海の上を歩いたお話
誠はロボの爆発に巻き込まれて盛大に吹っ飛んでいた。しかもグルングルン回転しているので空中で胃の中身を吐き出しそうになっていた。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
回ってるせいで何処かは分からないが、青色が見えた。どうも海まで飛んでるようだ。
バシャンッ!! と海に着水した。
だが回転してるせいか、そのまま海を跳ねる。水切りで石が跳ねるのを想像すれば分かりやすいだろう。
五回ほど海の上を飛び跳ね、岩肌に背中から着地ようやく止まる。
「ち、ちくしょうめ……」
全身が痛みを訴えてくるが一度痛みに屈して泣くとそのまま動けなくなりそうだから抑える。
そこで誠は手の中にあるべき重さがないことに気付く。
「あれ? エビル? エビル!?」
いつの間にか手放してしまったようだ
……そういえば海の上を跳ねてる辺りで手に重みがなくなっていた気がする。
「ま、さか。マジですか?」
海の見てみるが何も見えない。こんな時に限って左眼の便利機能が働かない。
「まずい、まずいって。つーかあいつ錆びたらどうなるんだ!?」
とはいえあるか分からない物を探しに海にダイブするつもりもない。そもそもこの辺りの水には毒があったはずで、それを聞いて誠達はここに来たのだ。
誤って飲んでしまえば、いや舐めただけでも駄目な可能性もあるのだ。潜るのは得策ではない。
そこまで考えて、誠は自身の現状のことを思い出した。
「……あっかーん」
誠がいる岩から浜辺までの道のりは二百メートルくらいか。泳ぐ分にはまるで問題ない。毒がなければの話だが。
「タースケテクレー」
半分以上諦めながら助けを求めてみる。
すると、声を聞いたわけではないだろうがエルシが歩いてきた。
そう、海の上を。
「……………………いや、まあエビルだって飛べるみたいだし、エルシさんが海の上歩いてもおかしくないよね。うん」
止まりかけた思考を動かす。不思議な現象が起きる度に思考停止してては駄目なのだ。
「おーい、エルシさーん!」
「…………」
エルシは相変わらずの無表情のまま近づいてくる。
「…………」
「なあ、エビル知らない? どっかで落ちたみたいなんだけど」
ふるふると無言でエルシは首を横に降る。本格的にまずいことになってきた。
「ヤバいヤバい。錆びた剣になる前に見つけないと。なんか目印みたいなのはないかね」
「…………」
ぐいぐいとエルシは誠の腕を引っ張る。
「えーと、とりあえず陸地に行こうか」
「…………」
もとからそのつもりだったのだろう。腕を離さずエルシは誠を連れて歩き出す。
海の上を。
「ちょちょちょちょちょちょ!?」
慌てて止まろうとするがエルシの力か強くてそのままズルズルと引っ張られ、海に向かって足を出す。
「落ちる! いや落ちなかった!!」
「……?」
どうも海の上に見えない足場があるようだ。風を司る云々を聞いているので空気を圧縮して平たい板でも作ったのかもしれない。
ただ、見えない足場というのは凄く怖い。特によく分からない他人の力というのは本当に怖い。
というわけでビクビクしながらも誠は海を歩き、何とか陸地へと戻る。
「ちくしょう! もうなんなんだよこの世界!! つーか海だよ! 暑いよ! どっかに家族で泳いでる奴くらいいてもいいだろ! 癒しプリーズ!!」
もちろん、騒いだところで仲良く遊ぶ家族や水着の女性が現れたりしない。
「ええい、とりあえずまずはエビルだ。エビルを探さねば」
切り替える為にわざわざ言葉にし、とりあえず吹っ飛ばされた所まで戻ろうと歩き出す
。
エルシは無言で付いてくる。そこでふと思い出したように誠は振り返る。
「言い忘れてた。エルシさん、助けてありがとう」
「…………」
変わらずの無表情だが、顔がピクッと動いたのは多分気のせいではない。
誠が再び歩き出そうとした直後、ダンッ!と、突然空から少女が落ちてきた。
というか、葉奈だ。その手には抜き身の剣、エビルがいた。
「ようエビル。錆びてない?」
「錆びなど我が力でどうとでもなる」
葉奈は何も言わずにエビルを誠に手渡す。
「……?」
手渡された時、葉奈の身体は少し震えていた。何かに怯えるように。
「……ありがとな葉奈」
震える姿を見ると小動物を想起させられたので、頭を撫でてみる。葉奈は犬みたいにパタパタも尻尾を振るわせる。
「しかし、これからどうするよ?」
「ウォンターを探さねばなるまい」
「そのウォンターって奴は何処にいるか分からねえのに?」
「…………」
エビルは黙り込んでしまい、エルシをちらりと見るが無言で首を横に振られた。
「……後、今気付いたけどそのウォンターとかいう奴に会う理由がないんだけど。俺の目的って家に帰ることだぞ? 空間を司るなんちゃらさんに会って帰れればオーケーなんだけど」
「ウォンターがペンシャの居場所を知ってるかも知れぬではないか」
「知ってればいいなー。これでそいつがそのペンシャさんとやらの居場所知らなかったらそろそろ俺はふて寝するぞ」
溜め息混じりに誠は言う。
「つーか、何処にいるか分からないウォンターを探すくらいなら葉奈の問題を解決しといた方がいいんじゃねえの? なーんか抱えてるんでしょどうせ」
「ふにゅ〜。あ、いえ。私の問題はもう半分くらい解決しちゃったので……」
「……、」
そうなのか?と誠は聞こうとしたが、出来なかった。
何故ならば。
ゴッ!! と誠達の上空を何かが通過したからだ。
ダンダダダダダンッッ!! と複数の人影が空から降り立つ。
全身を鉄で覆っている。いや、身体の外に中身が溢れ出てると言う方が正しいかもしれない。
頭にヘルメットのような物を付け、ゴーグルには数字のような物が表示されている。
腰にはサブマシンガンのような物が下げてあるが、何を撃ち出すのかは分からない。正直レーザーが出てきてももう驚かない。
「っ!?」
「え、え? 連戦なの?」
「…………」
「人間、なのか?」
葉奈は突然やってきた者達を警戒する。誠はゲームのようにしか現実を捉えれず、エビルはその人影に疑問を感じた。
「対象を確認」
感情がなかった。どこまでも棒読みだった。
「サイボーグ? サイボーグ忍者?」
「そのサイボーグとはなんだ?」
エビルの問いに、誠は自分の世界での意味を教えてやる。
「んー。身体を機械に変えてる奴ら、で合ってるのかなぁ。人ではあり得ない動きが出来て、機械じゃあ出来ない柔軟な思考がメリットじゃないっけ?」
「な、なんでそんなこと知ってるんですか!?」
葉奈の疑問は当たり前だろう。今のやり取りだけを聞くなら、誠があのサイボーグ達の仲間と思われても仕方ない。
が、誤解を解く暇はない。
「依代、パズズ、イフリート、神子の存在を確認」
「作戦内容を口頭で確認」
「拒否。作戦内容を知られる危険あり。個体で判断推奨」
「受理。作戦内容の確認。完了」
「……エルシさん、エビル、葉奈」
「え? わわ!?」
誠の近くに二人がいたので、誠は二人を抱き寄せて耳元で呟く。
「(エビルの爆発で飛んで逃げるからしっかり掴まってて。それとエルシさんは地面の砂を巻き上げて)」
「あ、あの、私はあの人達と関係は……」
「(さっき神子って知らない単語が出てた! あれは多分葉奈のことを指してる!逃げないと何されるか分からないぞ!!)」
「ぅ……」
「優先権、重複」
「優先権、変更」
「無効。変更権はありません」
「解決法、検索」
「該当」
その間にもサイボーグ達はブツブツと何かを呟いている。
誠はエビルを力強く握って叫ぶ。
「飛べ!」
「作戦を同時遂行することで優先権の問題を回避。作戦を実行します」
轟ッ!!という音と共に誠は吹っ飛んで行った。
それとほぼ同時に、ガシャガシャガシャッ!! と何かを切り替えるような音と共にサイボーグ達の背中から翼のような物が現れた。
「…………」
が、エルシが舞い上げた砂煙で、こちらを見失う。
(けどすぐに見つかるよなどうせ! さっさと解決策探さないと!)
「あーもう! 攻略本プリーズ!!」




