる。

「こぴーって、なんですか?」

「……what?」

「ですから、こぴーってなんですか?」

 マーチェの言葉に、誠はなんだかとても嫌な予感がしてきた。

「ええと、マーチェさん? プログラムを写すというのはつまり手作業ですかな? 一文字ずつ書くのですかな?」

「それ以外にどうやるんですか?」

「………………………………」

 チラッと、誠は画面を見た。

 文字数は、軽く一万は超えている。一万×二十=二十万。四百字原稿用紙五百枚分である。

「じゃあマコトさんよろしくお願いします」

「いや、え? マーチェさん? これって何の拷問でせうか?」

 誠の質問に答えず、マーチェはさっさと何処かに行ってしまった。

 残された誠は、呟く。

「…………まじ?」

 本気と書いて、マジだった。



 男は一人歩いていた。

 その手にはどんな金属でできているのかまるで分からない杖が一本。

 彼の外見はとても目立っているが、誰も気に留めたりしない。

「…………」

 男が今いる場所は市場だ。最近は活気がなくなってきているが、それでも人の数は多いと言えるくらい人が集まっていた。

 男は周りの商品に目をやりながら歩いていく。

 市場を抜け、男は浜辺へとやってきた。

 そこには、一人の少女がいた。奇妙な剣を持ち、剣に話しかける不思議な少女が。

 ここは、浜辺。海の近くだ。

 彼の力を発揮するのには、最高の場所だった。

「こんな所にお散歩か? 神の子よ」

「っ!」

 慌てながら彼女、エルシは男の方へと振り向く。

 奇妙な剣、エビルが熱気を放つ。やる気満々のようだ。

 男、アクリアは笑みを浮かべる。

「そう警戒するな。今の俺は貴様らに興味はない。と言って聞くような奴ではなかったか」

 スッと、アクリアは杖を構える。

「だが一応言わせてもらうが、お前らでは俺には勝てん。火の神の子の力は俺には届かないし、風の神の子はもうそこまで力が残ってないようだ。あのマコトという者の側にいなくていいのか? せっかくの人形を使わないのは損だぞ?」

「…………」

「まあ、そんなことはどうでもいい。それより聞きたいことがある」

「……なんだ?」

 アクリアはたっぷりと間を空け、囁くように問う。


「あの少年が何者かを、教えてもらえないか?」

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