神の子のお話
なんか、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
目の前で倒れている男を見て、誠は心の中で本気で謝った。アニメとかの誰もが急所を狙わない理由をしっかりと思い知った誠である。
「…………」
流石のエビルも無言だった。というかこれで黙らない男はいないと思う(男……?)
「……さ、さーて! こいつどうするかな!?」
無理やり場の空気を変えようと誠は大声を出す。ちなみにアクリアはさっきからピクリともしてない。
「とりあえずウォンターを助けなければなるまい」
「オーケーオーケー。取り上げてしまえばこいつもただの人間だろうしな」
誠はアクリアからウォンターを取り上げる。とにかく何か動いてさっきのことは忘れたかった。
「……ん?」
よくよく見ると、アクリアの口がゆっくりと動いていた。何かよくわからない言葉を呟いている。
(……まあウォンターは取り上げたし、放っとこ。つーか追撃は勘弁してやりたい)
そう思いながら誠はウォンターをエビルの所へ持っていく。ちなみにエビルは地面に突き刺さった状態だ。
「避けて!!」
「へ?」
突然、誰かの声が聞こえた。誰の声なのかと、誠が呑気に考えた瞬間だった。
途端に、右側が軽くなった。コロリと、腕が誠の視界に飛び込んでくる。
「マジかよおい……っ!」
慌ててアクリアから距離を取り、今更のように疑問に思う。
(いやいやいや!? どうなってんだ、何で痛みを感じてないんだよ俺!?)
確かに、誠の右腕は切られていた。なのに、まるで痛みを感じない。
痛みで転げ回るよりいいのかもしれないが、あまりにも不気味だった。
「まさか腕とはな。セオリー通りなら頭と胴体のはずだが?」
ゆっくりと、アクリアは立ち上がる。何かしらの痛みに耐えてるようには見えなかった。
「……しかしなんというか、そこを狙ってくるとは俺も流石に予想できなかった」
「そこは素直にごめん。っていや待てお前何で攻撃が!? つーか痛くないのか!?」
「そこはお前の腕と同じだよ」
アクリアの手元には、いつの間にかウォンターが戻っていた。クルクルとバトンのように回しながらアクリアは喋る。
「お前の眼や腕が神の子に作られてるのと同じように、俺の身体はウォンターによって徹底的に作り変えられている。心臓を止めた程度じゃ死なないぞ?」
「…………チート野郎め。それって普通に人間やめてるじゃねえか」
「自分の右腕を見て同じことを言ってみるか?」
ブチリ、と嫌な音が右腕があった場所から聞こえてきた。
「……うぇ」
見れば、右腕の切れた部分から新たに右腕が生えてきていた。見ていて気分のいいものではない。
「普通なら腕ではなく頭部と胴体を変えると思うのだが、何かあったのか?」
「まずこちとら状況の把握すらできてないんだよ! てか作り変えるってどういうことだよ!?」
「……お前、幾ら何でも知らなさすぎないか? まさかとは思うが……?」
アクリアは何か考えるように誠とエビルを交互を見ている。その間にエルシはエビルを引っこ抜いてた。
「エビル! エルシさん! ちょっと思いついたことがあるんだけど!」
誠が動いても、アクリアは何もしてこない。警戒しつつも誠はエビルの所へと向かう。
「何をする気だ?」
「さっき向こうがやってたのを見て思いついたんだけどさ、エビル達の力を俺が扱うのって出来ない? エビル達の手を借りずに俺が直接」
「…………」
エルシはいつものことだが、何故かエビルも答えない。
「おい? 出来るのか出来ないのかはっきり言ってくれよ」
「……出来ないことはないが、その場合我らが持つ力をマコトに渡すことになる」
「じゃあ渡してくれ。エビル達にいちいち話して行動してもらうより俺一人でやった方がやりやすい」
「…………」
「おーい? まさか副作用があるからできませんじゃねえだろうな?」
「……なるほど、そういうことか」
ポツリと、アクリアが呟いた。その視線は誠を捉えている。
「エビル、出来るんなら早くしてくれ」
「…………」
エビルは何も言わない。ここまで頑なに沈黙するのも珍しかった。
「おい、エビル!!」
アクリアが何かブツブツと呟いていた。殆ど意味は分からなかったが、わざわざ何かを言ってる時点で予想が出来た。
(魔法!? こいつ魔法も使え……なんで魔法? ウォンターの力を使えばいいんじゃあないのか?)
誠の疑問に答える形で、アクリアは告げる。
「少し自分で神の子のことを考えるんだな。空間跳躍」
アクリアの身体を白い光が包んでいく。転移の魔法だ。アクリアは光と共に消えていく。
消える直前、アクリアは誠を見て、笑ったように見えた。




