ロボットと初めて戦ったお話
「だーもうめんどい!」
誠はそんなことを叫びながら走り続ける。
「エルシを探さねばな」
「葉奈もな! 因みに本当はこっそり葉奈の後をつけるつもりでした! 何故なら変な間を空けて『気をつけます』と言ったから!」
なのに、と誠は付け足して叫ぶ。
「ちくしょう! なんだよあのロボット!!」
走る誠の後を追いかけるように、巨大な鉄の塊が追いかけていた。
全体を見ればケンタウロスのような形をしている。が、なんかヤバ気な銃らしき物を身体に装着したケンタウロスなど見たことないし聞いたこともない。
何故こんなロボに追いかけられてるかは、誠の方が聞きたかった。建物から出たらこれがいて、いきなり体当たりしてきたのだ。
そして、建物の隙間を通って時間稼ぎをして逃げたりして、今に至る。
(何が起きてるか知る必要があるが、それより先にこいつを片付けねえと!)
運が悪く、誠が今いる道は、石畳の完全な一本道だった。
「目標捕捉。『Rガトリング』の発射準備」
ロボの声が聞こえる。まさか実際に機械の喋るところを見るとはなーと誠は現実逃避気味に思う。
「ん?Rって、まさか……」
銃口が、誠に向けられる。
「やばいやばいやばいやばい!?」
誠は銃口から逃げるように横に飛びながら目を閉じる。
ジュワッ!!と地面が溶けた。レーザーだった。どうも『レーザーガトリング』の略称のようだ。
シュウシュウと地面から煙が出るのを見て、誠の身体が震える。
「ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!! 何で俺がこんな目に!!」
「目標回避。R兵器の効果なし。M兵器を装填」
「なんだ!? 今度はミサイルでも来るのか!?」
とはいえおとなしく喰らう義理はない。エビルを鞘から引き抜く。
「エビル! どれくらい力が使える⁉︎」
「三千度程度の炎なら! 剣に五千度程度の熱を持たせることもできる!」
「そんなんやると俺が死ぬ! 剣はその熱を維持させろ! 後そんな熱くなくていいからタイミング合わせて俺の後ろで爆発させて!」
「装填完了」
「今!」
急な要求にも、エビルはしっかりと応えてくれた。
轟ッ!! と誠の後ろで爆炎が生じた。
その時の爆発で、誠の身体がロケットのようにすっ飛んでいく。本来なら熱で火傷くらいしてもいいはずなのだが、エビルが何かしてるのか熱くない。
「だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
自分でやらせておいて吹っ飛ぶのは凄く怖かった。恐怖心を紛らすために誠は叫ぶ。
バランスなんて維持出来ずクルクルと身体が回転するが、無理やり剣を横に突き出す。
スッと、と剣が何の抵抗もなく脚を分断した。
誠がやったことは、溶接で鉄板を切るのと同じだ。削って切るのではなく、熱で金属を溶かして切ったのだ。
受け身をとって立ち上がる。身体中が痛いが何かしら追撃が来る可能性があるので無視する。
ロボの右側の脚が切れていた。バランスを取れずにロボは倒れている。
「よーしよし。せっかくだからちょいとあのロボ調べてみるか……ってエビル!? お前なんで三日月になってんの!?」
「熱で曲がっただけだ。気にするな」
剣の刃の部分が三日月のように曲がっていたが、すぐに形が戻っていく。
「はー。これなら馬鹿みたいに振り回しても平気だな」
「一応力を使っていることを忘れるな」
「行動、不能。脚部に深刻なダメージ」
ロボが何か言っていたがよく聞こえない。声をちゃんと聞こうと近付く。
「修復不能。敵に鹵獲されるのを防ぐ為に自壊を開始」
「しかしミサイルとかレーザーとか、英語みたいなのがなんで異世界に……?」
「ロックを全て解除。自爆します」
「ほら、今もロックって……自爆?」
誠がロボの言った単語に反応した、その時には遅かった。
ゴッ!! とロボが爆発して、誠の身体が空高く吹っ飛んで行った。
「うそおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ…………」
後に残ったのは、巨大なクレーターのみだった。
圧倒的だった。
エルシが視線を獣人達に向ける。それだけの動作で獣人達が上下半分に分かれた。
エルシが手を振る。それだけで竜巻が起こり、獣人達が空高く放り投げられる。
化け物。
そんな単語が葉奈の頭に浮かぶ。というよりも彼女をそれ以外の言葉で表す方が難しいだろう。
それだけ圧倒的だった。
そして、数十人いた獣人が、全て動かなくなっていた。
「…………」
エルシが何処か遠くを見ている。獣人達の援軍を警戒しているのかもしれない。
「……大丈夫、です」
恐怖心が話しかけるなと訴えてくるが、無理やり抑え込む。
「今は大事な儀式の時なので、これ以上来ることはありません」
ただ、顔に出ていたのか、エルシが悲しそうな顔をした。
「…………」
「……?」
その時、遠くから声が聞こえてきた。段々と、こちらに近づいてきている。
葉奈を犬歯を剥き出しにし、拳を力強く握る。
「……ぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ビューンと、なんか人間らしき少年が、葉奈とエルシの頭上をロケットのように通っていった。
「……………………」
葉奈はありえない光景を見て、思考が止まった。
「…………」
エルシは、何を考えているのか分からない顔で、少年が飛んで行った方へと歩いていった。




